平穏な生活を愛する病棟事務の美穂は、大学病院から派遣されたエリート医師の向井から、甘い言葉と強気な態度で迫られその大学病院に引き抜かれてしまう。
「願いを聞き入れてくれて感謝している。お前が好きだ」同じマンションに住まわされ、外堀を埋められた上で口説かれて目が回りそうな美穂。そんな彼女には家族に関するある辛い過去があり――!?
向井は微かに目を開けると、驚きで口をパクパクさせている美穂に軽く微笑んだ。
「おはよう」
「……お、おはようございます」
「悪い。俺の部屋の鍵が見当たらなくて、こっちに来てしまった」
「ええっ? ここの部屋の鍵を持っていたんですか? というか園田先生の部屋に行けば……」
よりによって同じベッドで寝なくてもいいのに。それに、勝手に合鍵を持っていることがありえない。結婚を約束したとはいえ、なし崩しにこんなことをされては困るし心臓に悪い。
いつも念入りに身支度をしているわけではないけれど、ヨレヨレのパジャマ姿の上に髪の毛はボサボサですっぴんだ。こんな姿を見られるなんて恥ずかしいではないか。
美穂が咎めるような視線を向けると、向井はいたずらを見咎められた子供のように頭を掻いた。
「ごめん。お前と話がしたくて……」
向井のことだから、何を言っても負けてしまう。一緒のベッドで寝ても別に嫌ではないが落ち着かないので困るのだ。
「お父様はどうだったんですか?」
「大丈夫だ。手術をして今は落ち着いている」
「よかった……」
それが一番気になっていたので安心した。美穂が油断して微笑むと、すかさずキスが落ちてきた。我が物顔で侵入してくる舌は熱く甘くて、美穂は勝手に部屋に入った向井を責めたことも忘れてキスに応えていた。
薄い素材のパジャマの裾から無骨な手が入り込み肌を撫でる。ソフトな感触にゾクゾクッと体が震える。胸の下を撫でていた手が柔らかい乳房を包み込むと、美穂は堪え切れずに甘い声を上げる。
「あっ……」
「美穂……抱きたい……いいか?」
向井の焦がれるような声に美穂は微かに頷いた。
腰に押し付けらえる固さが、向井の気持ちが切迫していることを教えてくれる。美穂は向井の耳元に顔を近づけ掠れる声でねだった。
「抱いて……ください」
パジャマのボタンを外す手が少し震えて見える。器用な向井がどうして? 美穂が自分で外そうとすると向井が恥ずかしそうに呟く。
「やばい。嬉しすぎて手が震える。美穂自分で外してくれるか?」
美穂が自らの着衣を脱いでいると、向井が体を起こしTシャツを脱いでベッドの下に落とす。ベルトを外しパンツも急いで脱ぎ捨てる。
こんなに焦る向井を見るのは初めてだ。美穂は目を丸くして向井を見上げた。
(いつもは何が起ころうと余裕たっぷりな人なのに……)
美穂が全てを脱ぎ去り、背を向けてベッドの上で丸くなっていると、いとも簡単にくるりと仰向けにされ熱い体がのしかかってきた。ピッタリと肌を合わせると、その心地よさに思わず声が漏れる。
「ん……っ、気持ちいい……」
「俺も。柔らかすぎて大丈夫かと心配になる」
美穂はクスッと笑って、向井の背に腕を回してしがみ付く。
「大丈夫……。先生、して……」
向井が顔をクシャッと歪めて美穂を抱きしめた。
「いいのか? 俺を煽って……知らないぞ」
大丈夫。向井のことはわかっている。絶対に嫌がることはしないし、自分を大切にしてくれる。美穂は向井を信頼していた。
激しいキスの後、顔を離して向井が呟いた。
「どんな体をしているんだろうって……想像しては馬鹿みたいにドキドキしていた。美穂……すごく綺麗だ」
向井のそんな思いすら今まで知らなかった。もしかしてあの外来で診察していた時も、そしらぬ顔をしていたけれど実はドキドキしていたのだろうか?
「私も。ずっと前から先生に触れられるだけで……」
とことん俺様な向井に口答えをしながら本当は、どんな風に女性を抱くのだろう? どんな女性を愛するのだろうか? そんな想像をしながら、それが自分でないことが悲しくて悔しくて内心で身悶えしていた。
「触れられるだけで……?」
「その……どんな感じなんだろうって……色々と想像していた……の」
「本当か?」
向井は両手で美穂の長い前髪を撫でつけると、またキスを落とす。
乳房をヤワヤワと撫でられて、先端が指でこねられる。美穂がくぐもった声を漏らすと、その声を向井の唇が飲み込んだ。
「んふ……っ、んん……っ……あっ……」
首筋から鎖骨、そして胸元まで降りてきた唇に乳房の先端を包まれて、美穂は身をくねらせて喘ぐ。
「気持ち……いい……っ」
「もっと気持ちよくさせてあげるよ」
唇は鎖骨をなぞり、乳房を食み敏感な先端を甘噛みする。
「ああっ……」
思わず声をあげ、音を立てて先端を吸う向井の頭を抱き締める。ウエストのくびれを舌が這い、柔らかい栗色の繁みまでキスを落としていく。鼻先が秘めた場所に当たると美穂は腰をモゾモゾとくねらせた。向井はクスッと笑いながら、こんもりとした恥丘をチロッと舐める。
「あ、きゃっ!」
ビクッと跳ねる腰を軽く押さえつけ、茂みを指でかき分けると、その淡く震える花弁に舌を這わす。
「ああっ……!」
震える蜜口から粘っこい愛液が溢れ出る。淡いピンク色の秘めた場所を舐められてまた腰が跳ねる。そのまま赤く染まっていく花芯を執拗に舌で舐め上げられて、美穂の喉から甘い喘ぎが漏れる。
「ああ……っ、あぁぁん……っ! あ、やぁ……っ」
アイスクリームを食べる子供みたいに執拗に舐められて、腰の震えが止まらない。時折ズズッと音を立てて愛液を吸われ、堪え切れずにまた声が漏れる。
「はぅ……っ、あ、あぁんっ!」
苦しいのに気持ちよくて、際限なく訪れる悦楽の波に呑まれそうになる。美穂は背中を反らせて、執拗な舌を受け入れ続けた。
やがて……果てた美穂の髪の毛を撫でて向井が問いかける。
「美穂、気持ちよかった?」
「ん……すごく気持ちいいんだけど辛くて、なんか変」
「ははっ、なんか変か……じゃあもっとおかしくなってくれ」
目を閉じている美穂にキスを落とすと、向井はまた問う」
「なあ、指入れてもいいか?」
「うん……入れて……」
ぬかるんだ蜜口に太く長い指が入っていくのを美穂は息を詰めて感じていた。向井はゆっくりと美穂の様子を確かめながら指を動かしていく。
中を抽送する指が増え、中壁を何度も擦られると、キツいけれどチリチリとした悦楽を感じる。
「んっ……なんか……へん……ああっ……」
蜜口が擦られる強い刺激と共に、中を抽送する指の鈍い痛みのような刺激が甘い悦楽に変わり、美穂は向井の下で甘い声を上げて達していた。
「はあっ……はあ……っ、先生……っ」
「美穂、もっとイケよ」
ズブズブと水音が響きそうなほど、愛液で溢れた中を角度を変えて指を抽送され、甘い痺れが腰から体全体に広がっていく。盛り上がった胸の頂きが生温かい感触に包まれ強く吸われて中壁が戦慄く。
「あぁぁっ……、あぁんっ! あ、やあ――!」
溢れる蜜はとめどなくシーツを濡らし、美穂は喉を枯らせて喘いた。
何度か果てた後、向井は一旦ベッドから降りてまた戻ってきた。美穂を抱きしめて耳たぶを軽く噛む。その刺激だけで感じてしまってまた声が漏れる。
「んんっ……」
両膝を押しながら向井がのしかかる。美穂が目を見開くと、切羽詰まったような表情で乞う。
「挿れていいか?」
「う、うん……多分、大丈夫」
「そうか?」
蜜口を突っついていた固い塊がゆっくりと入ってくる。
(えっ……痛い!)
柔らかい中壁を熱い剛直に押し広げられて思わず腰が引けそうになる。
「大丈夫か?」
気配を察した向井が声をかけてくる。美穂は笑顔を作って首を振った。
「大丈夫。きて……」
そう言って向井の首の後ろに両手をかけた。
(もっと早くに経験しておけばよかった? ううん、他の誰でも嫌だったんだもの、私はこの人がいい!)
身を裂かれるような痛みを感じながらも、熱い楔を受け入れる。舌が首筋を這いながらキスの足跡を残し、掌が乳房を覆い揉みしだきながら、じわじわと悦楽を与えてくれる。
痛みと快感を同時に与えられて脳が誤作動を起こしそうだ。膣中の異物感は半端ない。
「ふぅ……っ」
美穂が思わず息を吐いで身じろぐと、向井が苦しそうに顔を歪める。
「大丈夫?」
心配になって思わず声をかけると、唇を激しく貪られた。腰を浅く揺さぶられて乳房が揺れる。先端が食まれ音を立ててしゃぶられ、悦楽に声が漏れる。
「あぁっ! あぁ……んっ、あぁ……あ、や……ぁ!」
「美穂、動いていいか?」
「んっ、動いて……っ」
痛みに耐えながら、何度も何度も打ちつけられる楔を受け止める。愛を交わすことが、こんなに動物的で原始的で激しいものだったなんて……。そんなことを考えていられる余裕も次第になくなり、美穂は向井の肩にしがみついて嵐が去るのを待った……。
失神同然に果てた状態で、美穂はベッドに横たわっていた。両膝を立てられてハッと目を見開くと、向井が全裸で足元に跪いていた。
さっきまで絡みあっていたくせに、向井の圧倒的に男性的な裸体を前にして目のやり場に困る。彼が眠っていたらしげしげと眺めたいところだけれど、今はできない。
「美穂、ちょっと拭くから痛かったら言ってくれ」
「え?」
温かい濡れたタオルがあてられて、秘所を優しく拭かれる。
「タオル借りたぞ。後は風呂で優しく洗ってやりたいが……」
それは困る。一緒にお風呂に入るのは恥ずかしい。
「いいえっ! 自分で洗います。あ、ありがとう……」
しばらくベッドで抱き合っていたのだが、さすがにお腹が空いてきた。下半身が地味に痛いが動けないほどではない。朝食を作ろうと美穂は身じろぎをした。
「朝食……」
そう呟くと、向井が体を起こす。
「俺が作る。冷蔵庫の物を使ってもいいか?」
「えっ……いいの?」
「いつも飯を作ってもらっているからな。こんな時くらいは俺がするよ」
「ありがとう……」
向井が朝食を作っている間に美穂は急いで身支度をした。顔を洗った後、数分で顔と髪の毛を整える。
キッチンでは向井がフルーツを切っていた。美穂がいつも使っているプレートにトーストしたパンと小さなヨーグルトが乗せられている。
「座って」
そう言われて腰をかけると、少し足の間に痛みを感じる。
向井がプレートと紅茶を入れたマグをテーブルに並べる。朝は紅茶とパンなのだが、それを向井に話した覚えはなかったはず。
「紅茶……」
「紅茶とマグカップがブレッドケースの隣に並べられていたから朝は紅茶派なのかと思ったんだ。コーヒーは豆しかなかったから、朝から粉にするのは面倒だろう? これで合っているか?」
この男、やっぱり侮れない。
「朝は紅茶とパンなんです。コーヒーは朝食の後で淹れて職場に持参しています」
「そうか、美穂が淹れるコーヒーは美味いもんな」
「……ありがとう」
差し向かいで朝食を頂く……なんて穏やかな朝。
さっきまで動物みたいに絡み合っていたなんて信じられないほどに、正面に座る男は優雅な姿で紅茶を飲んでいる。
「先生、部屋の鍵がないんじゃ困るでしょう?」
「うん。鍵は実家に電話してどこかに落ちていないか聞いてみる。マンションの管理人も持っているはずだから、しばらく借りてもいいし」
「そうですね」
美穂が祖父に結婚の報告をしたことを話すと、向井は満面の笑みを浮かべて頷いた。
「ありがとう……これでやっと美穂を妻にできる」
美穂は朝食を食べる向井を見つめながら、結婚したらこんな日々が続くのかなあ……と甘い気持ちに満たされていた。