新菜は父亡きあと援助してくれた、御曹司で遠縁の英利と契約結婚した。相続の条件で急ぎ誰かと結婚する必要があった彼との生活は期間限定のはずだった。「反応のひとつひとつが可愛くてたまらないな」普段イジワルな彼からは想像できないほど甘く優しく新菜を情熱的に抱いてくる。溺愛されとまどう新菜。どうやら英利には、離婚する気は無いようで!?
こうして身体を触れ合わせていると、胸の内から何か熱いものがふつふつと湧き上がってくる。これは一体なんなのだろう。
何も判らない。でも、自分ではこれを止めることはできなかった。
英利が止めてくれなくては。
彼がやめれば、新菜はこの魔法から逃れるはずだった。そして、元の関係に戻れるはず。
どうかそうしてほしい。そうしなければ、わたし達は……。
彼が唇を離した。うっすらと目を開けると、英利はまっすぐこちらを見つめていた。間近で目が合い、視線を逸らせなくなる。
口を開けたが、何を言っていいか判らない。彼もそうだったのだろう。彼はそのまま口づけをしてきた。
そして、キスしながら、片方の手で新菜の可愛いパジャマのボタンを外し始めた。いくつかボタンが外れると、するりとその中に彼の手が差し込まれてくる。
「ん……っ……」
胸元に直に触れられて、ビクンと身体が揺れた。彼の手がとても熱く感じられる。やはり嫌悪感は湧いてこなかった。
ブラジャーの上から彼の手がすっぽりと乳房を覆う。布越しなのに、直に胸元を触れられたときよりドキッとした。
だって……。
そこは女性として大切な部分だからだ。それを英利に触れられていると思うと、気持ちが高ぶってくる。
彼はブラの上からそこを撫でた。布に擦られて、新菜はおかしな気分になってくる。同時に、擦られた胸の先が敏感になってくるのを感じた。
同時に、甘い疼きが身体の芯から突き上げてくる。
わたし……もうダメ。
さっき以上に、自分が止められない。この甘い疼きをどうにかしないと、いつもの自分には戻れない。
彼がブラの上から乳首の辺りを指で弄っている。布越しなのに、はっきりと感じてしまう。いや、布越しだからこそ、もっと感じたいと思ってしまう。
直接触れられたら……。
ううん。そんなことを考えてはいけない。
しかし、他のことを考えようとしても無理だった。彼の指の動きに意識を奪い取られる。もっともっと触れてほしいと願うばかりだ。
ふと唇が離れる。新菜は大きく胸を上下させて息を吸った。
これで終わり……?
わたしは解放されるの?
だが、新菜は動けなかった。解放されたなら、この目を開けて、すぐにでもベッドを出なければならない。そう思うのに、どうしても動けない。
物足りないのだ。身体中が……頭の中までふわふわと熱に浮かされたようになっていて、元の自分には戻れない。
そもそも、新菜の身体の上には彼がまだいた。
「新菜……」
名を呼ばれて目を開けないわけにはいかない。そっと瞼を上げると、英利の整った顔が視界に入る。
彼の瞳が熱を帯びている。もしかしたら、自分の目も同じようになっているかもしれない。
新菜の頬に彼の手が触れてきた。
「あ……」
頬を撫で、唇に触れてくる。そして、その手は顎に触れ、首筋から胸元へと移動していく。それにつれて、新菜の身体はゾクゾクしてきた。
寒いわけでもなく、それどころかとても熱いのにゾクゾクしてくる。
何……これ?
訳も判らずじっとしていると、今度はパジャマのボタンをすべて外され、全開にされる。今更かもしれないが、実用的なブラが彼の目に晒されて顔が火照った。
もちろん、気にするべきなのはブラではなく、上半身を晒していることなのだが、そのことは気にならなかった。というより、見られて恥ずかしいのに、おかしなことに喜びも感じている。それは彼の眼差しが熱っぽいからかもしれない。
こんな視線を向けられるなんて……。
自分が誰にでもこんな反応をするわけではないことは判っている。相手が英利だからだ。
わたしは彼のことを……?
好きか嫌いかと言われれば、好きのほうだろう。でも、その感情が恋人に対するようなものなのかもどうかは判らない。
ただ、彼に見つめられるだけで、身体がどうしようもなく高ぶっているのは確かだ。
「新菜……」
彼にもう一度名を呼ばれると、新菜は身体を少し震わせた。そして、甘い吐息を洩らす。
「ああ、ごめん……」
彼は呟くようにそう言うと、新菜のパジャマのズボンに手をかけた。
するするとズボンを脱がされていくのに、新菜は抵抗をまったくしなかった。彼にされるままになっていたら、足首からズボンを引き抜かれてしまう。
こうして一枚ずつ脱がされていったら、わたしは……。
行き着く先は判っている。なのに、どうしても抵抗できない。もしかしたら、彼のほうもどうしようもなくなっているのかもしれない。止めようと思っても止められない。そういう状態なのかもしれなかった。
彼は新菜の太腿を撫でていく。それから、ふくらはぎにキスをしてくる。
身体が震える。
もう……何をしているの?
だって、脚にキスするなんて信じられない。こんなことを続けられたら、わたしはどうなってしまうのだろう。
パニックを起こしそうになっていたが、彼が身体を起こしたのでほっとした。けれども、安堵するのは早すぎたとすぐに判る。
新菜は彼の腕に背中を支えられ、上体を起こされたかと思うと、パジャマの上衣をするりと脱がされたからだ。今の新菜は下着しか身に着けていない。しかも、彼に背中を支えられ、もたれかかっている状態だ。
「あ……あの……」
なんと言ったらいいのか判らない。彼は一体わたしをどうする気なのか。
問いかけたいが、答えを聞くのが怖い。それに、聞いたとしても、新菜は彼に抗えそうになかった。
今こうして下着姿を見られているかと思うと、とにかく恥ずかしくて、新菜はギュッと目をきつく瞑ることしかできなかった。
彼の手が新菜の肩に触れてきた。そこから腕を撫でられ、ゾクッとする。目を閉じている分、触覚が敏感になっているような気がする。少しの刺激で感じてしまうのだ。だからといって、今、目を開ける気にはならなかった。
次に彼は何をしてくるのだろう。それを恐れているのか、もしくは何かを期待しているのか、自分でも判らない。ただ、新菜は彼に身を任せるしかなかった。
だって、自分では抵抗できないんだから。
彼がここでやめてくれれば、自分は解放される。だけど、自分からやめてほしいとは、もう言えない。
ああ、わたしはどっちを望んでいるの?
やめてほしいのか……。それとも、本当は……続けてほしいのか。
新菜は呼吸が苦しくなり、大きく息を吸った。すると、上下した胸に彼の手が触れてきた。正確には、ブラの上から乳房に触れている。乳首の辺りを指を押しつけるように撫でられて、新菜はまた甘い疼きを感じた。
乳首を刺激されているのに、何故だか身体の芯が熱くなってくる。
どうしよう……。
ブラが邪魔だなんて思ってしまう。直接触れられたら、一体どんな心地がするのか。知りたくてたまらない。
彼の手がブラの上部から中へと入り込んできた。
直接、乳房を触れられている。それだけではない。すっかり敏感になっている乳首を指で弄られていた。
「ぁ……っ……」
それは小さな声だったけど、新菜が思わず洩らしてしまった声だった。
だって、我慢できなかった。そこを弄られていると、身体がビクンと大きく揺れて、熱いものが身体中に広がっていく感じがする。
「んっ……んん」
声なんか出したくない。そんな小さな刺激に反応していることを、彼には知られたくなかった。けれども、嬌声は出るし、身体が勝手に揺れてしまう。新菜が感じていることが、彼に判らないはずがなかった。
恥ずかしくてたまらないのに、自分の反応が止められないなんて……。
だからといって、刺激が今なくなったとしたら困る。こんなにも身体が疼いているのに、こんな中途半端で放り出されたら、おかしくなってしまいそうだ。
ああ、もっと触れてほしい。もっと刺激してほしい。
そう思うこと自体が恥ずかしいのに、それさえも止められなかった。
彼の手が背中のほうに回ったかと思うと、器用にブラのホックが外された。思わず目を開けたら、ブラが胸から外されているところが見えた。
頬が熱い。胸のふくらみだけでなく、ピンク色の乳首が彼に見られていた。
「や……やだ……」
新菜は手でそこを隠そうとしたが、彼の手に軽く跳ねのけられる。
「あ……」
彼の掌が改めて乳房を覆った。掌の温かさが直接肌に伝わっていく。彼はまるでそこが自分の所有物であるかのように触っていて、新菜の頭は混乱に至った。
わたし達って……そういう関係だった?
ううん。戸籍上は夫婦でも、こんなことはしないはずだった。恋人だったことは一度もないし、そんな甘い関係では決してなかった。
でも……何故だか新菜も今は彼に触れられていても違和感がなかった。
これが当たり前みたいな感じがして、不思議でたまらない。
彼はゆっくりと乳房を覆った手を動かす。彼の掌に乳首が当たり、再び快感が押し寄せてくる。たかが乳首なのに、どうしてこれほどまでに敏感になっているのか、自分でもさっぱり判らなかった。
でも、事実は曲げられなくて……。
新菜は熱い吐息を洩らす。同時に、身体をくねらせた。脚の間も熱くなり、思わず両方の太腿を擦り合わせてしまう。
「……まだだよ」
「だ、だって……」
我慢できない。胸だけではなく、他のところも触れてほしくて仕方がなくなってくる。
「まだ堪能したいところがあるからね」
彼はそう囁くと、新菜の胸に顔を近づけてきた。
「やぁっ……ぁぁん……」
乳首が舌で舐められている。新菜は驚きのあまり、身体を強張らせた。だが、すぐに快感の渦に巻き込まれていく。
わたし……もうどうしていいか判らない。
ただ彼の愛撫に翻弄されてしまう。
身体が自分のものでなくなったみたいだ。感覚はあるけれど、もうまったくコントロールできない。いや、コントロールしているのは英利のほうだ。
完全に彼に支配されている……。
舌で乳首を転がすように刺激され、身体がビクビクと何度も小刻みに揺れていた。新菜の頭は考えることを放棄していて、快感のみを追っている。
やがて彼は新菜の身体をシーツの上に横たえた。そうして、覆いかぶさるようにして、今度はまだ触れていないほうの乳首にキスをしてくる。
同時に、もう片方の乳首は指の腹で撫でられて……。
片方だけでも充分な刺激だったのに、両方の快感に晒されて、新菜は気がつけば喘ぎ声を出していた。
やだ。わたし、こんな恥ずかしい声を出している……。
しかし、止められない。唇を閉じようとしても、また開いては甘い声を出してしまう。
「やぁ……はぁ……あぁん……っ」
胸の鼓動が速い。息が苦しくなりそうだ。いつまで、こんなふうに快感が続くのだろう。身体は熱くてたまらないのに、終わりが見えなくてどうしようもなかった。
彼は唇をずらした。お腹にキスをされたかと思うと、彼の手は新菜の脇腹をさっと撫でていき、ショーツに触れてきた。
ドキッとして、身体が大きく揺れる。
彼の指が両脚の間に触れてきた。
「あ……んっ……」
ショーツの底を指が軽く往復していく。
彼はふっと笑った。
「ココ……湿っているよ」
「そんな……こと……」
違うと否定したかった。けれども、それは嘘になる。湿っているのが自分でも判るくらいだ。
「新菜がこんなに感じるなんて……思わなかったな」
彼が意地悪なことを囁く。恥ずかしさに頬が熱くなるが、反論できない。
「だって……英利くんが……」
か細い声でなんとかそう言ったが、すかさず彼の言葉に遮られる。
「僕のせいなのかな? ココがこんなにヌルヌルになっているのは?」
彼の指がまた往復する。その刺激に、腰が揺れた。
「あんっ……やっ……」
「可愛い声だね。直接触ったら……どうなると思う?」
「ど、どうなるっ……わ、判ら……ない……」
「判らないんだ? 教えてあげようか?」
「そ、そんな……」
「でも、本当は触れてほしいんだろう?」
彼の声は誘惑しているみたいだった。新菜は思わず頷いてしまうところだった。
何度もショーツの上から優しく刺激されている。優しすぎるくらいの軽い刺激で、本当のことを言うと物足りなかった。
もっと触ってほしい。もっと撫でてほしい。
そう。直接触れてくれたら……どんなに気持ちがいいだろうか。
「ねえ、新菜。自分の口で言ってくれないかな? 触ってくださいって」
信じられない。新菜の気持ちが判っているのに、なんてことを言わせようとしているのだろう。
新菜は唇を引き結んで、イヤイヤをするように首を横に振った。けれども、身体は別のことを訴えるように震えている。
「このままでいい? もうやめる?」
実際、彼はショーツから指を離した。
「やぁっ……ぁん……んんっ」
「それなら言ってみて」
どうしても彼はそう言わせたいのだ。新菜には他の選択肢がなかった。
「さ……さわっ……てくだ……さい」