「お前が思っているよりずっと、俺の愛情は重いぞ」
両親に結婚を急かされた令嬢の明日華は、長年片思い中の上司・実樹也と成り行きでお見合いすることに。破談前提で臨んだ彼女だが、予想外に婚約が決まり…!? それでも実樹也にとって、これは愛のない政略婚だと思っていた明日華。だけど彼は、会社での厳格ぶりを忘れるほどの蕩ける笑みで、明日華を搦めとるように甘い熱情を注いできて――。
窓からの景色を眺めていると、ふいに肩を引き寄せられる。実樹也の顔が思いのほか近くにあって、彼の匂いが鼻を掠めると心臓がけたたましく音を立てた。
「そういうの、いきなりは、ずるくないですか?」
「いきなりじゃなかったら、今からキスするけどいいかって確認するのか?」
「キス……キスするの?」
顔を覗き込まれて「いや?」と尋ねられた。いきなりと言いながらも、事を進めるタイミングで確認してくれるのは実樹也の優しさに他ならない。
明日華が首を緩く横に振ると、実樹也がカーテンを閉め、掠めるように唇が触れた。
「うわ、初めてしました」
明日華の言葉に実樹也が目を瞠る。男性慣れしていないのは態度から見て明らかだっただろうが、キスさえ初めてだとは思わなかったのだろう。
「うわって、お前な。一応確認するけど、本当にいやではないんだよな?」
「はい」
「じゃあ、もっとしていい?」
どう答えていいものかわからず、答えの代わりに実樹也の背中に腕を回した。
頬を軽く撫でられて、頬に添えられていた手が首を通り後頭部に回され、頭を引き寄せられた。
今度は、唇が重ねられたあと、きつく閉じていた唇を舌でノックされる。生温かい舌で唇を舐められて、腰からぞくぞくとしたなにかが生まれ全身を駆け抜けた。
「ん~ん……っ、は、待って、くださ」
彼の胸をとんと叩くと、息苦しさに眉根を寄せている明日華に気づいたのか、ややあって唇が離れていく。
「どうした?」
「だって、息、できない」
鼻で呼吸しようと思えばできるのだが、キスの心地好さに流されていると呼吸するのを忘れてしまうのだ。涙目で訴えれば、目の前で実樹也が噴きだす。
「息できないって、お前……っ」
実樹也は意外にも笑い上戸だと、彼が上司であるときには知らなかった。彼の笑顔に慣れてきている自分に驚く。
「もう……笑わないでください」
明日華がふいと顔を背けると、軽く背中を叩かれて抱き締められた。
「笑って悪かったって。許せよ、ただ、可愛いと思っただけだ」
目尻、頬と明日華の機嫌を伺うように順番に口づけられると、彼への恋心故に簡単に許してしまう。
「ゆっくりしてくれたら、許してあげます」
「了解。俺が我慢できる限り、ゆっくりしてやる」
目を瞑って上を向くと、ふたたび掠めるように唇が触れあった。上唇と下唇をねっとりと舐められて、その心地好さに無意識に唇が開く。
何度も唇を吸われて、鼻で呼吸をするのにも慣れてきた頃、隙間から差し込まれた舌に歯茎を舐められた。
「ん、はぁ……」
後頭部に差し込まれた手で頭皮を撫でられるたびに、背中がぞくぞくと震えて、腰が砕けそうになる。実樹也の背中にしがみつくと、ますます身体が密着し、自分の激しい鼓動さえ伝わってしまいそうだ。
重なった唇がくちゅりと湿った音を立てた。唾液がかき混ぜられたようなその音が恥ずかしくて、うっすらと目を開けると、熱の籠もった眼差しに射貫かれる。
「ふ……ぅ、んん~っ」
次の瞬間、ぬめる舌が強引に口腔に滑り込み、明日華の舌を搦め取った。舌先同士がぬるぬると擦り合わさると、口腔にどっと唾液が溢れてくる。溜まった唾液を美味しそうに啜られ、ますます卑猥な音が物音のしない室内に響く。
腰がずんと重くなり、下腹部が甘く疼く。心地好さだけではない、得体の知れない感覚に全身が支配されそうだ。怖いとも思うのに、もっと彼を知りたいとも思う。明日華は彼がしてくれたように舌を動かし、絡め合わせた。
「ん、ふぁっ、ん」
鼻にかかった自分の呼吸がやたらと艶めかしく聞こえて、羞恥でどうにかなりそうだ。なんとか声を漏らさないようにすれば、またもや呼吸を忘れて苦しくなる。
ふぅふぅと必死で息をしながら涙に濡れた目を実樹也に向けると、目を逸らさずに見つめ返されて、口腔を弄る舌の動きが激しさを増す。舌をちゅ、ちゅっと啜られるたびに、頭の奥が陶然としてきて淫らな声が漏れそうになるのを抑えられない。
「はぁ、ん、ぁ」
「……っ、その声、やばいな」
実樹也の口からも熱い吐息が漏れて、重なる唇の隙間から二人分の艶めかしげな息遣いが響く。腰をぐっと引き寄せられると、逞しい胸板が乳房に触れて、壊れそうなほど心臓の音が激しく鳴った。それでもやめてほしいとは思わず、離れそうになる唇に自分から口づける。
「もっとしてほしい?」
キスの合間に聞かれて、小さく頷く。
すると、ぬめる舌で口蓋までをも舐め尽くされ、口の周りが互いの唾液でべたべたになっていく。角度を変えながら何度も口づけをしているうちに、全身から力が抜けていた。気づくと実樹也に腰を支えられており、体重のほとんどを彼に預けている。
「やめないで」
ねだるように唇を触れあわせていると、身体がぐらりと傾いた。
立っているのはすでに限界だった。
「この体勢じゃ危ないか」
力の抜けた身体を背後から支え直されて、床の上に座らされた。もう終わりなのかと名残惜しい気持ちで実樹也を振り返って見つめると、彼の口からため息が漏れる。
「もう、終わり?」
「いや……俺もそこそこ限界なだけ」
「限界?」
うっとりと彼を振り返りながら首を傾げると、背後からぐっと腰を押し当てられた。臀部に触れる硬いものの正体に気づき、身体中の血液が沸騰したかのように熱くなる。
「あ、の……それ」
「来週まで我慢しようと思って、キスだけでやめようと思ってたのに、あまりに可愛いところを見せられるとな」
実樹也はため息交じりに言いながら、明日華のスカートの中に手を忍ばせた。
「わ……っ」
「今日は少し触るだけだ。本番は来週だから……ほら、身体の力を抜いて。痛いことはなにもしない」
そう言われて太腿に触れられても、力など抜けるはずがなかった。
「なにを、するの?」
動揺しつつ尋ねると、誰も聞いていないのに、声を潜めて耳元で囁かれた。
「気持ちいいこと。緊張でがちがちになってると濡れないだろ。練習だと思えばいい」
「練習?」
「そう……ここにも触るよ」
「ん……っ」
実樹也の手が太腿の内側に入り込み、ショーツのクロッチ部分をつんと突いた。思わず腰を捩り、足の間に差し込まれた彼の手を挟んでしまう。
「寄りかかっていいから、足、少し開いて、伸ばして、そう」
言われるがままにほんの少しだけ足を開いて伸ばすと、両方の手が太腿の上や横を行き来する。自分で触れても気持ち良くもなんともないのに、彼の手に触れられていると思うだけで、なんだか気持ちがそわそわして落ち着かなくなる。
「くすぐったい?」
耳の近くで聞こえる熱の籠もった声がやたらと官能めいていて、手の動きも相まって、徐々に身体が熱く火照りだす。強張っていた身体から力が抜けてくると、下腹部がきゅっと張り詰め、あらぬところが濡れるような感覚がした。
「あ……っ、ん」
太腿の上を撫でていた手が内側に入り込み、柔らかい肉を揉みしだく。その際、彼の指先が掠めるように秘裂に触れて、腰がぴくりと跳ねた。
「ん、あぁ」
「足、閉じるなよ」
思わず足を閉じてしまうと、耳朶を軽く食まれて、耳の中に彼の舌が入り込む。くちゅ、ぬちゅっと、耳の奥で濡れたような音が響き、全身が燃え立つように熱くなる。その間もずっと太腿の内側を這う手の動きは止まらず、全身の肌がじっとりと汗ばんでくる。
「はぁ……っ、ん、あ」
ただ太腿を撫でられているだけなのに、じっとしていられない。気づくと、腰を浮き上がらせており、立てた膝がゆらゆらと揺れていた。スカートは太腿の付け根まで捲り上がり、淫らな彼の手の動きが視界に入ってくると余計に興奮が高まった。
「そろそろスイッチ入ったか?」
「わ、かんな……っ」
そう聞かれても、なんのことやらだ。
ただ、気持ちいいのに物足りないような感覚がしてくると、彼の言葉の意味を身体で理解する羽目になる。
「ここ、触ってほしくなった?」
彼の指がショーツの上からつんと蜜口を突いた。耳朶を舐めながらそう問われて、明日華は熱い息を漏らしながら小さく頷いた。
「そうか、よかった。あぁ、ちゃんと濡れてるな」
くにゅくにゅとそこを軽く押されると、背筋からぞくぞくする震えが駆け上がってきて、なにかが溢れる感覚が止まらない。
ショーツはすでに肌にぴったりと張りつくほどに濡れてしまっている。知識として頭にあったとしても、いざ自分の身体の変化を目の当たりにすると平静ではいられなかった。
「恥ずかしい……っ、です」
「何度もすれば、そのうち慣れる」
そうか実樹也は何度も女性とこういう行為をしたのか、そう思うと、悔しさと過去の女性と張り合うような気持ちが芽生えてくる。未経験の自分ではおそらく彼を満足させてあげることはできないだろうし、張り合っても無駄だとわかっていても、気持ちだけはどうしようもない。
「ほかの人にも、いっぱいしたの?」
嫉妬心のままに口に出してから後悔した。どうしてこう自分は思ったことがすぐに口から出てしまうのか。すると、明日華を抱き締める腕の力が強くなる。
「今はお前にしかしない」
「ほんと、ずるいです」
「可愛い嫉妬なら大歓迎だよ。お前がふてくされてるのは、俺が好きだからだろう」
「嫉妬ばかりしていて、嫌いになりません?」
「なるわけないだろう。新入社員として入ってきたときは、わがままなお嬢様の相手をしなければならないのかと、ひどく気が重くなったものだが」
「ひどいです」
「今は、そうじゃないって知ってるからな」
実樹也は笑いながら、明日華の顔を覗き込むように首を傾けて、唇を重ねた。宥めるような口づけを贈られると、機嫌などすぐに直る。
「あぁ、あと誤解がないように言っておくが、俺だってそこまで経験があるわけじゃないぞ」
「それを信じてあげますから、誰よりもいっぱいキスしてください」
そこまで経験があるわけじゃない、なんてうそだ。明日華を傷つけないための優しいうそ。あの女性と何度もホテルにいたのだから。
明日華が彼の肩にもたれかかると、ふたたび唇が塞がれた。承知したとでも言うように、触れあうだけのキスは長く続く。
気持ち良さにうっとりしていると、ふいに実樹也の手がショーツの内側に入ってきた。太腿に置かれていた手のことなどすっかり忘れていた明日華は、驚きのあまり腰をびくつかせる。
「んっ、や」
「練習だって言っただろ。今日は、気持ちいいことだけしてやる」
実樹也はそう言いながら、じっとりと濡れた秘裂に指を這わせて、優しく撫でた。指を動かされると、太腿を撫でられたとき以上に強烈な感覚が腰から生まれる。甘い疼きが全身に走り、無意識に腰が揺れてしまうのを止められない。
「あぁ、ほら、たくさん濡れてきた」
彼の指の動きに合わせて、くちゅ、ぬちゅっと、いやらしい音が響く。それが自分の身体から生まれた音だなんて信じがたい。恥ずかしさのあまりどうにかなってしまいそうだ。
「やっ、音、立てないで」
「いいんだよ、このまま気持ち良くなってろ。もっと濡らして、達けるようになろうな」
リズミカルに実樹也の指が動く。陰唇を開くように撫でられると、ぴたりと閉じていた蜜口が開き、男を欲するようにヒクついた。蜜口から溢れる愛液を秘裂に塗りたくられて、ますます卑猥な音がひどくなっていった。
「はぁ、あっ、ん、あぁ」
誰にも暴かれたことのない恥部を好きな男に弄られる羞恥で泣きたくなる。それなのに、指先でぬるぬるとそこを擦られるのがたまらなく気持ちいい。幾度となく快感を与え続けられているうちに、自分の常識さえ塗り替えられているのか、徐々に大胆な気持ちになっていく。
「もうクリトリスが勃ってきた、覚えがいいな」
くすりと小さく笑いながら、陰唇を捲り上げられ、恥毛に隠れた芽を暴かれる。
つんと軽く突かれただけなのに、敏感なそこに触れられると、驚くほどに反応してしまう。恥部がきゅっと痛いほどに張り詰め、どっと愛液が溢れた。
「やぁ……っ、な、に、それ……あぁっ」
「ほら、明日華、ここだよ、覚えて」
実樹也はあろうことか明日華の手を取り、濡れた秘裂に触れさせた。思わず手を引こうとするが、男の力で掴まれていては抗えない。濡れた恥部の上部にある小さな芽に指が当たると、腰がびくりと跳ねる。
「んんっ」
背中を仰け反らせながら、荒々しい息を吐きだすと、ようやく手が解放された。
「触れば触るほど快感に慣れていくから、来週、俺が抱くまで、毎日自分で気持ち良くなる練習をしておけよ?」
仕事を言い渡すときと同じ口調でそう言われて、明日華は羞恥のあまり気が遠くなった。
「む、無理……っ、です」
「大丈夫、やり方はこれから教えてやるから」
そう言いながら彼は濡れた淫芽を指の腹で優しく転がした。