一途な副社長×薄幸の売られた花嫁
養父母に強いられた政略結婚の式当日、相手の男からひどい言葉とともに婚約破棄された紗雪。傷つく彼女の前に現れたのは勤務先の副社長である桐生院湊だった。「彼女は捨てられた花嫁ではない。奪われた花嫁だ」下劣な男を断罪し、紗雪と式を挙げる湊。その場限りの茶番かと思っていた紗雪を、湊は熱くかき口説き、同棲できるよう手を回していて――!?
逃げ場がないことを悟った紗雪は、両手で顔を覆うと、弱々しく答えた。
「その……さ、触ってほしくて。待っていたんです、副社長の手……」
湊から返答はない。沈黙が居たたまれず、紗雪はさらに弁解する。
「わ、わたし……経験がないから、知らないんです、どこをどう触られると、どんな風になるのかなんて。だから、色々と緊張してしまって……」
やはり返答がないため、心配になった紗雪は、ちらりと湊を見た。
湊は眉間に皺を寄せてしばし考え込み、訝しげに聞いてきた。
「きみは、俺が苦手なんだろう?」
「そうでしたが、不思議にもそれが薄らぎまして。副社長から嫌われていなかったことを知ったのも一因でしょうが、拒絶どころか、もっとしてほし……い、今のは忘れてください」
思わず背を向けてしまったが、湊が後ろから抱きしめてくる。
息を呑む紗雪の耳元に、吐息混じりの声が響いた。
「……答えてくれ。俺に抱かれてもいいのか? 俺は我慢しなくてもいいのか? ……紗雪」
そんな艶めいた声で、不意打ちみたいに名前を呼ばないでほしい。
心も体も、瞬時に蕩けてしまいそうになるから。
「還暦まで、待たなくてもいいのか?」
それは廉の冗談に決まっているだろうに、それを真っ当に受け止めているとは生真面目な弟だ。
(まさか、本気で還暦まで待つつもりだったのかしら?)
紗雪は思わずくすりと笑いながら、こくりと頷いた。
「副社長がわたしの心ごと、大事にしてくださっているのはありがたいです。それなのに、まだ心は曖昧なまま、身体を先に求めるのは申し訳ないのですが、その……初夜ですし。わたしもいい加減な気持ちで妻になったわけではないので、夫婦になった証が欲し……」
最後まで言えなかったのは、顔をねじ曲げられて唇を奪われたからだ。
「……俺だけかと思った。……特別なものが欲しいと思っていたのは」
湊は熱っぽい目でそう告げると、仰向けにした紗雪と再び唇を合わせた。
ちゅくちゅくというキスのリズムに合わせ、ボタンが外され、熱い手のひらが肌を滑る。
そして紗雪の胸を包み込むと、強く弱く……ゆっくりと揉みしだかれた。
甘い快感に酔いしれていると、胸の頂きにある蕾を指で弾かれ、きゅっと摘ままれる。
「んんっ」
びりっとした電流にも似た快感が走り、身体がぴくんと跳ねてしまう。
「たまらないな、きみの身体も感じ方も。どこまで俺を滾らせるつもりだ?」
湊は恍惚とした目を細めてそう呟くと、身体をずらして、胸の頂きを口に含んだ。
妖艶な男の顔で、赤子の如くちゅうちゅうと音をたてて蕾を吸いたて、時折、舌先で蕾を揺らしたり、唇で蕾を挟んで引っ張ったりする。
「ひゃ、ああ……!」
ざわざわとした甘い痺れが身体に広がると、呼応しているかのように秘処が切なく疼く。
しかも初心者だと知っているくせに、湊の愛撫は容赦なかった。
紗雪が強い刺激の方が好みだと知るや、蕾をにちにちと甘噛みしながら、反対の胸を形が変わるほど強く揉み、指先でくりくりと蕾を捏ねてくるのだ。
(ああ、副社長が……わたしに、こんないやらしいこと……)
いつも拒まれているのだと思っていた。どんなに仕事を頑張っても、彼の態度が軟化されることなく、くっきりと引かれた線の向こう側で、冷ややかな顔だけを見てきた。
その上司に、淫らに胸を貪られている光景は、あまりにも衝撃的で興奮してしまう。
その上、彼のこの行為は、強制でも刹那の戯れではないのだ。
――俺は神聖なる神の御前で、奪いとった花嫁に……心からの愛を誓う。
――頼む。俺にチャンスをくれ。きみと、結婚から……恋を育てたい。
今、自分はひとりの女として、身体ごと、彼に愛されているのだ。
紗雪の肌が、歓喜と快楽に紅潮し、わずかな快感も拾って大きく乱れてしまう。
紗雪の両手が無意識に湊の背中に回り、もどかしさを訴える腰がぎこちなく揺れた。
それに気づいたのか、湊は胸を愛撫しながら、片手を紗雪のズボンの中に忍ばせた。
黒い茂みと戯れた指先が、さらに滑って濡れた花弁を割ると、表面を前後に優しく擦る。
くちゅくちゅと、淫靡な湿った音が響いた。
「あ、ああ……」
中途半端なままで放置されていた部分が、ようやく刺激を受けて悦んでいるのがわかる。
指先の動きに合わせて、急いたような喘ぎ声が止まらない。
(ああ、なにこれ。気持ちよくて、脳まで蕩けてしまいそう……)
快楽に喘ぐ紗雪を、湊が愛おしげにじっと見つめていた。
紗雪が感じれば感じるほど、その目は熱を帯びて妖艶さを強め、紗雪の情欲を煽る。
「うっとりと、蕩けた顔をしている。可愛いな」
その笑顔は反則だ。心臓発作を起こして倒れてしまいそうになる。
「紗雪、聞こえるか。きみが俺に感じて、溢れさせている蜜の音だ。きみの身体は、俺を嫌っていないことを伝えてくれている。……嬉しいよ、まさか……受け入れてもらえるとは……」
紗雪は湊に嫌われていると思い、彼への苦手意識を強めたが、悲しいとかつらいとか、心的ダメージはなかった。しかし湊は違ったらしい。
彼が不得手とする言葉で、今まで彼が隠蔽してきた心情の一部を伝えてくれると、自分の態度がいかに彼を悲しませてきたのかがわかった。
罪悪感にも似た切なさが込み上げ、無性に湊に抱きつきたいような衝動となる。
そんな情動が身体に出たらしく、湊に気づかれてしまった。
「あぁ、こんなに溢れさせるから、下着もズボンもぐっしょりだ。風呂上がりなのに、風邪を引いてしまう。……脱がすぞ。俺の首に手を回して、尻を少し持ち上げて」
湊はどこか嬉しそうに声を弾ませ、するりとズボンと下着を抜き取った。
身体を隠す布がなくなると、羞恥心が一気に紗雪を襲う。
紗雪が足を閉じようとするが、その前に湊が、紗雪の足を持ち上げるようにして押し開く。
はしたない格好に紗雪は慌てたが、それに構うことなく、湊は指を秘処に這わせた。
遮るものがないため、湊の指は大胆に動き、濡れしきった花園を蹂躙する。
強い刺激が津波のように身体を襲いかかり、紗雪は悲鳴にも似た嬌声を上げた。
「あっ、ああっ、副社長……! それだめ……です、おかしくなる!」
紗雪は、血管が浮き出た男らしい腕を掴むと、頭を横に振って激しく喘いだ。
湊はふっと表情を緩め、半開きになっている紗雪の唇を啄んだ。
そして手淫をゆっくりにすると、紗雪を落ち着かせながら、熱に蕩けたような目を向ける。
「どれだけ蜜を溢れさせるんだ。紗雪……感じすぎだ」
紗雪が戸惑ってしまうほど、湊は優しい表情をしていた。
それを見ていると、またもや切ない心地になり、胸の奥がきゅんと高鳴る。
(ああ、わたし……優しい副社長に弱いんだわ……)
「言ったそばから。俺の指を溶かすつもりか?」
「そ、そんなこと……副社長が、んんんっ」
紗雪は羞恥に顔を赤らめつつ、円を描くような動きになった刺激に喘ぐ。
「俺がなに?」
これ以上、優しい顔と声を向けないでほしい。身体の昂りが止まらないのだ。
「副社長が……優しいから。身体が勝手に……」
「俺に優しくされると、感じるのか?」
乱れた息の中で紗雪が頷くと、湊は嬉しそうに微笑んだ。
(そんな微笑を向けられたら、わたし……)
「きみが可愛くてたまらないという言動を、〝優しい〟と感じるのか。抑えすぎていたのかな、いつも。だったら……きみがいつも悦んで俺に溺れてくれるくらい、優しい夫になろう」
耳を赤くさせて愛を語っていたくせに、こんな時は、紗雪を惑わせるほど男の余裕を見せつけ、饒舌になるなんてずるすぎる。
無敗の元帥ともまた違う表情に、否応なく、惹き込まれてしまうではないか。
「紗雪……もっと気持ちよくなれ」
湊は含んだ笑いを見せると、花園に触れていた指を、蜜口からくぷりと埋め込んだ。
「や、あ……」
異物が中に入ってくる感触に、紗雪は抵抗感と不安を覚え、身を強張らせた。
そんな紗雪の緊張を解すように、湊が紗雪の唇を奪い、優しいキスをする。
その瞬間、蜜壷に差し込まれた指がゆっくりと抜き差しを始めた。
痛いような苦しいような、そんな感覚に顔を歪めると、湊は紗雪の頭を撫でながら、何度もキスを繰り返して舌を搦めとった。
キスに蕩けてくると、違和感のあった抽送が気持ちよく思えてきて、吐息に甘さが滲んでくる。
湊は紗雪の耳に舌を這わせながら、掠れた声を響かせた。
「紗雪、きみの中……熱くてとろとろだ。俺の指を……すごく悦んでいる」
「……っ」
「俺が欲しいって、言ってくれている。たまらない……」
鼓膜を震わせる湊の艶やかな声音は、まるで彼自身が感じているかのようだ。
その声すらも快感で、紗雪は身を捩らせて息を乱した。
「紗雪……俺のも触ってくれ」
抽送を一時中断させた湊は、衣擦れの音をたてた後、紗雪の手を掴んで、下方にあるなにかに触れさせた。すごく熱く、長くて太さもあるものだ。
(これ、なに? 筋張って硬い感じだけど、俺の……って、どの部分?)
その正体を突き止めようと、おずおずとそれを握った瞬間、扇情的な湊の声が響く。
「ん……」
その声の色っぽさで、自分がなにを掴んだのかを察した。
驚きのあまり手を離そうとしたが、湊の手がそれを許さなかった。逆に紗雪の手のひらで、それを包みこむようにして前後に動かす。
「ああ……紗雪……」
湊は大きな身体を震わせ、焦がれたような声を絞り出す。
バスローブをはだけさせ、うっとりと感じている彼は蠱惑的で、紗雪はドキドキしてしまった。
「わかるか、紗雪が欲しくてこんなになっているんだ。紗雪が可愛すぎるから……」
噎せ返るような色香に、くらくらしてくる。
「同じだ。きみが優しくて、俺を受け入れようとしてくれているから……俺もすごく感じる」
「……っ」
「あぁ……。きみの中に挿れたくて、たまらない。隙間がないくらいにみっちりと埋め込んで、きみとひとつになれたら……」
湊は恍惚とした表情を浮かべて、紗雪の手ごと、己自身を扱き続ける。
滑りがよくなるにつれて、紗雪の中でさらに芯を持って、逞しくなるそれ。
触れれば触れるほどに、息を乱す湊も、男の艶を強めていく。
それに惹き込まれた紗雪は、気づけば自分から灼熱の太杭を扱いていた。
湊の秘めたるその部分が、愛おしく思えてたまらない。
視線が合うたびに何度も唇を重ねていると、湊は再び蜜壷に指を埋め込み、抽送を始めた。
「俺のを触っただけで、こんなに……蜜をこぼれさせているとは、紗雪は悪い子だ」
「……っ、あぁ……や、ん……」
明らかに、最初よりも抵抗感は薄れ、ぞくぞくするような気持ちよさを感じる。
湊を迎え入れたいと、身体が変化を見せていた。
「紗雪……挿れていいか、きみの中に。指ではなく……俺を」
切羽詰まったような湊の声に、紗雪はこくりと頷いた。
欲しいと思う。彼を体内で受け止めたい。
すると湊はバスローブのポケットから、なにかを取り出した。
「お節介な廉の贈り物だ。思うところは多々あるが、今は感謝しよう」
湊が口に咥えたのは、避妊具の包みだ。妖艶な眼差しを紗雪に向けて、封を切る。
「これがないと、俺から愛を注がれたきみは妊娠するだろう。子供ができたから、仕方がなく俺のそばにいるという、そんな縛りにはさせたくない。……子供だって可哀想だから」
なにを思い浮かべているのか、湊の表情は悲しげにも見えた。
準備を終えた湊がバスローブを脱ぎ捨てると、適度に筋肉がついた精悍な肉体が露わになった。
バスローブ一枚がないだけで、男の色香がここまで濃厚になるものなのか。
目のやり場に困りつつ、これからこの極上な男に抱かれるという緊張にドキドキしていると、湊は紗雪の横に身体を横たえ、横臥の体勢で紗雪をきつく抱きしめた。
肌が直に触れ合う感触は甘美で、どちらからともなく感嘆のような吐息が漏れる。
ねっとりとしたキスをしながら、紗雪は布団に押し倒されて、両足を押し開かれた。
湊は、紗雪の秘処に剛直を押し当て、ゆっくりと蜜をまぶす。
手で感じた熱と質量が、猛々しい生物のように、敏感な部分で蠢く。
その感触は、えも言われぬ快感をもたらし、紗雪は仰け反ってしまう。
「ああ……気持ち、いい……」
思わず口走ると、湊が嬉しそうに笑った。
「俺も気持ちいい。紗雪がこんなにとろとろになって、俺を受け入れようとしてくれるから」
「副社長も、気持ちいいんですね……。わたしだけじゃなくて、よかった……」
この享楽はふたりで分かち合いたい。
夫婦になったのだから。
「紗雪、今の俺は上司じゃない。きみの……夫だ。名前で呼んでくれないか」
切実な眼差しを向けられ、紗雪は戸惑いながらも口にした。
「湊……さん」
その途端、湊は泣き出しそうな表情になり、荒々しく紗雪の唇を奪った。
同時に、剛直のごりごりとした硬い先端が、花園を抉るように動いては蜜口を掠めていく。
まるで、この中に挿りたいのだと主張をしているかのように。
じれったい動きが、紗雪の官能を煽り立てる。
早く中に挿ってほしくて、中がきゅうきゅうと収縮しているのがわかる。
その変化を感じ取ったのか、湊が荒い息を吐きながら言った。
「限界だ。きみの中に……挿るぞ」