実家の神社の手伝いをしている凌は、友人の結婚式で知り合った新郎の腹心の部下である秘書、仲井戸と意外な場所で再会し付き合うことに。「できることなら今すぐ、あなたをさらいに行きたい」彼は普段はクールな仕事人間だが凌に対しては熱く迫ってくる。そのギャップにときめきつつ、とろ甘に溺愛される凌。しかし、彼につきまとう女性の影があって!?
この人が欲しい。
一度彼の唇が離れ、至近距離で見つめ合う。その間も彼の手が私から離れることはなく、指の腹でさわさわと頬に触れてくる。それが心地よい。
「好き」
たまらず口から今の気持ちが漏れ出た。言ってから彼を窺うと、すぐにまた唇を塞がれた。今度は私も彼の背中に手を回した。
「……凌さんの唇は、甘い」
味わうように唇を食みながら、仲井戸さんが言う。うっすら目を開けると、一瞬だけ彼と目が合った。でも、すぐに顔を横に傾けて深く口づけられてしまう。
「……っ、ん……」
止む気配のないキスをしながら彼が体重を預けてくる。腰をホールドされているのでソファーに倒れ込むことはないが、体重がのしかかるにつれ、キスが激しくなってきたような気がする。
口腔を蹂躙し、強弱をつけて舌を吸われる。
キスの経験がないわけじゃないけど、こんなに激しいキスは初めてだ。
――は、激し……これ、どうしたらいいの……!?
困惑している間もキスは続く。ドキドキしすぎているのと、キスが激しいのとで呼吸がうまくできない。
背中に回していた手は、気がついたら彼の胸の辺りのシャツをしっかり掴んでいた。
「な……仲井戸、さんっ……」
名前を呼んだらやっと唇が離れていった。その隙に大きく酸素を取り込もうとする。でも、またすぐキスで口を塞がれた。加えて、腰をホールドされたままソファーに仰向けで寝かされた。
私の体をはさみ彼の手がソファーに突き立てられる。真上から見下ろされ、心臓が口から飛び出そうなほどドキドキした。
「凌さん」
「あっ……」
仲井戸さんが私の首筋に顔を埋めた。唇を押しつけ、そこから舌を這わせて鎖骨まで移動し、肌を吸い上げられる。
「……、んっ……!」
ざらついた舌が肌を滑り下りていく。その感触がこそばゆい。
肌を吸い上げながら、彼の手がシャツの裾から素肌を伝い胸の膨らみを包む。
――あ、胸……
気付いたときには、乳房を優しく揉まれていた。はじめはゆっくりと。でも、それは次第に激しくなり、私の口から甘い吐息が漏れ出てしまう。
「はっ……、ん……」
「……凌さんのここ、直接触れてもいい?」
彼がツンと立ち上がった頂を指で触れてくる。私が無言で頷くと、シャツとその下に着ているインナーが胸の上までたくし上げられた。
薄いピンクのブラジャーが彼の眼前に晒されると、顔に熱が集まる。彼はブラのホックは外さずに生地を少しだけずらし、顔を出した薄紅色の蕾を口に含んだ。
「は、あっ……」
服の上から触られるのとは全然刺激が違う。ペロリとなめられるとビクン! と大きく腰が揺れ、下腹部がきゅうっと締まるのがわかる。
彼は片方の頂を口に含みつつ、もう片方も露出させ、それを指で弄ぶ。舌でも手でも同じように先端を転がしつつ、たまに口に含んだまま引っ張ったり、指で軽く潰したり。
与えられ続ける刺激が強すぎて、もうなにも考えられない。
「はあっ……、や、やだ……っ……」
「いや? やめる?」
ポロリと漏れ出た言葉に、仲井戸さんが素早く反応した。聞いていないと思っていたのに、ちゃんと聞いているなんて、ずるい。
「……っ、や、めないで……」
口を手で押さえながらもごもご喋った。すると、胸を弄んでいた仲井戸さんが顔を上げ、私の口を覆っている手を掴んだ。
「なんで覆うの。聞こえないでしょ」
肘で体を支えながら私の手を掴み、キスで口を塞いでくる。深く口づけられ、顔を背けようとしても追っかけてくる。逃げ場なんてない。
――く……苦しい……
唇が離れた途端「ぷはっ」となった。そんな私を見て、仲井戸さんがくっ、と片方の口角を上げた。
「苦しかった? ごめんね」
「あ……謝るくらいなら、もっと手加減して……」
「俺、もうスイッチ入っちゃったから。多分無理」
仲井戸さんが私の髪を手に取る。緩い三つ編みにしていた毛束は、ソファーに倒れ込んでから私がジタバタしたせいもあり、すっかり乱れてぐちゃぐちゃになっていた。
「髪、乱れちゃったな。綺麗だったのに。ごめん」
彼が手に取った三つ編みの束を口元に持っていき、そこに口づけた。自分の髪に男性がキスをする、という絵面を見たことがなかったので、これには意図せず激しくときめいてしまった。
「い……いいんです。結び直せば済むことですから……」
「じゃあ、解いちゃおうか」
仲井戸さんが髪を結わえていたゴムを取る。長い三つ編みがゆるっとほどけて、ソファーに被さった。
「おろしてるのもいい」
長い髪を彼が指で梳いていく。こんなのは、美容室で男性の美容師さんにもやられていることなのに、相手が仲井戸さんだと感覚が全然違う。ときめきが直接子宮にくる。
「なっ……仲井戸さん……」
「ん? どうした?」
「……っ、わ、私も、仲井戸さんに触りたいです……」
願望を口にしたら、仲井戸さんが目を丸くした。
「いいけど、どこに触りたいの?」
「と、りあえず……肌に触れたいです」
「わかった」
ざっくりとしか伝えていないのに、仲井戸さんがいきなり着ていたシャツを脱ぎ捨てた。目の前に現れた半裸の彼に驚きつつ、その逞しい肉体に目が離せない。
吸い寄せられるように彼のお腹に手を当てていた。
「すごい……かっこいい」
ついこの間、彼が道場にいるのは目撃したので、普段から鍛えているのは知っていた。でも、実際にこの体を見ると、鍛錬を怠っていないのがよくわかる。
綺麗に六つに割れたお腹と、鍛えるのが難しいと言われている脇腹にも余計な肉はない。
ペタペタ触っていると、堪えきれないとばかりに仲井戸さんが笑い出す。
「……っ、そんなに楽しい……?」
「え、あ? は、はい、楽しいっていうか、すごいなって」
「じゃあ、俺も凌さんに触りたいんで、これ脱いでもらっていい?」
彼が私のシャツの裾を指でくいっと持ち上げた。確かに今の私の格好は、胸の上でぐちゃっとなっているシャツと、ブラジャーの隙間から胸の頂だけが露出したあられもない状態。改めて見ると酷かった。
「……っ、は、はい」
こんなんだったら全部脱いでしまった方が、まだいいかもしれない。
私は急いでまずシャツとインナーを、それからブラのホックを外してブラジャーを外した。
上半身が何も身に付けていない状態になったぶん、下半身だけ身に付けているのがなんだか変な気がしてならない。
「……下、脱ぎますか……?」
自分から申告したら、仲井戸さんが口に手を当て、フッ、と息を吐いた。
「俺としては大歓迎だけど、いいの?」
「そんなの、聞かないでください」
私は胸元を手で押さえながら立ち上がり、片手でスカートとショーツを脱いで他の服が落ちているところにそっと載せた。胸元を押さえたまま体勢を元に戻すと、仲井戸さんがじっとこちらを見ているのがわかった。
視線だけで犯されているような、熱い眼差しだった。
無言で立ち上がった彼が私に近づく。なにか言われるのかと言葉を待っていたのだが言葉はなく、そのまま抱きしめられた。
「凌」
初めて名前を呼び捨てにされて、きゅんと胸が高鳴った。その状態のまま唇が重ねられ、舌まで食べ尽くされそうな激しいキスをされた。
「ふ……っ、あ……っ」
腰が抜けそうになる私を、彼の腕が支えてくれる。その支える腕が私を持ち上げ、またソファーに寝かされた。
「……っ、あの……ソファー、汚れちゃいますよ……?」
「いい。構わない」
キスをしながら、仲井戸さんは私の股間へと手を伸ばした。すぐに探り当てた蜜口に指を差し込まれ、はっと息を呑んだ。
「っ、あ」
「……凌さん、感じてくれてたんだ?」
彼の指が私の中で蠢くたびにぐじゅぐじゅと水音が増していく。濡れているのは気がついていたけれど、彼に触れられると一気に蜜量が増すのがわかって、恥ずかしくなった。
「や、やだ。言わなくていいから」
「どうして。俺の指で感じてくれる凌さん、可愛いよ」
耳元で囁く仲井戸さんの声に吐息が混じるようになった。どうやら彼も私と同じように興奮しているらしく、そのことが嬉しかった。
私も、自分でも驚くほどこの状況に興奮している。久しぶりのこういった前戯に対してのドキドキとか、これから行われるであろう挿入のことも、想像するだけで子宮が痛いくらいきゅうっと疼く。
しかも、相手が仲井戸さんだなんて。
――こんな……こんな夢みたいなことってある……?
愛撫は、わりと執拗だった。指で奥の方や、気持ちのいいところを擦られるたびに、申し訳なくなるほど蜜が溢れた。多分ホワイトのレザーソファーにも滴り落ちていたのではないだろうか。
「も……いい……いいからっ……」
汚すのが悪くて、いやいやと首を横に振りつつ訴えた。でも、彼は全くやめようとしない。それどころが嫌がる私を見て余計興奮しているのか、手の動きはなお激しく私を攻め続けた。
「ねえ……本当に……ソファー、汚しちゃうからっ……」
「いいって。むしろ凌さんに汚してほしい」
汚してほしいなどという言葉が、仲井戸さんの口から出たことに唖然とした。
「仲井戸さん、あの……ちょっと変態……」
「確かに。キモいね、俺」
胸の頂を吸い上げていた仲井戸さんが、笑いを堪えきれずふっ、と息を吐いた。胸の先で吐息を吐かれると、唾液で濡れているせいもあり余計にひんやりした。それがまた、私の快感を後押しする。
「っ……!!」
高まりつつあった快感がすぐそこまで到達している。絶頂はすぐそこだ。
――あ……やば、イキそう……!
彼の腕を挟んだまま太股を擦り合わせ、快感を逃そうとする。でもこの行動だけで彼にイキそうなことがバレてしまった。
「凌さん、イキそう?」
質問に対し、無言でうんうん頷くと、仲井戸さんが私の中からゆっくり指を引き抜いた。
「じゃあ……一度イッとく?」
「……っ、は……あっ……!」
多分これ、もう我慢なんかできない。もしかして挿れてくれるのかな、とふんわり思っていたら、違った。
仲井戸さんは体をずらし、私の股間に顔を埋める格好になった。それを視界の端で捉えた私は、思わず上体を起こした。
「え、あ、待っ……」
私がM字に開脚している足をがっちりホールドして、仲井戸さんが襞の奥にある小さい快感ポイントを執拗に攻めはじめた。
「っ、あんっ!!」
最初の一舐めがバチン、と強い刺激を与えてくる。それだけで腰がひくつき、さらに蜜が溢れたのがわかった。
「や……っ、だめ、それだめ……っ!!」
気持ちよすぎて目尻に涙が浮かんでくる。つい逃げ場を求めて腰を引くけど、足を捕まれているので逃げられない。
「もっ……無理いっ……あ、んんっ――――!!」
また与えられた刺激であっけなく達してしまった。かろうじて上半身は起こしたまま、肩で息をしながら天井を仰いだ。
我が家よりも高いまっ白な天井。それを見つめながら呼吸を整え、視線を自分の体に戻すと、上体を起こした仲井戸さんが目に入った。
「入ってもいいですか」
熱っぽい瞳でそんなことを言われたら、頷くしかできない。というか、この場面で敬語っていうのがじわじわくる。
「……は、はい」
頷くと、仲井戸さんがちょっと待ってて、と半裸でリビングを出て行く。この隙にさっき飲んでいたコーヒーで渇ききった喉を潤した。
――仲井戸さん、なんか……普段と全然違った……
かっちりした秘書のイメージとは完全に真逆で、色気に溢れた彼にドキドキしっぱなしだった。甘い雰囲気を纏わせた仲井戸さんはすごくセクシーだった。
さっきまでの事を反芻するだけで下腹部がきゅうっと切なくなる。
そんな仲井戸さんと自分がこれから……と、想像するだけで倒れてしまいそう。