侯爵家の令嬢・沙保子は、女と侮られないよう男装をして家業を仕切っていた。しかし資金繰りに詰まり、成り上がり男爵家の御曹司・明臣に、多額の結納金を条件として嫁ぐことになる。侯爵家の血を引く後継者を産むことだけを望まれていたはずだったが、明臣は純粋な沙保子を蕩けるほど可愛がり、無垢な体を熱く激しい熱情で包み込んで――!?
挙式の日は、朝から忙しかった。法的な手続きをし、式を挙げ、披露目をする。来客の相手も欠かせない。洋式の礼装に身を包んだ明臣は、白いドレスを着た沙保子の顔を、まだまともに見てもいない。
帝都の中心にあるホテルを借り上げた披露宴は、金に糸目をつけない豪華さで人々を圧倒した。
新郎新婦双方の親族席は、対照的だった。
指折りの名門華族との縁組に誇らしげな新郎一族と、屈辱に下を向いている新婦一族。これは歩み寄りは無理そうだと、明臣は早々に匙さじを投げた。
雛壇に座って笑顔を保ち、招待客達との懇談を一通り終わらせた頃には、場は華やかな夜会のようになっていた。もう新郎新婦がいなくても問題ないだろうという機を計って、明臣は沙保子の手を取って会場を出た。
結婚式の衣装のまま、自動車に乗り込んで東院邸に帰る。
使用人達が出迎える中、明臣は沙保子を寝室に押し込んだ。
暗い室内を、窓から射し込む月の光が照らしている。寝室の中心には、寝台がある。
その白い敷布の上に、沙保子を横たえた。いくら深窓の令嬢でも、嫁いできた以上、閨事の知識くらいはあると思いたい。
純白のドレスは、沙保子にぴったりに造られている。首元までレースで覆われた肢体は、ひどく儚げに見えた。
きゅっと締め上げている紐を緩め、ドレスをはだけた。繊細な生地の下から、真珠のように白い肌が現れる。女性らしいまろやかなふくらみに指が触れた時、沙保子が息を呑んだ。
ふい、と背けられた横顔を見ると、羞恥に染まった頬と耳朶は、薄らと桜色に上気している。
その様子が、何ともいえない艶を放っている。
沙保子の背に手を廻して紐を解き、ドレスを半ばまで脱がせる。洋装用の下着と、やわらかそうな乳房が露わになった。その先を暴こうとした時、レースが指先に引っかかる。苛ついた明臣は、力任せにドレスを引き裂いた。
「は、るおみ、さま」
驚いたのか、沙保子が背けていた顔を正面に戻す。細い指が、戸惑うように明臣の手に添えられた。
「どうせもう着ない服だ」
使い回すこともない。そう思うと、丁寧に扱っているのが馬鹿馬鹿しくなった。
明臣は沙保子の胸元を開き、そのまま力任せに引き破った。絹を裂く音というのは、実際にやってみたところ、あまり大きくはない。
そのままドレスを脱がせ、白い下着も剥ぎ取る。泣きそうな顔をした沙保子にかまわず、白い素肌を月明かりに晒した。華奢だと思っていた体は、補正の下着なしでも女性らしいまるみを帯びて美しかった。
ふんわりと盛り上がった乳房は先端だけが淡い桜色で、他は抜けるように白い。肌理の細かな、しっとりした肌に手を滑らせると、沙保子の体が大きく震えた。
「沙保子」
初めて呼び捨てにした明臣に、沙保子は小さく瞬きをする。
「成り上がりに体を許すのは嫌か?」
挙式前の丁寧な口調は、礼服と共に脱ぎ捨てた。襯衣と洋袴を纏ったままの明臣と違い、沙保子が着ていた白いドレスは、千々に破られて原形を留めていない。
明臣は、匂い立つようになめらかな肌に指を這わせた。
「わ……たくし、は」
「明臣さまの妻ですから、か。聞き分けのよいことだ」
沙保子の言葉を先取りして、明臣は華奢な肢体を組み伏せた。沙保子が戸惑ったように見上げてくる。
心の奥底まで見通しそうな澄んだ瞳が煩わしくて、明臣は沙保子に口づけた。小さな唇は、やわらかく艶やかだ。
ん、と微かな声を上げた隙に、口づけを深いものに変える。口内の粘膜を舐めると、沙保子は小さく震えて明臣の襯衣にしがみついた。
明臣は、剥き出しになった白い肩に口づけ、痕を残した。沙保子の真っ白な肌は、軽く吸うだけで薄桃色に染まる。
ふんわりと盛り上がった乳房に手を這わせながら、肌に愛撫を施す度、沙保子の押し殺した声が零れた。
「っ、ん……」
つうっと、こめかみを流れる汗に気づいて、明臣は組み伏せていた肢体から少し離れた。真っ白い肌にいくつも散った鬱血痕が痛々しいほど、沙保子の体は嫋やかだった。
沙保子の裸の背に、手を這わせる。びく、と細い体が大きく震えた。形のいい乳房をやわく揉むと、沙保子の顔に動揺が宿る。
「もう少し肉付きがよくてもいいんだが」
我ながら下衆な物言いだと自嘲した明臣だが、沙保子は困ったように目を瞬かせている。今までの彼女なら、明臣の言葉に「申し訳ございません」と謝りそうなものだが。
「あまり肥り肉になりますと、衣類を一から仕立て直しになりますので」
明臣が眉を顰めると、沙保子はおずおずと申し出た。
「明臣さまが、わたくし相手では興が削がれるのでしたら」
「そういうことは言っていない。女の裸体を見れば、大抵の男はその気になれる」
とはいえ、明臣の場合は、好ましい女に限るのだが。そして、秋津沙保子──今は東院沙保子となった妻の容姿に対して、文句はない。
ただ、あまりにも沙保子の視線には羞恥がない。生娘なのは間違いないはずだが。
「沙保子」
「はい」
「俺が触ると、何かあるか」
「……くすぐったい、ような」
「そうか。──これは?」
白い乳房を手で掴み、やんわりと揉んだ。やわらかくも芯があるような感触だが、肌は指に吸いついてくる。
「……っ、わかり、ませ……」
「何も感じないか?」
「……わかりません」
沙保子は泣きそうな顔で答える。その顔が、快楽に染まるのを見たいと思う。
「これから、夫婦になる為の行為をする」
「わたくし達は、もう夫婦なのでは……?」
「法的にはな。実情は、まだ夫婦ではない。──ここに」
薄い和毛の奥、沙保子の秘所を指でなぞった。そこに触れられることは初めてだろう沙保子が、くっと息を殺す。
「俺が挿入る」
「……明臣さまが?」
困惑と疑問を溶かしたような視線が、明臣を捉えた。無垢な様が、官能をそそる。今の沙保子は男装時とは違って女であることを隠していないのに、微かな背徳感があった。男女の営みをよく知らない妻に、閨の教育を施すことになるとは思わなかった。
「君の欠けた部分に、俺の一部が挿入って、それで夫婦になる」
「……よく、わかりません」
「臥所で共寝するだけでは、子は授からない」
そう言って、明臣は沙保子のなだらかな腹部を撫でた。
「この奥に、俺が子種を放って、君の胎がそれを受け止めたら、子ができることもある」
「難しいのですね」
真顔で頷かれ、明臣は脱力したくなった。こちらの「その気」が失せる反応はやめてほしい。
「これから、俺は君の体を探る。常と違う感覚がしたら言いなさい」
「はい」
素直に答えられ、微妙な気持ちで明臣は沙保子の唇を塞いだ。
(──男女の行為をわかっているのか、このお姫さまは)
こんな世間知らずで、よく今まで「職業婦人」でいられたものだと感心すらする。だが、明臣が一瞬躊躇うほど──溺れてしまいそうな不安が過ぎるほど、沙保子の肌は手触りがいい。
しっとりと肌理細かですべらかで、小振りな乳房には適度な張りがある。今を盛りと咲く花のような、匂やかな美しい肌だ。
剥き出しの肩を撫でながら、唇を深く合わせていく。接吻に慣れていない沙保子が、苦しそうに唇を戦慄かせた。そのあわいに、舌を差し込む。
「っ、ん……っ」
歯列を辿り、口内を舐める。熱を帯びた舌でやわらかな頬の内肉を撫で、奥で小さくなっていた沙保子の舌を絡め取った。
明臣のものより小さな舌を掬い、先端でつつく。怯えるように逃げる舌を追いかけ、口内を蹂躙した。
「……っ、ふ……」
目を閉じた沙保子の長い睫毛を見つめながら、口づけの角度を変える。より深くなった接吻に、沙保子が苦しげに喘いだ。
「は……」
密やかな吐息に、ぞくりと体が震える。口づけもろくに知らない沙保子に翻弄されそうで、明臣は一度彼女から離れた。つうっと、細い銀の糸が二人を繋いでいる。
「口づけは、嫌か?」
「いえ。ただ……少し、苦しくて」
落ち着いた声が、どこか戸惑いを含んでいる。その落差が艶になることに、沙保子は気づいていない。
明臣は襯衣の釦を一つ外し、喉元を緩めた。捕食の為に呼吸を整えた後、沙保子の唇をもう一度貪った。
不意に再開された接吻に、沙保子はおずおずと応え始めた。小さな舌が、ちろちろと明臣の舌に触れては逃げる。
それを追い、唇をやわらかく押しつける。重ねては離れ、また重ねて口内を嬲る。その度、沙保子の腕が明臣の襯衣に縋りついた。
何度となく口づけ合いながら、明臣は沙保子の乳房を手のひらで包んで捏ねた。瑞々しい肌がほんのりと紅潮し、色香を放っている。その、紅緋に染まった先端を指先で摘まむと、沙保子の喉が上下した。
「……っ、ん……!」
晒された喉元に唇を這わせ、痕を残す。同時に、熟れた乳首を指で転がしたら、沙保子は大きく喘いだ。
「あ……っ、あ、ん……!」
明臣には心地よい嬌声だったが、沙保子はかあっと頬を染めて両手で口を覆った。その手を掴み、沙保子の喉を舐めた。
「隠すな。聴かせろ」
「で……すが」
「君は、閨事は知らぬのだろう」
実際、隠さなければならないような声ではない。明臣は、沙保子の声を気に入っているし、その声が乱れ喘ぐなら聴いていたいと思う。
「声を抑えては、君はどこが好いのか、俺にわからない」
尤もらしく告げれば、沙保子は素直に頷いた。花街の女達はあられもない声を上げて客を喜ばせようとするが、無意識に声を殺そうとする沙保子は、そこまで乱れないだろう。
──いずれ、快楽に堕ちきった姿を見たいと思わなくもないが。
今は、ただ「夫婦として」当然の行為をしているだけだ。沙保子には、明臣の子を産んでもらわなくてはならないし、その為には性行為が必要だ。
意識を切り替え、再び沙保子の肌を辿った。まるい乳房を包み、指全部を使って揉む。指と指の間で乳首を挟んで擦り、色づいたそれを口に含んだ。
口の中で硬くなった乳首を転がし、舌でつつく。時折、ちゅっと吸い上げれば、沙保子は乱れた呼吸を繰り返している。
「ぁ、ん……っ、ん……!」
声を抑えるなと言った明臣の命に従うように、沙保子は快楽を受け止めて甘く啼く。唇で食んだ乳首をくちゅりと舐めながら、明臣は沙保子の体を撫でた。
ほっそりしているとはいえ、やわらかく女らしい肢体だった。その優美な曲線を辿るように愛撫しながら、閉じている脚を開かせた。
「……っ」
びく、と震えた沙保子が息を呑む。
「明臣、さま」
「ここに挿入ると言っただろう?」
泣きそうな顔をしている沙保子に口づけ、隠すもののない秘部を指で撫でた。微かに濡れていたらしく、指を這わせると蜜が零れてくる。
「っあ、あ……!」
直接的な快感は、沙保子には未知のものだったらしい。震えながらも、明臣の手の動きを咎めることはない。それをいいことに、明臣は濡れ始めた秘花の柔肉を拓いた。
唇を離し、沙保子の体のあちこちに鬱血痕を残しながら、肌の感触を楽しんだ。開かせた脚の付け根に顔を近づけたら、沙保子が悲鳴を上げた。
「そこ、は……!」
「俺が挿入る場所だ。覚えろ、沙保子。ここは、俺を受け入れる為の場所──俺のものだ」
じわりと湧いた独占欲に突き動かされるように、明臣は躊躇なくそこに口づけた。繊細な動きで花片をめくり、露わになった淫芽と蜜口に愛撫を始める。
「っあ、あ……、はる、おみ……さ……!」
ゆるゆると秘花を撫でていた指に蜜を絡ませ、ゆっくりと差し入れる。浅い部分をくすぐり、ぷくりと硬くなった淫芽を甘噛みしたら、沙保子の腰が跳ねた。
蜜に濡れた隘路を拡げる為に指を抽送し、溢れた愛液を啜った。沙保子が泣きそうな声で嬌声を零し、秘花は朝露に濡れた花のように綻んでいく。