デザイン事務所に勤める愛莉は、最近できた取引先の社長の顔を見て驚いた。それは家同士の取り決めで結婚し、すぐに破局した自分の夫、詠一郎だった。「俺のわがままだ。もう一度だけチャンスをくれないか?」淡い憧れを抱いていた相手に熱く迫られて動揺する愛莉。お試しの同居の提案を受けると詠一郎はたがが外れたように彼女を溺愛してきて――!?
「愛莉。目を開けて」
詠一郎の手が愛莉の腹部に触れる。恐るおそる目を開けた愛莉は、すぐに頭の下から枕を取り、目元ぎりぎりまで覆った。
「そんなに俺が怖い?」
愛莉はふるふると首を横に振る。
「詠一郎さんが怖いんじゃなくて、その……」
「そうか。できるだけ痛くないようにするから」
愛莉の頬に触れ、優しくキスをしながら囁く詠一郎。
しかし、そういうことでもないのだ。
破瓜の痛みが怖くないわけじゃない。でも一番気がかりなのは、うまくできるか自信がないという点だ。
がっかりされたらどうしよう。大人の女性と数多の恋を経験してきただろう彼には、物足りなく感じるかもしれない。
……そう思っている。
愛莉の心配をよそに、詠一郎は枕を奪い取り上から覆いかぶさってきた。すぐに熱い口づけが降ってきて、またたくまに淫靡な愛の渦中に落とされる。
「ん、ん……ふ」
強く押しつけられた詠一郎の唇が、舐るように愛莉の唇の上を滑った。
首を滑らかに動かし、愛莉の唇の柔らかさを確かめるように、自身のそれをこすりつける。
時々、ちゅっと音を立てて離れ、視線を絡ませて、またキスに戻り……それを繰り返すうちに、次第に口づけが深くなっていく。
「ふ……あ」
閉じた歯列を割って、舌が口内へ忍び込んできた。
体温の高い肉厚な舌が、ぬるりと愛莉の舌を絡めとる。
キスに不慣れな愛莉の舌の動きに比べ、詠一郎のそれは滑らかだ。ゆっくりと繰り返し上顎を撫でられると、天にも昇る心地になる。
くすぐったいのと気持ちがいいのと半々。その心地を失いたくなくて、気づけば愛莉も夢中で舌を伸ばしていた。
「かわいすぎるだろ……」
吐息まじりに詠一郎が零す。と同時に、大きな手が太ももに触れて愛莉はビクッとした。でも、ここで怯んではいけない。
そう思い彼の背中に手を回しかけるものの、ためらっては引っ込め、また手を伸ばしては引っ込めて。
(こういう不慣れな女、彼は嫌かな)
詠一郎はもちろん慣れているようだ。女性に苦労することなんてなさそうな彼のことだから、きっと常に自由にできる相手が何人も……
一瞬嫌な考えが頭をよぎり、必死で打ち消す。
十歳も年上の彼に、女性経験がたくさんあるのは当たり前だ。逆に女性の扱いを知り尽くしていると思えば、ラッキーというほかない。
それに、彼が自分を好きだと言い、互いの気持ちを確かめ合っての行為ならそれでいいではないか。
ひしと抱きつくと、詠一郎が抱きしめ返してきた。愛情表現なのか、ひげが伸びつつある頬を愛莉の頬にこすりつけてくる。
「くすぐったい」
くすくす笑っていると、ざらりとした感触が顎に移動した。さらに太ももとヒップの丸みを優しく撫でられ、だんだんと気持ちがよくなってくる。
彼の唇は徐々に下へと向かい、愛莉の首筋を撫でた。耳の後ろに鼻先を突っ込んでうなじの匂いを嗅ぎ、肩にチュッと口づけて……
「あ……ん」
自然と吐息が零れ、首を反らす。
素肌を撫でる柔らかな唇の感触が心地いい。そこここにキスの雨を落とされて、次第に淫らな気持ちになっていく。
詠一郎の指がキャミソールの肩紐を下ろしても、今度は驚かなかった。
彼は器用に脱がせたキャミソールとストッキングを床に放り投げ、愛莉の胸元にキスを落とした。そしてブラジャーの上から胸を揉みしだき、その中心を指で強く押す。
「んっ……、はん……」
胸の先端にじんとした甘い痺れを感じ、愛莉は身悶えした。心なしか、詠一郎の息が荒くなったような気がする。
「気持ちいい?」
問いかけられて、こくりと頷く。でも、ブラジャーがなければもっと気持ちがいいだろう。
詠一郎は口元に官能的な笑みを浮かべつつ、愛莉の背中に手を回してブラジャーを取り去った。ふるん、と乳房が零れる。
「ずいぶん育ったな」
「え?」
「いや、なんでもない」
上から舐めるように見下ろす彼の視線に戸惑って、愛莉は自分を抱きしめた。
「隠すなよ」
「だって、恥ずかしくて」
「これからもっと恥ずかしいことをするのに?」
「そんないじわる言わないでください」
ふふ、と詠一郎が笑った。
「ごめん。好きな子をついいじめたくなるのは男の悪い癖だよな」
彼はそう言うと、愛莉の唇を中指で触れた。その指を正中線に沿ってスーッと下ろし、へその周りを一周する。
「んっ……」
愛莉が腰をくねらせたのに気をよくしたのか、続いて手のひらで腹部を撫でた。その手は徐々に上へと攻め上がり、脇に零れたバストを掬い、しっかりと包み込む。
両手でやわやわと揉みしだかれた乳房は、大きな手の中で自在に形を変えた。
詠一郎が胸に覆いかぶさってくる。すると、ぬるりとした何かが胸の先端を包み込み、思わず飛び上がってしまう。
「ひゃっ! 詠一郎さん、な、何を――」
「見ての通りだよ」
愛莉の胸の頂に舌をくっつけた状態で、詠一郎がこちらをねめつける。
「シャワーも浴びてないのに」
「むしろ浴びずにいてくれたほうがありがたい」
「へ、変態じゃないですか……」
驚いて口にするも、彼は涼しい顔だ。
「男はみんなそう思ってるとばかり」
「はァンっ」
すべて言い終わる前に彼が愛莉の乳首を口に含んだため、返事はお預けになった。
詠一郎は舌と唇を巧みに使い、薄桃色をした蕾を優しく攻める。舌で執拗にこね回したり、そっと歯を立ててみたり……
「んん……あ……っ、だめ」
愛莉は、ギュッと眉を寄せて喘ぎを洩らした。
彼が枕を手繰り寄せて愛莉の頭の下に挟み込んだせいで、彼に愛撫される様子がよく見える。
強く鷲掴みにされた乳房は紡錘型に形を変え、ピンクの先端はぷっくりと膨らんでいた。それを詠一郎は、わざと見せつけるようにちろちろと舐めたり、舌で器用に転がす。
「あ、あ……いやらしいですよぉ」
自分が発する甘ったるい声が妙に恥ずかしい。でも実際に、うっとりするほど気持ちがいい。
「そんなに煽るなって。もう十分だから」
「あ、煽って、ません」
「無自覚……ってやつか。俺をこんなふうにしたのは君なのに」
詠一郎が太ももに腰を擦り付けてきた途端、愛莉は短い悲鳴をあげた。
なんと彼は履いていない。ショーツを。しかも押しつけられたそれはあたたかくて、鋼鉄みたいに硬く、ずっしりと重そうだ。
愛莉は彼を驚愕の目で見つめた。
「鈍器?」
ぷっと詠一郎が噴き出す。
「重くはないけど硬いよ。触ってごらん」
「え……と、触って、い、いいんですか?」
「いいよ。むしろ触ってほしい」
恥ずかしいという気持ちよりも、興味が勝ってしまったのが自分でも意外だ。なにしろ処女だし、男兄弟がいるわけでもなく、父と風呂に入った記憶もほとんどない。
それでも勇気が出ず、ためらっていると詠一郎に手を引かれる。
(ひっ)
そのなんともいえない不思議な感触の物体に触れた瞬間、つい手を引っ込めたくなった。しかし彼に強く手を握られているため、そうもいかない。
試しに足元にちらりと目をやる。彼の脚のあいだからすっくと立ちあがったものを見て、愛莉は鋭く息を吸い込んだ。
「お、おっきい!! 無理です、こんなの入らない!」
「……誰かと比べてるの?」
彼はからかうような、それでいて咎めるように眉をひそめる。
「そんな、比べる対象なんて私……」
「愛莉は……はじめてだよな?」
肯定を示すため、遠慮がちに頷きを返す。
やはりバレていたらしい。キスの仕方も知らなかったのだから、当然といえば当然だけれど。
「やっぱり男の人って処女がいいんでしょうか」
いや、と彼はかぶりを振る。
「俺はそういうこだわりはないよ。でも愛莉は……愛莉だけは、ほかに抱いたやつがいたら腹も立つ」
「え……と、そうなんですか?」
「当たり前だ」
詠一郎が自分に言い聞かせるように頷く。いったん睫毛を伏せて、また開くと同時にこちらを向いた眼差しにどきりとする。
「だって君は、もう二十年も前から俺のものなんだから」
彼はその言葉を残して身体をずらし、愛莉の膝を両手で割った。
「きゃっ」
大切な場所を手で隠す間も与えられないうちに、詠一郎が愛莉の脚のあいだに顔を寄せる。ちろ、と何かが秘所に触れた瞬間、雷に打たれたみたいに強烈な刺激に襲われた。
「ああんっ、はっ……う、嘘」
大変なことが起きているのでは――焦った愛莉は詠一郎をそこから引っぺがそうと彼の肩を押した。
けれど、うまく力が入らない。秘所を襲う官能的な刺激はあまりにも強力で、冷静な思考も意思も奪われてしまう。
勇気を振り絞って足元を見やり、息をのむ。
あろうことか、詠一郎が自分の秘所を舐めているではないか。
誰にも見せたことがない秘密の場所だ。そこに彼は、鼻を近づけて、キスをして、舌で優しく愛撫して――
(嘘でしょう? シャワーも浴びてないのに)
少し目が回る気がするのは、ショックからなのか、それとも酩酊感なのか。
ゆっくりと考える間もなく次々と快感が押し寄せて、気づけば彼の頭をギューッと膝で挟み込んでいた。
「愛莉、苦しいよ」
ぱんぱんと太ももを叩かれて、少しだけ足を開く。
「ご、ごめんなさ……あ、だめ、それ、だ……ひぁんっ」
中心の秘裂に沿って蠢いていた舌が、急にぬるりと舐め上げた。
そこには女性の身体でもっとも感じる部分がある。いくら処女でもそれくらいは知っていたが、こんなにも気持ちがいいものだとは思わなかった。
愛莉の反応に気をよくしたらしい彼の舌が、下から上へ、下から上へと、秘裂を連続で舐め上げる。その動きの最後、蕾に舌が触れた瞬間には毎度びくっとしてしまう。
「あ、あ……っ、はあっ……あんっ」
あまりの心地よさに詠一郎の頭を強く掴む。
「すごいよ、愛莉。中からどんどん溢れてくる」
「いやっ……言わない、で……」
「ほら、こんなに」
「はんっ……!」
口を離した彼は、今度は指で愛撫を始めたらしい。
器用な指が、潤んだ谷間を滑らかにマッサージした。零れた愛液をまんべんなく襞に塗り込むように。蕾をいたぶるように。
脚のあいだから、くちくちという卑猥な音が漏れ聞こえて、愛莉は恥ずかしさに顔を覆った。彼の言う通り、そこがしとどに濡れそぼっているだろうことは想像に難くない。
「愛莉のここはすごくきれいだ。薄いピンクで……光ってて……誘ってるみたいに」
彼は谷間を指で撫でつつ、秘核を覆っている肉を指で広げて秘芯を舌で撫でる。
「は、あんっ……!」
もう一度。
「ああっ」
もう一度。
「あっ、ふ……っ、両方は、だめぇ」
さらに同じ刺激を与えられたら、身体の奥に不思議な感覚が生まれる気がした。
あたたかくて、むず痒く、じれったくなるような心地よさ。執拗に愛撫を受けているうちにその感覚がどんどんはっきりしてきて、やがてこれは尿意なのだと気づく。
これ以上そこをいたぶられたら、彼の前でとんでもない醜態をさらしてしまうかもしれない。
怖くなった愛莉は、詠一郎の肩をぐいぐいと押して後ずさりした。けれど、逆に逃がすまいとして食らいつく彼と攻防戦になる。はじめはぴっちりと敷かれていたシーツはもうぐちゃぐちゃだ。
「は、あんっ……だめっ、本当にだめ……お願い……!」