後継者候補のエリートイケメン×社長の隠し子だったシンデレラ令嬢
突然大企業グループの社長の隠し子と判明した由綺。倒れた父親の意思により莫大な遺産相続の可能性が急浮上、己の身の安全のため後継者候補の将真と契約結婚することに。彼は派閥争いや会社の安定のために彼女を手駒にしたいのかと思いきや、「なんとしてもきみを守りたかったから」と、甘々の新婚生活で由綺は溺愛され、実は一目惚れだと言われて!?
高鳴る胸を抑えながら体を洗って、将真の部屋に戻ったのは十五分後である。
将真は腰にだけバスタオルを巻いて、さっきと同じポーズでベッドに腰かけている。それでも急いで全身を洗ったらしく、艶のある黒髪が濡れていた。
「お待たせ」
どんな格好で戻ろうか迷った末、バスルーム前の脱衣室に常備してあった、来客用らしきバスローブを羽織ってきた。髪は乾かす暇がないと思って洗っていない。どうせこれから汗をかくのだし、洗うのは事後のシャワーでもいいだろう。
膝に肘を付けて俯いていた将真は、由綺を見ると眩しそうな顔をする。
「えっと、避妊具とかは――」
恥ずかしさを押し殺して由綺が訊くと「買ってきた」と将真はベッドわきのサイドチェストを指さした。そこには見慣れぬパッケージがぽつんと置いてある。
「あ、ありがと」
お礼を言うのも変かもしれないが、ちゃんと気遣ってくれたことは嬉しかった。由綺も買いに行こうと思っていたのだが、苑子の来訪でそれどころではなかったのだ。けれど今妊娠するわけにはいかない。
由綺はさっきより距離を詰めて将真の横に座った。
将真の手が由綺の肩を抱き、もう片方の手でおとがいを持ち上げる。
「キスしていい?」
――この状況で訊くか?
緊張を堪えて由綺は目を閉じる。将真の顔が近づく気配がして、唇が重なった。柔らかい皮膚の接触。気持ち良さにうっとりする。何度か顔を交差させて互いの唇の感触を味わうと、お互いの気持ちが通じ合ったかのように同時に唇が開き、舌が触れ合う。その感触に由綺は酔いしれる。キスが深くなり、舌が絡み合った。由綺の肩を抱く将真の手に力がこもり、由綺も彼の背中に手を回して抱きしめる。
「ん、ん……」
あえかな息を漏らしながら何度もキスを繰り返し、互いの官能を高めていった。
唾液の糸を引いて唇が離れると、二人とも目元を赤くしながら見つめ合う。
――好き。この人が好き。
今度は彼の首に手を回しながら、由綺は将真のキスを求める。彼も負けないくらい獰猛に由綺の口中を舐め尽くし、犯していく。
それだけで天にも昇りそうなほど幸せだった。
やがて体のバランスが崩れて二人とも後ろに倒れる。倒れながら将真は由綺の体を抱え込むように自分の下に組み敷いた。
両手の指が絡められ、由綺の手は頭の両脇でベッドに縫い付けられる。揉み合う内にバスローブの紐はほどけ、由綺の胸元が露になっていた。
「はぁ……」
甘い吐息を漏らして肌を火照らせる由綺を、将真は息を呑んで見つめている。
「うまくなくていいよ」
息が上手くできないまま、由綺は小声で囁いた。しかし将真の耳には届いたらしく、彼は僅かに目を見開く。
「私も将真のことが好きだから。触れたい。触れてほしい」
潤んだ目でそう言うと、将真も感激したように目尻を滲ませる。
「痛かったり嫌な感じがしたらすぐにそう言って。由綺が辛いことはしたくないから」
「うん」
小さく微笑んで見せると、将真も照れたように歯を見せて笑う。
二人は再び折り重なって深いキスを交わした。
甘い。触れた場所が熱くて溶け合ってしまいそうだ。
キスを交わしながら将真の手が由綺のバスローブの合わせを広げ始める。丸見えになった肩や鎖骨に将真はキスを落とした。これも気持ちいい。そして細い首筋に唇を這わせながら、両手で胸の膨らみを揉み始める。
「あ、ぁあんっ」
思わず漏れた鼻にかかった声に、由綺は恥ずかしくなってシーツをぎゅっと掴んだ。
そんな由綺の様子を窺いながら、将真は胸元にも唇を滑らせ始める。期待と緊張で由綺の胸が高なった。もっと下。今掌の真ん中に当たっている敏感な場所。
由綺の期待が通じたのか、将真は両手で固くなり始めた胸の先端をきゅっと摘まむ。
「ひゃんっ」
どれだけエロい声が出てしまうんだろう。そう思うが止められない。
将真は由綺の反応に気を良くしてくりくりと先端を弄ると、片方にぱくりとしゃぶりついた。
「ふぁ!」
天地がひっくり返るような衝撃を受ける。将真は更に舌を巻き付け、きゅうきゅうと締め付けてくる。その度に由綺の体はビクビクと跳ね、喘ぎ声が止まらなくなった。同時に足の間の付け根が疼き始める。
左右交互に散々由綺の胸を苛んだ後、いつの間にか将真の二の腕を掴んでいた彼女の手を取り、指を絡めて手の甲にキスを落とした。
「ふあぁあん……」
まるで子猫のように泣くしかできないでいる由綺を、将真は愛しそうに見下ろすと、微かに引っかかっていたバスローブの袖を腕から抜く。そしてもう一度恭しく由綺の手にキスすると「全然余裕ないから、あまり煽らないで」と微笑んだ。
「ちが、煽ってなんか――」
いないと言いたかったが、息が荒くなっていて上手く声が出ない。
「由綺」
将真の声が由綺の鼓膜を震わせる。こんなに甘い声を出せる人が、今まで女性関係がなかったなんて信じられない。声だけでイってしまいそうな気さえするのに。
「辛くない?」
訊かれた言葉の意味が一瞬分からなくて、由綺はぼんやりした顔になった。
「へ、き」
「そっか。ならよかった」
無邪気に笑う将真が可愛い。
「――ぉ真も」
「え?」
「無理してない?」
不意に湧き上がってきた問いを口に乗せる。女性を抱けないほど精神的な抑圧があったはずなのに、こんなに由綺に奉仕してしまって大丈夫なんだろうか。由綺を悦ばせようと無理しているんじゃないだろうか。
しかしそんな由綺の心配を払拭するように、将真は破顔した。
「すごく楽しい」
将真の答えに由綺も嬉しくなって微笑する。
「由綺、かわいい」
「バカ!」
可愛いなんてあまり言われたことがない。どちらかと言えば可愛げのないタイプだった。だから恥ずかしくなって咄嗟に反撃してしまった。
でも嬉しい。将真も嬉しそうだ。
「すっごくかわいい」
「もう……!」
将真の胸を叩こうとして、手首を掴んで阻止される。そのまま掴まれた手が彼の下半身に導かれた。
「うゃ!」
熱く滾ったものに触れ、つい火傷したような変な声が出てしまう。しかし由綺の手首を掴んだ将真の手はびくりともしなかった。
「分かる?」
「え?」
改めて問われ、彼が反応していることに気付いて顔が真っ赤になる。将真はやはり嬉しそうに由綺を見つめていた。
「……固くなってる?」
分かりきっている事なのに疑問形になってしまったのは、やはり恥ずかしかったからだ。
「うん」
けれどそんな由綺の恥ずかしさを凌駕して、将真は嬉しそうだった。
「由綺にだけ、反応できるのが嬉しい」
子供のように無邪気にそう言われると、恥ずかしがっているのがバカバカしくなってしまう。
「うん。私も嬉しい」
彼を引き寄せて額にキスする。まるでご褒美のようなキスだった。
「挿れたい。挿れていい?」
「えっと――」
そこはやはり初めてなので、場所が分かるか不安になる。
「大丈夫、慎重にやるから」
その言葉の意味を、由綺が理解したのは三秒後だった。
将真は由綺の足の間で膝立ちになると、内腿を持って大きく持ち上げて広げる。
「や、そんな――」
抵抗むなしく、将真は由綺の淫部をまじまじと見ると、間に指を滑らせた。
「ああんっ!」
そこはドロドロに溶けていた。花弁の合間に差し込まれた指がぬちゅぬちゅといやらしい水音を立てる。
「ダメ、や、将真……!」
あまりに無防備な格好をさせられて抵抗の声を上げると、将真の指はぴたりと止まった。
由綺は腕で顔を覆って胸を上下させている。
「ごめん、嫌だった?」
将真の心配そうな声に、由綺は覆っていた腕をのけて彼を見つめると、小さく唇を尖らせた。
「いや、じゃないけど……気持ちよすぎて怖い」
いいように翻弄されている自分が少し悔しかったのだ。けれどしょんぼりしてしまった将真を見ていると、そんな自分が情けなくなる。
「いいよ、続けて」
自己嫌悪でぶっきらぼうな声になってしまったのは否めない。けれどその言葉で安心したのか、将真は再び由綺の淫部に指を泳がせ始めた。くちゅくちゅと、将真の長い指がそこを探って動くたびに潤いが増すのが分かる。気持ちいいのだ。しかも指先が前方の敏感な花芽を掠る度に由綺の体はビクビクと震え、体の疼きが高まってしまう。
将真の指がわざとそうしているのか、それとも初めてだから何かを探ろうとしているのかはよく分からない。
(でももう、奥に欲しい――)
大きく足を開かれ探られている恥ずかしい格好だと言うのに、由綺は我慢できなくなってしまい、彼の名を呼んだ。
「将真ぁ……」
縋るような啼き声。将真は由綺の方を見上げる。
「もっと……下の――」
将真は小首を傾げると、指の位置を後方にずらした。昨日はそこに彼の長い指が抜き差しされたはずだ。熱で浮かれていたから忘れているのだろうか。
「……ここ?」
ようやくたどり着いた蜜口から、指が差し込まれる。
「はぁん……っ」
「すごいトロトロだ……」
「や、言わないで……」
「うん。でもどこがいいのか教えてほしい」
将真の真面目な顔に、由綺はふてくされたように答える。
「わかんないよ、そんなの。私だって初めてなのに」
「え?」
由綺の返答に将真は一瞬動きを止めたが、直後、優しい顔になった。
「そうか。じゃあ、二人で一緒に色々試そうか」
将真の告白を聞いておいて、由綺は後出しになったと怒られるか呆れられるかと思ったのに、将真は優しいままだった。
「将真って……処女厨?」
一瞬、そんな変なことを考えた。
「考えたことない」
それが将真の答えだった。それはそうかと思う。今まで女性とほぼ関わらない人生だったのだから。
「でも特に処女が好きなわけじゃないし、由綺が初めてでもそうでなくても気にはならないと思う」
「そうなの?」
「それより由綺に気持ち良くなってもらう方に必死だから」
淡々と語る将真に、由綺は感情が高ぶって泣きそうになった。
将真の言う通りだ。今、二人の気持ちが大事なのであって、過去は関係ない。少なくともこのベッドの中ではそうだった。
どんな出会いであれ、由綺と将真が今までどんなふうに生きてきたかはこれから知っていけばいいことで。それより今は二人で触れ合いたいという気持ちを最優先にしよう。
そう思ったらそれまでどこか緊張していた体が少しほぐれた気がした。
「将真の指、気持ちいい」
それでも事実を告げるのは勇気が必要だったし恥ずかしさは消えなかった。
「もっとしていい?」
「うん」
由綺が頷くと、将真は再び由綺の蜜口からその奥を擦りだす。
由綺は目を閉じて彼の感触に身を任せた。
「女の人の体って……深いんだな」
将真の素朴な感想に、由綺は笑い出しそうになるのを堪えながら言った。
「でないと、あなたを受け入れられないでしょ?」
気が付けば将真の腰に巻かれていたバスタオルもすっかり外れ、彼も生まれたままの姿になっている。平らな胸板。広い肩幅。引き締まった腰つきと、その中心で勃ち上がっている彼の性器。
由綺に言われて初めて気がついたように、将真は自分の性器をまじまじと見る。
「僕を……受け入れてくれる?」