「君が全て思い出して俺を嫌いになっても、たとえ憎んでも──
俺は君を死ぬまで愛してる」
数年前に交通事故に遭い、大けがを負うだけでなく、それまでのすべての記憶を失ってしまった萌希。過酷なリハビリを経て、親戚の経営するカフェで働き始めるが、常連客の鷹峰が何かと気にかけ世話を焼いてくる。やがて、店の外でも交流を持つようになり、萌希は誠実な人柄の鷹峰に惹かれていく。実は彼は萌希の失った記憶に関わりがあるようで…!?
「大丈夫。萌希に触れたことがあるのは、俺だけです」
確信めいた声──だった。
「でも、わからない……」
呟いた口が、深いキスで塞がれた。再び舌で口の中をぐちゃぐちゃにかき回されて、頭の芯もジンと痺れる。さっきより激しいキスにすっかり身体から力を抜いた私に、ほんの少しだけ欲を滲ませた声で彼は言った。
「お願いします。俺のことだけ、考えて」
「昊司さん……んっ」
自分から漏れた、上擦った高い声に戸惑う。
昊司さんが私の胸に触れていた。ぎゅっと彼のTシャツの袖を握る。昊司さんはじっと私を見たあと、こめかみにキスをして──そうして、するりとブラジャーを脱がせてしまう。ホックが外れる解放感に息を吐くのと、羞恥で眉を寄せてしまうのは同時だった。
昊司さんは私の眉を優しく撫でて、それから頬にキスを落とし、直接私の乳房に触れる。
「怖くないですか?」
「は、はい……」
羞恥で叫びだしそうになるのをこらえるため、口元に手を当てて頷く。昊司さんの男性らしい喉仏が、わずかに上下した。きゅっ、と胸の先端を指先で甘く摘ままれる。
「ああっ」
我慢したかったのに、また声が漏れてしまう。私を見下ろす昊司さんの視線に、徐々にはっきりと欲望が籠もり出す。恥ずかしくて、嬉しい。昊司さんがじっと私の様子を窺いながら、ゆっくりと先端を口に含む。生々しい体温と、舌の独特の柔らかさ。ざらざらした別の生き物みたいなそれが、先端を弾くように弄る。
「は、ぁあっ、あんっ」
ビクビクと腰が震えた。舐められているのは胸なのに、下腹部に切ない熱が溜まる。お腹の奥が、じゅくじゅくに熟れていくかのような感覚──……どうにか逃したくて、私は太ももを擦り合わせた。
その太ももを、昊司さんの大きな手が這った。くすぐったさと、官能の、ちょうどあわい。
「ぁ、んっ」
私は昊司さんの短い髪に触れ、そのままそっと頭を抱きしめた。なんだかとても、愛おしかった。どこか母性本能に似たこの感情は、果たしてなんという名前なのだろう。
昊司さんがちゅぽ、っとわざとのように音を出し胸の先端から口を離す。私をじっと見つめながら、太ももの内側を撫で上げる。同時に胸の頂を、舌を固くしてつんつんとつついてきた。
「あ、や、だめ」
気持ちよくて腰が疼く。昊司さんは嬉しげにべろりと大きな舌で乳房ごと先端を舐めた。ざらざらした、生ぬるい感触──何度もそうしながら、足の付け根に指を這わせてくる。
くちゅ、と明らかな水音がした。恥ずかしくて顔がこれでもかと熱い。思わず顔を覆う私に、昊司さんはいつもよりワントーン低い声で言う。
「顔、見せてください」
「や、です。恥ずかしい……」
「お願いします」
昊司さんは胸の先端をちゅっ、と吸ったあと、甘噛みまでしながら言葉を続けた。
「俺は、君が生きてここにいるんだと実感したいんです」
「生き、て……?」
「そう」
彼は私の乳房に頬を寄せる。
目をやれば、色づいた先端は硬く芯を持ち、彼の唾液でぬらぬらと光っている。すごく淫らだと思うのに、胸に頬を寄せ目を閉じた彼は、ひどく心細そうに見えた。
私は顔から手を離し、そっと彼の頭を撫でる。昊司さんが目を開く。私は小さく微笑んだ。
「聞こえますか? 心臓の音」
「……ん」
彼は頷き、左の乳房の内側に、何度もキスを落とした。私の心臓が動いていることが、嬉しくて仕方ないみたいな仕草だった。
ぴりっと痛みがして、目をやればほのかに鬱血している。強く吸いつかれたらしい。
「生きていてくれて、ありがとう」
掠れた声だった。本心からそう言っているのだと、はっきりとわかる。
彼は、思わず息を詰めた私の脚の付け根にあった指を動かした。ぐちゅ、とさっきよりよほど淫らな音を立て、クロッチをずらされた。そうして、指で直接肉芽を摘ままれる。
「あ、だめ、それ、ゃあ、っ」
触れられたところに、神経が全部集まってしまったみたい。私は目を見開き、鋭敏に淫蕩に感じてしまう自分に怯える。なにこれ、こんなの、だめ。
昊司さんは指で挟んで摘まんでみたり、ぐりぐりと指の腹で潰したり、爪で微かに引っかいたり、と忙しない。なのに視線は私の顔に固定されていた。私の表情を、ひとつも取りこぼしてなるものかと、そんな双眸──。
「あ、やあっ、ふ、ぁっ」
触られるたびに、入り口からとろとろと蜜のように水分が滲み出る。昊司さんはそれを指ですくい、肉芽に擦り付けるように動かす。にちゅにちゅと、聞くに堪えない淫らな音がする。
「ふ、ぁあっ、んっ」
媚びるような、上擦った甘い啼き声が恥ずかしくてたまらない。そうされていると、お腹の奥に溜まった切なさが、さらに熱を帯びる。
「こ、昊司さ……ぁ、っ」
「ん」
優しくて穏やかな声なのに、彼の指は肉芽を苛めるのを止めてくれない。むずむずと快楽が膨らんでいく。私はぎゅっと目を閉じて、それが水風船みたいに弾けるのを感じた。頭の中に電流が走ったみたいだった。
「ぁ、あああ……っ」
自分のナカが、ひどくうねっているのがわかる。はあ、はあ、と肩で息をした。痺れてしまったような感覚に言葉が出ない。
「可愛い……」
シーツに身体を沈め、ただぽかんと宙を見つめる私に昊司さんは言って、何度もキスを落としてきた。こめかみや、汗ばんだ傷のある額や、頬や、頭に。そうして肩の傷跡をそっと撫で、そこにも唇を落とされる。されるがままになっていると、するりと濡れそぼった下着を脱がされる。昊司さんは私の腰骨あたりを撫で、そこにもキスをして、ついでのように甘く噛んだ。
「ん、あっ」
ピクッと反応してしまう私を満足そうに見下ろしたあと、昊司さんは目を細める。安心したような、そんな顔をしていた。
どうしてそんな表情をするのだろう。
頭のどこかでそう考える私を見下ろし、昊司さんはするりと服を脱いだ。きっちりと鍛えられた身体で──首筋、肩、胸、腹、と視線を落とし、そしてそれに視線が留まって目を丸くしてしまう。硬くなり、天を向いた太い屹立の先端からは、とろとろと露が溢れている。
「長いこと禁欲していたので、すぐ出てしまうかもしれません」
「え、あっ、えっと」
出る……というのは。疑問に思ったあと、それがなんなのかにようやく思い至る。私の知識は薄いのだった。それを察したのか、昊司さんは優しく私の耳を撫でた。
「……すみません、こういった行為についてはどの程度の知識が?」
「あの、映画で観るくらいです」
裸でねっとりと密着する男女。小説やなんやで、挿入行為をすることも知っている。結果、妊娠することがあるのも。そう説明すると、昊司さんは少し考えたあと、私の頬を撫でた。
「じゃあ、俺に任せてもらっていいですか」
「はい」
即答すると、昊司さんは目を瞬いた。私は「信頼していますから」と続ける。
「信頼……」
「はい。信じています」
昊司さんはぎゅっと目を瞑り、左手で私を抱き寄せた。そうして、右手の指を私の入り口に這わせる。
「痛かったら、言ってください」
そう言って、彼は私のナカに指を進める。はあ、と息を吐き出した。自分のナカが、悦んで蠢くのがわかった。きゅうっ、と粘膜が彼の指に吸いついていくのも──。
昊司さんは私を見下ろし、ゆっくりと指を動かしだす。私は──私は、半泣きになって、あさましく勝手に揺らめく腰に困惑していた。
気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい。
信じられないくらい、気持ちいい。
ぬちゅぬちゅと滑りを帯びた音をまとわせ、彼の指は驚くほど正確に私の快楽を引きずり出していく。
「あ、ああっ、あっ」
自然と脚が開く。彼の指が、浅い恥骨の裏側──ちょうど肉芽のあるあたり、をぐうっと押し上げた。
「っあ、昊……──はぁ、ああっ」
うまく呼べなかった名前は、代わりに喘ぎ声になってこぼれていく。
ちゅくちゅくと彼の指がナカの肉襞を弄る。お腹の奥で果実がどんどん熟れていくように、濡れた熱が高まっていく。親指で彼は私の肉芽をぐりっと潰した。
「あ、あ……──っ……」
ばちん、と熟れた身体の奥がぐちゅっと潰れた……ような、気がした。ぎゅうっと彼の指を締めつける。浅い呼吸には高い声が混じっていた。
ヒクヒクと痙攣しているナカに、ぐちゅんと音を立てて指が増やされる。攪拌するように指を動かしながら、昊司さんは優しい声で訊ねてくる。
「痛いとか、キツイとか、ないですか」
「は、ぁ……っ」
なんとかこくこくと頷いた。むしろ気持ちよすぎて辛い。いつの間にか、ぐちゅぐちゅ、という音が、空気を混ぜ込んだような、ちゅこちゅこという音に変わっている。
浅く呼吸をする私の足の間に、すっと昊司さんが顔を埋める。なに、と思ったときにはもう、彼は私の肉芽に吸いついていた。
「あ──……っ」
悲鳴のようで、嬌声のようで。
「だめ、だめ、汚い……です……っ」
半泣きの声は濡れていた。昊司さんは全く構うそぶりもなく、肉芽を彼の口の中でしゃぶってくる。喘いでいるのだか、悦楽に泣いているのだか、もう自分にも区別がつかない。
その間にも、ナカを弄る指は絶え間ない──どころか、三本目が増やされる。
「昊司さん、昊司さぁ……んっ」
泣きながら彼を呼ぶ私の肉芽を、彼は強く吸い上げた。
頭の中が、真っ白になる。自分のナカから、べちょべちょと蕩けた水が溢れ出る。
もうそれが、一体なんなのか……考える余裕もない。ただもう、身体に力は入らない。
こんなに簡単に、ぐずぐずにされてしまうだなんて。
ナカで、外で、絶え間なく与えられる快楽。
私はただ喘ぎ、それをなんとか逃そうと入らない力で精一杯にシーツを握る。腰が上がってしまうのを、必死に耐えた。
「ふ、ふぅっ、はぁ、ああっ」
信じられないほど、簡単に何度も高みに連れて行かれる。これが絶頂なのだと、教え込まれる。
彼の指は魔法みたいに、私の身体を知り尽くしているみたいに、私のナカで蠢いた。
「あ、あっ……!」
もう、舌と指でイかされるのは何度目だろうか。ようやく彼が口を離し、指を抜いたのは喘ぎ疲れて声が掠れてしまってからだった。