初恋を諦めない一途な御曹司×自己評価低めの彼女
突然勤め先の倒産に遭った水希。更にストーカーに迫られ窮地に陥ったところを、イケメン御曹司・康隆に救われる。なんと二人は祖父同士が決めた許嫁で、彼は水希をずっと探していたと告げられ…!? 勢いで康隆と一夜を過ごしてしまい、そのまま彼の屋敷で暮らす事態に戸惑いつつも、徐々に彼の愛を受け入れるが、この婚約には裏があるとの噂を聞いて!?
(あれ……私……?)
確かに豊島は整った顔立ちをしているし、好みじゃないと言えば嘘になる。
けれど恋愛も合コンも経験のない水希としては、自らワンナイトを望むような行動なんて恥ずかしすぎた。
(ちょっとなに優雅にシャワーなんか浴びてるの? これじゃお持ち帰りしてくださいって言ったも同じじゃない!)
急いでバスルームから出ようとするが、脱いだ服が見当たらない。
仕方なくバスローブを着て出ると、リビングでは豊島がスマホを片手に誰かと遣り取りをしていた。
電話が終わるのを待ってから、水希はドアから顔だけ出して豊島に声をかける。
「あの、服は?」
「クリーニングに出しましたよ。明日の朝に部屋へ届けてもらうよう手配したから安心して」
(……てことは、お泊まり前提?)
恋愛ごとに鈍い水希でも、男性と二人でスイートに宿泊するという事がどういう意味を持つのかくらい分かる。
いくら酔っていたとはいえ、あまりに考え無しの行動すぎて自分が恥ずかしくなった。
「迷惑かけてすみません。私、ソファで寝ますからお気になさらず。ホテル代も支払いますから」
すると豊島が近づいて来て水希の手を取り抱き寄せた。
「あなたはとても、面白い人だ」
「え……」
「私の外見は、タイプではありませんか?」
「まさか! とても格好いいと思います」
思わず首を横に振って否定する。好みの差はあれど、豊島が破格の美形の部類に入るのは間違いない。
「ならよかった。少なくとも、外見上では合格という事ですね」
「合格とかそんなんじゃなくて」
「水希さん」
腰を引き寄せられ、顔が近づく。
「あなたが欲しい」
吐息がかかる距離で囁かれて、頭の中がぼうっとする。
「待って。私、そんなつもりじゃ……」
「悪いのは全て私です。水希さんは悪くない」
誘惑の声は甘く、水希の心を絡め取る。男性とこんなに密着したことも、まして体を求める言葉を告げられるのも初めてのこと。
煩いくらいに鳴る心臓が怖くて、彼の腕に縋り付いた。
「本当に、私……どうしていいか、分からないの」
「すみません。気持ちが抑えきれない」
謝罪の言葉が終わらないうちに、唇が重ねられた。
軽く触れてすぐに離れた熱を無意識に追いかけてしまう。
「豊島さん……」
「可愛い人だ。全て私に任せて」
「きゃあっ」
軽々と抱き上げられた水希は、そのままベッドルームへと運ばれる。黒を基調にしたシックな部屋には、広いベッドが置かれている。
正面の窓は天井から床までの一枚ガラスで、レストランと同様に夜景が一望できた。
間接照明だけがぼんやりと照らすベッドに下ろされ、水希は自分がバスローブ一枚だと思い出す。
「あ、待って」
バスローブをはだけられ、水希は身を捩る。
「私、その……本当に……こういうこと、したことなくて。だから、駄目なの……」
自分でも何が言いたいのか分からず、支離滅裂な言葉を紡ぐ唇に豊島の指が触れた。
「純潔を守ってきたということですね」
古風な言い回しに水希はぽかんとして彼を見つめる。
なし崩しに関係を持とうとしている状況なのに、なんだかおかしくなってくる。
「そんな、純潔なんて。お姫さまじゃないんだから」
「私にとって、あなたは姫君ですよ」
歯の浮くような台詞も、豊島が口にすると様になる。その上、手を取られて指先にキスまで落とされる。
「守ると約束したあの日から、ずっと――」
(あの日?)
彼とは今日が初対面の筈だ。もし以前会っていたなら、豊島ほど格好いい男性を忘れるはずがない。
「私、豊島さんとは……」
「康隆、と読んでください。水希さん」
「や……康隆さん」
名前を呼ぶと康隆が心から嬉しそうに微笑む。
「ずっとあなたに触れたかった」
「え、あ……っ」
首筋から鎖骨にかけて大きな掌で撫でられ、水希は甘い悲鳴を上げた。擽ったいだけでない、お腹の奥が熱くなるような不思議な感覚に戸惑う。
「愛してる、水希」
上着を脱ぎ、片手でネクタイを緩めた康隆が覆い被さってくる。肩から鎖骨をなぞっていた指が徐々に胸元へと移動していく。
「ぁんっ」
胸を揉みしだかれて、唇から甘い声が零れる。まだ酔いが残っているせいか、自分が今なにをされているのかよく分からなくなってくる。
「ぁ、だめ……だめなの……」
それでも必死に拒もうとするけれど体に力が入らない。
最初はくすぐったさの方が勝っていた感覚が、次第に焦れったく甘い快感へと変わっていく。自慰も殆どしたことのない水希にとって、他人から与えられる愛撫で感じるのは未知の領域だ。
「緊張してるね」
「だって……恥ずかしいから」
「ここには君と私しかいないのだから、楽にして」
左腕が水希を支えるように首の下にまわされる。
腕枕の体勢になり、康隆が水希の顔を覗き込んでくる。恥ずかしくて横を向くと、右の耳元に康隆の吐息がかかった。
「顔、見せて」
「恥ずかしい、です……あんっ」
乳首を少し強く弄られ、水希は息を詰める。初めての行為が怖いのに、体の芯が淫らな熱を帯び始めていると自覚する。
「ひゃんっ」
「感じやすいんだね」
乳輪をなぞり、指先で乳首を摘ままれる。ぞくぞくとした甘い痺れが背筋を這い上がる。
(私の身体、どうしちゃったの?)
自分でするときでも、こんなに感じた事などない。なのに胸を少し愛撫されただけで、秘めた場所が潤い始めるのが分かる。
「口を開けて」
言われるまま大人しく唇を開くと、肉厚の舌が滑り込んで口内を這い回る。先程とは違う深い口づけに、水希はただされるままになる。
その間も指は執拗に水希の乳首を弄りまわす。
まるで魔法のように、康隆が触れた場所が熱を帯びていく。感覚が鋭くなり、身体の芯がじわりと熱くなってく。
「これ以上は、もう……」
「どうして?」
腕にまとわりついていたバスローブを取り去られ、無防備な姿を康隆に曝してしまう。
身を捩って隠そうとしたけれど、それより先に彼の手が脚の間に滑り込んだ。
「やっ、あぁ」
花芯を摘ままれ、はしたない悲鳴が唇から零れた。
大切な部分を出会ったばかりの男性に愛撫され、感じている現実に頭の中が真っ白になって涙が溢れる。
それが羞恥なのか、恐怖から来る感情なのか。どちらかも分からない。
「水希、どうか私を受け入れてほしい」
「でも……私……恥ずかしい。初めてなのに、こんな……」
「私は水希が感じてくれて嬉しいよ」
見つめてくる康隆の瞳は熱を帯び、喘ぐ水希を前に微笑んでいる。
「あンッ」
指の腹で円を描くように花芯を擦られて、水希は堪えきれず軽く達してしまう。浅い絶頂だったけれど、下腹部にどっと熱が集まるのが分かる。
震えて力の入らない脚を割り広げるようにして、康隆が体を入れた。
(見られてるっ)
一瞬で快感が醒めて、酷い羞恥が水希を襲う。
ぬれそぼる秘所なんて自分でも見たことがない。
なのにあっさり、初めて出会った男性に曝している自分が酷く淫らで恥ずかしい存在としか思えない。
「いやっ……私……みないでっ」
自分でも何を言っているのか分からないまま、水希はしゃくり上げる。勝手に溢れてくる涙を両手で拭っていると、康隆が身体を倒してそっと水希の手を握った。
「すまない。性急すぎた」
「っ……」
止めてもらうよう頼もうとしたその時、水希はふと下半身に違和感を覚えて視線を向ける。そこにはスラックス越しでも分かるほどに自己主張する康隆の男性があった。
強引ではあったけれど、康隆の誘いに乗ったのは自分だ。
無防備に酔い潰れ、こうなると予想しながらベッドに運ばれるまではっきりとした拒絶もしていない。
「……あの、私……康隆さんが嫌いとか……そう言うんじゃないんです」
途切れ途切れに紡ぐ言葉を、康隆は辛抱強く聞いてくれる。
「初めてなのに、あなたを受け入れようとしている自分が、とてもやらしいっていうか……恥ずかしい人間だなって、思ってしまって」
「水希さんは、真面目なんですね」
茶化しているのではないと、声音で分かる。
「水希さんからしたら、私はとても不真面目な人間だ。あわよくばこうして、あなたみたいな無垢なひとの純潔を奪おうとしている」
再び手を取り指先に口づける康隆を見つめると、困ったように眉根を寄せた。
「水希さん。あなたが私の容姿でもなんでもいい、少しでも好ましいと思ってくれるなら……今は欲望に身を委ねてくれませんか? 肌を重ねて快楽を貪ることは、決して悪い事じゃない。罪悪感があるなら、全て私のせいにしてくれてかまわないから」
誘う言葉は、甘い毒のように水希の耳に入り込む。
「でも私……上手くできない、と……思います」
「水希さんは感じてくれるだけでいいんですよ。初めてのあなたに……いや、初めてでなくても、水希さんに何かしてもらおうだなんて思っていません」
話している間も康隆の手が水希の肌をそっと撫で続ける。愛撫とは違うマッサージのような手つきは心地よくて、自然と力が抜けていく。
「気持ちいいことだけすると約束します」
「……怖いのは、いや」
「ええ、分かってます。怖いことも、痛いこともしません」
こくり、と頷くと唇を奪われた。
先程とは違う、啄むような軽いキスに水希は目蓋を閉じる。
「……っあ……ああっ」
不意打ちで指が会陰をなぞり、蜜壺の入り口に触れる。
そこはもう自分が思っていた以上にぐっしょりと濡れそぼっていて、康隆の男性らしい太い指を難なく飲み込んだ。
「きゃ、んっ」
内部の浅い場所を擦りながら同時にクリトリスを愛撫され、水希は身悶えることしかできない。
「だめ、だめなのっ……あっ、ぁ……」
「本当に感じやすいね。指でこれなら、舐めたらどうなるかな」
「え?」
康隆が身体を離し水希の視界から消えた。
ベッドに仰向けになったまま呼吸を整えていると、いきなり太股を掴まれる。
そのまま大きく広げられ、水希は何が起こったのか分からず脚をばたつかせて拘束から逃げようと試みた。
「なに? ……あッ」
指とは全く違うねっとりとしたモノが、膣の周囲を愛撫する。秘所を康隆が舐めているのだと理解した瞬間、咄嗟に彼の髪を掴んで引き離そうとする。
「汚いです! やめ……ああっ」
「綺麗ですよ。こんな可愛らしいクリトリスにキスをしないなんて、勿体ない」
ちゅっと音を立ててクリトリスを吸い上げられ、水希は身を捩った。
逃げようとしているはずなのに、何故か両手は康隆の頭を恥ずかしい場所へ押し付けるように動いてしまう。
「や……私、こんな……っ……あぅ……」
「大丈夫だから、気持ちよくなってください」
「まって、ほんとに……あんっ……あ、そこっ」
クリトリスを舌で転がしながら、康隆が指を膣に埋める。そして何かを探すように、ゆっくりと襞を擦る。
「ひ、っ……ぁ」