十年引きずってきた片思いを終わらせるため、再会した矢紘に告白した澄。しかし、「信じられないよ。お互いに十年想い合っていたなんて」と言われ、なぜかそのまま彼に抱かれてしまう。ことあるごとに全身をくまなく愛され、とにかく澄のすべてを知りたがり手に入れたがる矢紘。過剰なほどに澄のために尽くそうとする矢紘に戸惑いは募る一方で――?
「澄……澄、好きだ。好きだよ……好きだ。愛してる。愛してる、愛してる」
熱い吐息とともに矢紘は呟く。キスの合間に、息継ぎさえ煩わしいと言いたげに。
「ん……っ」
逃げなければ。でも、すっかり腰が砕けてしまって、起き上がれない。
身悶えすれば、体がシーツに搦め捕られていく。もがけばもがくほど深みに沈んでいきそうで、澄は必死で息継ぎをする。
「これが澄の……体。澄の肌……」
矢紘もまた、のめり込むように口づけを繰り返した。
ちゅ、ちゅ、とわざとらしく音を立てながら、幾度も角度を変えて。伝わる体温も、唇の柔らかさも、矢紘から与えられているということがまず、信じられなかった。
「んんぅ……っ……矢紘、待っ……んん」
どうやって拒否したらいいのだろう。そうだ、ベッドを下りればいい。
そう思いついたものの、起き上がることさえ満足にできない身では、不可能だった。
「ヤ、ぁ、ふ」
息も絶え絶えにもがいている間に、ニットとスカートをあっけなく脱がされる。
だめ、という言葉も執拗なキスに阻まれて、言葉にならない。タイツから足を引き抜かれるくすぐったさに震えれば、背中のホックを外され、キャミソールの中からブラを奪われた。
「透けてる……きれいな色だ……」
矢紘はため息交じりに呟いて、澄の首すじに顔を埋めた。うなじへのキスと同時に、胸の先を両方、キャミソールの上からするりと撫でられる。
「っあ」
得体の知れない衝動に、澄は目を見開いた。
(なに、いまの……くすぐったい、だけじゃなかった……?)
戸惑っている間に、矢紘はさらに指を擦り付けてくる。こすこすと動く親指は、ときどき意地悪に爪の先を食い込ませるから、たまらなかった。親指でくっと乳頭を押し上げられ、すっかり尖っていることに気づかされる。
「俺の指で、気持ちよくなってくれてるんだね……」
「い……や、矢紘……っあ、ぁ」
怖くなってきて、いやいやと首を振ったが、矢紘には通じない。はあっ、と澄がこぼした吐息に煽られたのか、布越しに右胸の先端にむしゃぶりついてくる。
「ああ……甘い……布越しでも甘いよ、澄」
「っは……ヤ、だめ、待っ……ぁ、っん……だ、めぇ、え」
「澄……好きだ。好き……好き、好きだよ。愛してる」
一度や二度ではない。前歯でも、犬歯でも、舐めては齧り、齧っては舐め……。
痕になりそうでならない絶妙な力加減は、澄をひたすら悶えさせる。
「も、許して……ぇ、え」
矢紘がまだ、ジャケットとネクタイしか脱いでいないのもいけない。シャツの袖口や、ズボンの布が肌に触れると、自分だけが下着姿なのだと実感してますます恥ずかしかった。
「お願い……っ矢紘、や、やめ、て」
「やめない。やめられると思ってるの? こんなに澄が好きで、澄にしか欲情できない俺が」
そんな事情は知らない。
「見るよ」
拒む暇も与えてもらえず、ぺろりとキャミソールを捲り上げられる。上気した肌が晒されて、澄はすかさず両手で隠そうとした。
「い、や……これ以上は……っ」
しかし両手はあっけなく捕まえられ、頭上に持ち上げられてしまった。
「……きれいだ……」
注がれる視線が、痛い。
上から横から、矢紘は澄が息をするたびに、上下して揺れる双丘を眺め続ける。
ふっくらとしたおわん型の胸は、大きすぎるわけではないが小さくもない。だから自慢げに見せつけるほどのものでもないと澄は思っているのだが、矢紘は執拗な観察をやめない。
「胸の先、見ているそばからもっと硬くなっていくね……かわいい」
「や、だぁ……ぁ」
恥ずかしくて、消えたくなる。
だがあまりにも矢紘がうっとりと、心酔したふうに澄を見るから、次第に頭が働かなくなっていった。矢紘の顔が降りてきていると知っても、後ろ手でシーツを掻いただけ。
差し出された舌は、気づけば膨らみで受け止めていた。
「ふ、ぁ」
「柔らかい……好きだ、全身どこもかしこも……永遠に触っていられる」
裾野から桃色の頂へ、もったりと矢紘の舌は動く。
「……ぁ、あ……」
悩ましげに腰を揺らしながら、澄は矢紘に勝手を許した。
膨らみを這うなめらかな体温に、羞恥心が残らず溶かされていく。
「っは……澄の胸……澄の……」
先端を舐められるかと思いきや、矢紘は右手の人差し指でそこに触れる。
つんとすぼんだ形を摘み、わずかに持ち上げて、ぱっと離す。そうして揺らした膨らみを、はあ、と息を吐きながら舐めつつ、頂の先をすりすりと擦る。
「ンぁ、あ、ヤ、矢紘、それ、やっ……ぁ、あ」
「その声……かわいい、澄のよがり声、最高にかわいいよ。もっと聞きたい。毎時間、毎分聞きたい……聞き続けたい。そうだ、録音――」
両胸の先に与えられる刺激に耐え、澄はぶるぶるとかぶりを振った。
「嫌ぁ……それ、だけは……っ」
「だめなの? でも俺、こんなふうに本物を覚えたら最後、今までのように空想ではイけない。動画は我慢するから、せめて声だけでも録っておかせてよ」
無茶苦茶だ。というより、空想で、というのは一体――。
しかし矢紘は大真面目な顔つきだ。澄んだまなざしで、真剣に見つめてくる。
つい見つめ返していると、矢紘の手が枕もとに伸びようとしたから、慌ててその腕を掴んだ。
「ほんとに、それだけは、やめて」
「どうしてもだめ?」
「……っ、どうしても、だめ……」
食い下がられるだろうと澄は思った。が、矢紘はすんなり「わかった」と頷く。
「じゃあ、そのぶん、耳にも目にも焼き付けさせて。俺が忘れられなくなるくらい、乱れて」
「っ、え」
拒否する時間は与えてもらえなかった。
枕もとに伸びていた手が、すっと下に行く。澄の胸もとから下へ、肌の上を滑る。おへそを撫でられて震えると、その手はあっさりと脚の付け根に到達した。
「あ……!」
茂みの上からやわやわと秘部を揉んだ指は、前後に揺れて中指を割れ目に埋めてしまう。
「ああ……初めてなのにこんなに濡れて……俺のためだけに……嬉しすぎるよ、澄」
「あ、あぅ、そこ、やだ、待ってっ……」
「録音の件は澄の言うとおり、やめたよ。だから、俺の言うことも聞こう?」
「そんな、無茶苦茶……ッあ……!」
澄が全身を固くしたのは、矢紘の指が前後に行ったり来たりを始めたからだ。
濡れた割れ目を前に後ろに撫でられると、火傷したように感じる場所にあたった。腰を引いて逃れようとしても、指はついてきて、ゆっくりと、わざとらしくそこばかり撫で回す。
「澄の……とろけて、指が気持ちいい……俺のも、こうして澄のに擦り付けたい……」
「っあ、や、矢……紘、ッう、動かさない、で、指……ぃ」
は、は、とどうにか息をしようとしたが、うまくいかなかった。脚の付け根の、敏感な一点をしつこく指で擦られると、他所に神経が行き届かなくなる。
痛いわけでも、くすぐったいわけでもない。それよりもっと鮮烈で、怖いけれど心を奪われずにはいられない。こんな感覚は初めてで、みるみるのめり込んでしまう。
「んぁ、あっ、あっ……ふ、ァっ、んぅ……もう、ヤぁ、あ」
「嫌? 本当に? ココ、撫でてるとほら、もっといっぱい、ぬるぬるしてくるのに」
「あぁ、あぅ、し、知らない……な、んでぇ……っ」
「気持ちいいんだよ、澄。気持ちいいって言って。俺に弄られるの、気持ちいいって。聞きたい……言ってみなよ、ほら」
言って、言って、と催促されていると、その通りにしてしまいそうになる。
秘部はもはや全体が腫れぼったく、厚みを持っているかのようだ。このまま捏ねられ続けていたら、そのうち風船のように破裂してしまうのではないかと不安になるほど。
「ふあぁ、んっ……あー……あ、っ、あ……!」
気持ちいい。ああ、確かにいい。どうしてそう言ってはいけないのだった?
わからない。きもちいい。くるくると円を描いて粒を擦り続ける指に、いつまでもそうしていて欲しいと願ってしまう――。
「っ、も……」
もっと。
そう口走りそうになったときだ。
「止まらないんだ……柔らかくて、熱くて……そんなに吸い付いたら、ああ」
矢紘が大きく息を吐くのと、処女の入り口を侵されるのは同時だった。
「ひ……っ」
鋭い痛みが下腹部に走って、澄は我に返ったような気分になる。
やはりいけない。これ以上はだめだ。十年も会っていなかったのに、再会したその日に、いくら両想いになったからといって、体を重ねるのは急すぎる。
「い、いった……痛……い」
「痛い? 力を抜いて、澄。大丈夫だから。はあ……指だけでこんなにいいのに、入ったらどんなにいいだろうな。俺、溶けるかも」
「ひあ……っ、あ、ヤぁあっ」
「第二関節まで入ったよ……このひくつき、たまらない……」
好ましそうに微笑んで矢紘は言うが、澄には矢紘の指が強引に内側を掘り進めてくるようにしか感じられない。ひりひりと、内壁が痛む。思わず、涙ぐんでふるふるとかぶりを振る。
「こ、怖いこと、しないで……えぇ」
「……怖いの?」
すると、矢紘はいきなり体を持ち上げて、澄の腰を抱えた。体を仰向けで丸める格好になった澄は、広げられた膝の向こう、掲げたお尻を覗き込むようにしている矢紘に気づいてぎょっとした。
「きゃ……ヤ、いやあ、見ない、でぇ」
「いいから見て、澄」
示されたのは、蜜口に入り込んだ矢紘の中指だった。もう、根もとまで中に入り込もうとしている。その指を、ひくひくと喜ばしそうに呑み込んでいくのは澄自身だ。
「ほら。怖いことなんて、何もない」
「い、やぁ……」
すこしずつ、矢紘の指が呑み込まれていく。
澄の花弁のひくつきに合わせて、奥へ、奥へ。
いけないと思っても、止められなかった。見ている前で、骨ばった中指は処女の場所にすっかり収まる。人差し指と薬指が花弁の膨らみにふにっと当たると、ぎゅうっと内側が締まって矢紘の指に絡みつくのがわかった。
「あ……あ」
「きつい……というより、澄が、俺の指を離してくれないんだ……すこしも動かせないほど、しっかり咥えて……ああ、本当に澄は、かわいい……」
あろうことか、矢紘は澄の中に中指をあずけたまま、秘所に顔を埋める。見られているだけで消えたいほど恥ずかしいのに、舌先で陰唇を舐められて澄は発火しそうだった。
火照った全身をばたつかせて、逃げようとする。
「だめ、矢紘、そんなとこ、だめなの……っ」
「下のお口のほうが素直だね、澄は。ちゅうちゅう俺の指をしゃぶって……美味しいの?」
指を咥えたままの蜜口を続けてチロチロと舐められ、澄はやはりもがいた。だが、矢紘の腕が伸びてきて、膝を裏からぐっと押さえてしまう。
赤い舌は、お尻の方からゆったりと、前へ蜜を集めるように動いた。
「ひぁっ、あ、あ、あ」
もう逃げられない。そう感じたのは、身動きが取れなくなった所為ではなかった。
指を深々と埋め込まれた内側。その奥からどっと、蜜が溢れてくるのを感じたから。
(だめ……だめ、でも、これ以上……頭で、考えられない……っ)
矢紘の舌は澄の中に収めた指を器用に迂回し、割れ目へとたどり着く。
ぱくりと左右に開かれた花弁は、内側から赤い小さな果実を覗かせている。これ見よがしに、矢紘は澄をちらと見てそれを舌先で捉えた。
途端、びくりと澄は飛び上がる。
「っは……!」
下半身全体が一体になったような、強い刺激だった。
「指で栓をしてるはずなのに、溢れてきたよ」
それをジュッと吸われると、たちまちわけがわからなくなった。
「やぁっ! ん……んァ、あっ、あんんっ」
「気持ちいい、って、そろそろ素直に言おうか……?」
「ふ、ア……あ、っいい……っきもちい……」
「ああ……! 澄、澄、かわいいよ。かわいい。もっとよくしてあげるから、力、抜いて」
そう言われなくても、澄の体はもはや弛緩しきっていた。
だらりと体の横に投げ出された腕は、跳ね上がる腰に合わせてシーツを掻くだけ。左胸をゆったりと掴まれても、その先端を指の隙間に挟んでしごかれても、抗えるはずがない。
「指、ちょっとだけ動かすからね。痛かったら、言うんだよ」
舌先で赤い粒を転がしつつ、矢紘は内側の指を揺らし始める。襞を押し広げては、感じる場所を探す指先。下腹部に起こった優しい波に、澄が呑まれるのはあっという間だった。