「二年前のあの夜に、とっくにおまえに囚われている」
恋人に二股をかけられていたうえにこっぴどく振られてしまったCAの菜月は、失恋のショックでヤケ酒し、酔った勢いで行きずりの男と一夜を共にする。二年後、ファーストクラスを担当する菜月の前に、あの夜身も心も慰めてくれた久遠臣海がVIP客として現れる。「今すぐ俺の女になればいい」俺様な臣海はあれから菜月を探していたようで…!?
「ああ、これだ……」
「えっ?」
「俺がずっと追い求めていた菜月の肌だ。柔らかくて滑らかで、しっとりと手のひらに吸い付いてくる」
万感の想いを込めるかのように、感慨深げに呟いた。同時に膨らみをやわやわと揉みしだき、先端の突起をピンと弾く。
「あんっ!」
「ここを弄られるのが好きなのか? そういえば、あの日もすぐに勃たせていたな」
「もう、こんなときに冗談とか……」
二年以上も前のことなど覚えているはずがない。そう思って薄目を開けると、やけに真剣な表情が見つめている。
「……まさか、本当に覚えてるの?」
私の問いかけに臣海さんが不満げに目を眇める。
「全部覚えてるよ、俺はな。……まぁいい、菜月が答えなくても身体が教えてくれる」
意地悪く口角を上げたかと思うと乳首をキュッと摘ままれた。
「ああっ!」
彼が身体をずらして私の胸に顔を埋める。片方の胸を弄びながら、もう一方の膨らみに舌を這わせてきた。舌先で乳輪を円くなぞり、勃ち上がった突起を飴玉みたいにコロコロと転がす。
「あっ、ん……っ」
「ほら、感度がいい」
カリッと甘噛みされた途端、子宮がキュンと収縮した。太ももを擦り合わせてモジモジしていたら、目ざとく見つけた臣海さんがふっと息を漏らして口の端を上げる。素早く片手を下半身に伸ばしたかと思うと、器用に花弁をひらいて中心を撫で上げた。
「ふっ、胸だけでこんなに濡らしている」
愛液で濡れた指先を意地悪く見せつけてくる。
「違うよ……この部屋に入ったときからずっと期待してたの」
「菜月……」
臣海さんにはもう、みっともないところを散々見せている。ここまで来ておいて今さら格好をつけたり誤魔化したりはしたくない。
「いっぱい愛してね。ちゃんと覚えておきたいから」
私が真っすぐ見つめると、彼がクシャッと顔を歪めた。泣き笑いの顔でうなずくと、「菜月、身も心も丸ごと全部、俺にくれ」と囁いた。
──そんなのもう、とっくに……。
「私はもう臣海さんのものだよ。だから臣海さんも丸ごと私にちょうだい」
「こっちこそ……二年前のあの夜に、とっくにおまえに囚われている」
言うが早いか胸に再び口づけてきた。同時に右手の人差し指が蜜口に挿入ってくる。勢いよく抽送を開始すると、すでに濡れそぼっていたソコがクチュクチュと水音を立てだした。
「んっ、あ……っ」
臣海さんの指が内壁を往復する。合間に浅いところを撫でられて、私の腰が大きく跳ねた。今度はソコを執拗に指の腹で擦られる。ビリビリと電気が流れているみたいだ。強い刺激に耐えきれず、私は歓喜の声をあげてしまう。
「ああっ、凄い! 気持ちいい……っ」
恥ずかしいけど気持ちいい。私は自ら股をひらいて彼の愛撫を受け止める。
「エロいな。菜月、最高だ」
指が二本に増やされて、一気に抽送が速められた。どんどん隘路が熱くなる。彼が指をクイと曲げて敏感な部分を押し上げた途端、パンと刺激が弾け飛ぶ。
「あっ、ああーーっ、イク……っ!」
蜜口がキュッと窄まり脱力したところで臣海さんが指を引き抜いた。彼はすぐさま上体を起こし、私の脚を膝裏から折り畳む。左右に大きくひらいて中心に口づけてきた。
「あっ、駄目っ!」
達したばかりのソコは敏感だ。唇が触れただけでも身をよじるような強い刺激だというのに、臣海さんは舌を蜜口に捩じ込んでくる。舌先で愛液を掻き出すようにしてからジュッと勢いよく蜜を啜った。
「んあっ、やあっ!」
脚を閉じようとするも彼の頭に阻まれ敵わない。そもそも力強い両手で固定されている。限界ギリギリまで大きく股をひらかれたまま、私は首を左右に振って悶絶した。快楽と苦悶に嬌声をあげ続けていたら、彼がパタッと動きを止める。
──えっ?
こちらを見上げる臣海さんと目が合った。何事かと思った次の瞬間、彼がニヤリと微笑んで今度は蕾に吸い付いてきた。チューッと高い音がして、小さな粒が熱くなる。
「きゃっ、ああっ!」
臣海さんの唇が敏感な蕾を挟み込む。チュパチュパと吸われたかと思うと肉厚な舌で転がされる。同時に蜜口に指が挿入ってきた。口で蕾をいたぶりながら、指で隘路を擦られる。中と外から同時に与えられる刺激で再び波が起こりだす。甘い痺れが強くなり、あっという間に大波になった。もう自分でも止めることはできない。
「ああっ、またっ、また、イっちゃう!」
「イけよ」
再び蕾を吸い上げながら、Gスポットを指で押し上げられた。背中を刺激が駆け抜けて、目の前で光が瞬いた。
「やぁーーっ、ああっ!」
私は大きく身体をのけぞらせて、二度目の絶頂を迎えたのだった。
「菜月、大丈夫か?」
ぐったりとした私の顔を臣海さんが覗き込んできた。
「嬉しすぎて調子に乗った。苦しかったか?」
私の前髪を掻き分けながら、心配そうに声をかけてくれる。
たしかに苦しかったけれど、あれは嬉しい苦しみだった。コントロールできない快感が弾けた末の喜びの瞬間だ。
「ん、大丈夫」
「俺は菜月と繋がりたいんだが……大丈夫だろうか」
いつになく弱気な臣海さんに、思わず笑いが漏れてしまう。
「ふふっ、わざわざうかがいを立てるなんて臣海さんらしくない。それに私も最後までシたい。ちゃんと臣海さんと繋がりたいの」
「やめろ、それ以上言ったら俺は我を忘れてけだものになってしまう」
この期に及んで我慢しようとしてくれる彼に、愛おしさがどんどん湧いてくる。
「いいよ、けだものになっても。好きにして」
「……くそっ、煽ったのはそっちだからな!」
そう言いつつも、二年ぶりの行為はどこまでも甘く優しく丁寧で。避妊具を着けた先端を蜜口に当てがうと、彼はとても慎重にナカに入ってきた。太くて長い屹立が隘路をぴっちり占めている。お腹の中がちょっと苦しい。思わず顔を顰めると、彼が不安げに口をひらく。
「菜月……っ、痛くないか? 大丈夫か?」
「ん……だいじょ……ぶ」
「動くぞ。キツかったら言ってくれ」
「いいよ、臣海さんが気持ちいいように……動いて」
「馬鹿か、一緒に、気持ちよくなるに……決まってるだろ……っ」
臣海さんは私の様子をうかがうようにゆっくり腰を動かし始めた。二年前にたった一度だけの行為を彼はどれだけ覚えているのだろう。私のすべてを知り尽くしているかのように、的確に快いところを攻めてくる。敏感な部分を擦られるたびに、鼻にかかった声が出てしまう。
「あんっ、ああっ」
「菜月、ちゃんと感じているか?」
「見ればわかる、でしょ……。恥ずかしいから聞かないで」
「本当だ、腰が揺れている。もう少し激しくするぞ」
「あっ、ああっ!」
彼の絶妙な腰使いが媚薬みたいに思考を蕩けさせる。けれど最奥を貫かれたその瞬間、私はこの身体を知っていると明確に思い出す。
──そうだ、私はあの夜に、臣海さんから癒やしと温もりを与えられたんだ。
どういう運命の巡り合わせか、その彼と、今また同じ場所で結ばれた。喜びと感動が胸に溢れかえり、身体が敏感に快感を拾う。丹念な愛撫ですでにトロトロになっていた私は、あっという間に新たな快感の波に呑み込まれていく。
――ああ、あの日抱かれたのがこの人でよかったな。
そんなふうにぼんやりと考えたのも束の間。すぐに激しく打ちつけられて高みに導かれ……。
「あっ、イクっ……イっちゃう!」
「菜月っ、愛している」
低い呻きと共に抱きしめられたその瞬間、私の意識は光の中に溶けていった。