秘書にだけ甘い美容外科医×彼に恋しちゃいけない立場の秘書
堅実に生きたい理乃は地味な秘書。しかし婚活相手を寝取られヤケになり、処女を捨てたいと口にした彼女は「相手が俺でもいい筈だ」という上司で御曹司の美容外科医・柊木と一夜を共にしてしまう。「一生、俺に恋してくれ。後悔なんて絶対にさせないから」身分違いの彼とは、それきりの関係だと思っていたのに、柊木は理乃を囲い込み溺愛してきて…!?
「なんというか、想像の斜め上というか、初々しくてたまらないんだが」
「す、すみません」
ぎゅっと目を閉じて身を小さくしていると、柊木は理乃を優しく抱きしめてから耳元で甘く囁く。
「謝るな。……嬉しすぎて、可愛すぎて困ってるだけなんだから」
喉を震わし笑いながら、たまらないと言いたげな仕草で頬ずりされる。
柔らかく、時々硬い頬骨が当たるのがなんだかくすぐったくて、心地よくて、ぼうっとしながら身を任せていると、柊木は悪戯じみた仕草で耳朶を唇で食む。
「ひゃっ」
「ほら、そんな仕草も可愛い。……好きだよ」
不意打ちに〝好き〟といわれて心臓が止まる。
(す、好きってどういう……)
自分と柊木は上司と秘書の関係で、お互いを異性として意識したことはない。いや、少なくとも理乃は今日まではそうだったし、柊木に至っては女性全般に対して距離を置いている。
にも拘わらず好きと言われて、その意味をとらえかねていると突如として耳朶を甘噛みされ、身をびくつかす。
「……驚くようなことか」
くすくすと面白げな笑いで語尾を飾りながら、柊木はからかうように耳朶から耳殻と耳の周囲をついばみ口づけする。
くすぐったさとも痺れともつかないものに肌をざわつかせながら、理乃は胸をかき合わせる手に力を込め、息を詰める。
――そうだ。柊木の〝好き〟が恋愛的なものであるはずがない。あれはきっと理乃の物慣れない様子や反応に対するもので、そうでなければ、男女の駆け引きとしての言葉であって、深い意味はない。
(セックスの時は勢いで好きとか愛してるとか言う男も多いって、見聞きするし……)
勘違いしそうな自分がその答えに飛びつく。
動悸が落ち着いていくのに安堵しつつ、なぜか虚しいほどの切なさに戸惑う。
その戸惑いを行為によるものと受け取ったのか、柊木は大丈夫だと言う風に理乃の頭をなでつつも徐々に愛撫を強めだした。
滑らかな動きで理乃の髪を解き梳いていた指先はやがてうなじへと移動し、首筋の形を確かめるように何度も指先が上下する。
硬く乾いた男の指先が与える刺激に素肌を慰撫され吐息をこぼせば、気をよくした動きで指はバスローブの襟をくつろげだす。
まるで薔薇の花びらをはぐみたいな繊細さで柔らかなパイル地と肌の境目を辿っては広げていた柊木は、襟が完全に首から離れた瞬間、思わぬ大胆さで掌を背へ押しつけ滑らせる。
不意打ちの刺激に身をわななかせたのも束の間、皮膚同士が直接触れる感覚は想像以上に心地よく、不安と警戒に凝り固まっていた身体が解けていく。
理乃の肩や腕から強ばりが抜けだすに従って、柊木の手はより躊躇なくバスローブの下へと潜り込み、背中から肩、脇を通って鎖骨へと至ると同時に左右の襟を大きく開いた。
「あっ……!」
空気が触れる感覚で襟の合わせから乳房があらわになったことに気付いた理乃は、恥ずかしさのあまりうろたえる。
驚いた心臓が一際大きく跳ね、それと同時に丸い二つの双丘も揺れ、余計に鼓動が急いてしまう。
あわてて両手で胸元を隠そうとしたが、それより柊木が理乃の上腕を押さえつけるほうが早かった。
「なんで隠そうとする」
「だっ、だって……!」
秘書として言葉遣いを取り繕う余裕もなく、理乃が素のままに声を上げると、柊木は触れるだけの可愛いキスを何度か繰り返し、反論を封じてしまう。
「綺麗な乳房だ。……張りのある稜線、柔らかでまろみのある下乳」
言いながらその部位を爪先で辿られる。するとむず痒いようなもどかしいような感覚が爪痕からじわりと広がり理乃は思わず下腹部に力を込め震える。
色を含んだ目で理乃がわななく姿を視姦しつつ、柊木は肉食獣じみた仕草で唇を舐め、最後に残された場所へ指をちかづける。
「そして、ピンと立った乳嘴」
「ああっ」
告げると同時に人差し指で軽く弾かれ、刺激の強さに背が浮く。
まだ誰にも触れさせたことがない場所は、甘い責め苦に顔を歪めた理乃の視界でふるりと揺れて、弾かれた衝撃が伝わるに従い芯を持つ。
「まだ柔らかいな。……でも、すぐに硬く感じるようになる」
戯れに何度も軽く指で弾き、揺れ膨らむと中心にあるくぼみに爪を埋め、違う感覚で理乃の気を翻弄する。
「んっ、ふ…………う。あ」
自由になった左手の甲で口を塞ぐ。そうしなければ柊木の手の与える感触のままに甘く淫らな声がこぼれそうで、それがいやらしい気がしたからだ。
だけど彼はそこで手加減する気はない。どころか、反対側はどうかな? などと楽しげに告げると、今度は左の乳房に同じ愛撫を施す。
まるで見えない火に炙られているように、胸の部分が焦れてたまらない。
ただ肌をひっかかれ、胸の中心にある蕾を弾き揺らされているだけなのに、身体全体がうずうずとしたものに襲われる。
触れられているのは左の乳房だというのに、先ほど弄ばれた右の膨らみも妙に疼くのはどうしてか。
そっちだけじゃなく、両方触れてと訴えるように重みと感度を増すのをどうにもできなくて首を振れば、淫らな動きで双丘が揺れる。
「両方してほしいか」
胸から手を離されほっとしたのも束の間、横に傾けた首筋の、脈打つ血管を爪で掻かれ、理乃は口から嬌声をこぼす。
「ひぁ……あ、あ!」
んんと呻き、首を左右に傾け逃れようとするのに、男の爪は迷いなく理乃の薄い皮膚を――その下で脈打つ動脈を辿り掻き、早くと仕草で答えを急かす。
「首だけでもこんなに感じるなんて、本当に可愛いな。どうしてやろうか」
はあっと熟れた吐息をこぼされ、その熱が胸元をかすめた瞬間、理乃はきつく身を竦ませ、薄く開けた目で柊木を睨む。
可愛いなんてはずない。どころかこんな淫らな姿をさらさなければならないなんて、どう考えてもみっともない。
なのに身体は理乃の理性に真っ向から逆らい震え、感じ、体温を上げていく。
もう顔だけでなく、喉元から乳房まで淡い紅に染まっており、すりあわせた太股はじっとりと汗で湿りだしていた。
――興奮している。こんなことで。
驚きと同時に気が上がる。
恥ずかしいのに、見られたくないほどいやらしい反応をしているのに、心はどこまでも貪欲に燃え立ち逸る。
女として見られている。その事実に知らない自分が嬉しげに身をくねらす。
誰からも女として見られなくてもかまわない。だって恋愛などしないのだからと虚勢の鎧を纏っていた自分が、今、自ら悦んで、その鎧を脱ぎ捨て身を投げだそうとしている。
それは悔しいはずなのに、どうしてか解放感が先に立つ。
いつもの自分と全然違う。そのことに心を混乱させている間に、我慢の限界が来たのか、柊木が美しい顔に色を纏わせながら唇を歪め笑う。
「降参。……可愛すぎて、色っぽすぎて、我慢できなくなった」
言うなり両手で乳房を包み込み、その柔らかさを試すように筋張った男の指を柔肉に添える。
「んっ、あ……、やん、だ、め……ッ」
「駄目じゃない。言っただろう。我慢できなくなったと。もっと可愛いところを見せろ。声を聞かせろ。俺だけのために乱れ啼け」
普段と変わらない命令口調、なのに冷淡さなど欠片もなく、低く掠れた声は理乃のみならず柊木も昂ぶりだしていることを知らしめる。
膨らみの形を探るように擦り、全体を揺らされ、どんどんと巡る血流が逸りだす。
喘ぐように吐く息は驚くほど熱く、理乃は自分の身体がどうにかなったのではとさえ思う。
くすぐったいほどの密やかさで触れ撫でていた指の力は徐々に強められ、いつしか男の指が乳房に沈み、次の瞬間、根元から尖端をくびり出すように絞り込まれた。
「はぁッ、あ」
不意打ちの力強さに喉を反らす。
そのままリズミカルに胸を波打たされ響く快感に身を捩れば、再び焦れったいほどの優しさで撫で触られ、かとおもえば爪でむず痒い刺激を残す。
一時として同じ動きで慣れさせない男の手に翻弄され、理乃は甘い切なさに目を眇め身をわななかす。
呼吸の間隔が次第に狭まり息苦しいほどなのに、乳房はやるせない疼きに震え、たわみ、わなないて揺れる。
身じろぎして逃げようとしても無駄で、まるで理乃の動きを読んだように柊木の手は追いすがり、捕らえ、愉悦の沼に理乃を引きずり込もうとする。
たまらず頭を振ると、ほどけた黒髪が千々に散って広がり、その一筋が桜色に染まった肌に落ちる様が妙に淫靡でいやらしい。
「んっ……うッ」
絡みつく快感にじっとしていられず、背を弓なりにし身悶えた途端、不意に柊木が身体をずらし胸の膨らみに頭を近づける。
あっ――と思った時にはもう遅かった。
理乃の呼気と同じほど熱された男の吐息が乳首をかすめ、痺れるような心地に一瞬我を忘れた時だ。
しっかりと揉み絞られた乳房の尖端で揺れていた胸の尖りが、柊木の口に含まれて理乃は大げさなほど手足をびくつかす。
温かく滑る口腔は乳首はおろか乳輪までもを内に含み、そのままざらりとした舌の表面で硬く勃ち上がった先を舐め上げる。
得も言えぬ媚悦に身体のあちこちがびくびくと跳ね、脇に下ろしていた手が力の限りにシーツを掴む。
歯で根元を支えるようにして乳嘴の側面を硬くした舌先でなぞられ、未知の感覚が花開きだす。
苦しくて切ないのに、甘くて心地よい。
もうしてほしくないのに、もっと強い刺激をと身体が飢える。
弄られているのは胸だけのはずなのに、そこから響く淫らな感覚が思考を蕩かし、腹奥をどうしようもなく疼かせる。
すりあわせた下肢は力の込めすぎで痙攣しだし、へそ裏にある子宮から滲むものが未開の隧道を滴り始める。
見えない快楽の糸に操られ、理乃の背がベッドから浮き柊木に乳房を捧げるように大きく張り出すと、含む尖端を右から左へと変えられる。
眉間に皺をよせ身悶えながら目を細め開くと、男の唾液に濡れた乳首が薔薇色に染まりふるりと揺れる。
淫靡な光景に瞳を大きくすれば、それに気付いた柊木が、思わせぶりな仕草で指を伸ばし、理乃に見せつけるようにしてそこへ触れる。
「ひあっ……あ、ああっ、あ」
絶妙な力で摘まみ、ひねられ、理乃は信じられないほど甘い声を喉からほとばしらせ四肢をわななかす。
なにもかも、一時として同じ感覚に慣れきれない。指と舌で転がされるのでも全然違うのに、乾いた肌を擦られた時と、濡れぬるついた今では、まるで感じ方が異なっている。
鼓動を逸らせ、肌を汗ばませるほど翻弄されているのに、どうしてかもどかしい。
もっと触れてほしい、もっと強く奪ってほしいと、そんな衝動が頭をいっぱいにしていく。
駄目だ、淫らでいやらしい。でも、もっとしてほしい。
触れられたくないのか、触れられたいのかすらあやふやになっていく頭の中で、理乃は愉悦の奔流に流されまいとあがき喘ぐ。
男が美味しそうに乳房にかぶりつく様に心乱され、犬歯を肌にたて囓られると痛みとは違う感覚が腰裏をぞくぞくと痺れさせた。
そうやって左手と口で双丘へ奉仕しながら、柊木は右手を脇から腰へとさかんに撫で続け、理乃が一際大きく啼いたと同時に頭をへそまで滑らせた。
普段意識などしない、腹の真ん中にある小さな窪みを舌でくじられた瞬間、大きなうねりが腹奥にある子宮を震わす。
「ああ……ッ、ん」
耐えきれず逃げようとした腰を両手で掴まれ、そこから甘い蜜が湧いてるのだと言いたげな執拗さでへそのへこみばかりを責められ、理乃は快感を逃すこともできずただただ嬌声ばかりを放つ。
媚びた女の声が自分のものだと自覚した瞬間、理乃は頭から湯気が出そうになった。
どうしてこんなに感じるのか、理性ではままならないほど身体が蕩けていくのか。わからぬままに反応してはいたたまれないほどの恥ずかしさに襲われる。
「ここ、感じるんだな」
さらりとした栗色の髪を肌に滑らせくすぐりながら、柊木が愉しげに笑う。
いやらしいと言われたようで、かっと顔を赤くし目を潤ませれば、拒む必要などないと告げるように頬へと手が伸ばされた。
顔を包み込む男の手の大きさと温もりに、すがるようにすり寄れば、可愛い、とまた呟かれる。
「たまらない。想像以上に愛らしく、綺麗で……敏感な理乃」
伝えるというより思わずといった調子でこぼされた柊木の賞賛に、彼が一度であったとしても、理乃を女として見た瞬間があるのだと気付く。
途端、男を頑なに拒むように擦り合わされていた太股から力が抜けて、とろりとしたものが未開の合わせ目を湿らせる。
「あっ……」
その場所が濡れる理由に気付き、うろたえた声を上げると、柊木はこの上なく優しく甘い微笑みを投げかけてきた。
「怖がらなくてもいい。ごく自然な反応で……俺にとっては好ましい」