副業でドラマCDの脚本を書いているOLの凜子が、収録現場で出会ったのは上司の灰谷課長。社内一モテる男が、セクシーボイスで有名な声優だなんて! 実は女嫌いゆえ童貞だという灰谷に、声優仕事のため初体験につき合うよう頼まれる。耳元で囁かれる言葉責めと野獣のようにぶつけられる熱杭に翻弄されるのは、凜子にとっても初めての経験で……!?
「凜子さん、脱がしてもいいか?」
「ええ、脱がせて」
お願いをする声には期待が滲んでいた。
ひとつずつ相手の意志を確認するのが玲君の誠実さである。特にセックスするなら、合意を求めるのは大事だ。相手の意志をきちんと言葉で確認しなければならない。現実世界は二次元とは違うのだから、端折っていいはずがないのだ。
私を見つめたまま、ゆっくりとスウェットが捲れていく。このもどかしいような焦らされている時間がなんとも羞恥心を煽ってくる。
「腕を上げて」
お腹を晒した状態で腕を上げて、同時に脱がしやすいように背中も少し浮かした。すぐに視界がスウェットに覆われて、頭からすぽんと脱がされる。
ナイトテーブルのスタンドの明かりのみに照らされているとはいえ、互いの身体がはっきり見える状況でまじまじと裸を見られるのは気恥ずかしい……。上半身を脱いだ私の肌を見つめられると、腕で隠したくなってくる。
「すまない、長袖の下着も用意するべきだった。寒くなかったか?」
「部屋の温度がちょうどいいから大丈夫」
「女性用の腹巻は買っておいたんだが」
「……用意がいいわね」
やっぱりあったのか……。
そんな会話をしていても彼の視線は私の肌へ注がれている。一切視線をずらさない。
特にエステで手入れをしているわけでも、毎夜念入りにボディクリームを塗りたくっているわけでもなく、運動不足でぷにぷにな身体なのに。うっとり見つめられると謝りたくなってきた。
「あの、見るのははじめてじゃないでしょう? そんなに見つめられると恥ずかしいんだけど……」
「……すまない、俺の部屋に君がいるだけでも舞い上がっていたのに、自分のベッドに恋人が半裸で寝ているというのがうれしすぎて、感慨に耽っていた。しかもこんなに綺麗な肌を晒しながら誘われたら……」
「落ち着いて、あなたが見ているのはどこにでもいる女の普通の肌だし、フェロモン過多で私の方が眩暈しそう」
悩ましい息を吐かないでほしい。ギンギンに滾っている股間の膨らみが目に入ってしまう。
玲君は私が寝そべっているから、襲われるのは私の方だと思っているが、身の危険を感じるべきは彼の方だ。鼻息荒く彼の美しい筋肉に触れ、首から鎖骨を舐めては喘ぐ玲君を存分に楽しみながらスウェットパンツに手を突っ込み、彼の欲望を弄りたいとか考えてしまうのだから。
目尻を赤く染め、情欲を露わにした顔で私の胸にそっと触れてくる。
「不思議だ、今まで女性の胸になんの感情も抱いていなかったのに、凜子さんの胸だけが特別に感じる。ずっと触っていたい」
「……人目がないところだったらいつでもどうぞ」
仰向けになってしまったら胸が流れてしまって面白味が半減すると思うんだけど、そんなことは気にせず玲君は少し慣れた手つきで胸を弄ってくる。横からすくい、強弱をつけた強さで私の官能を高めるように胸を揉み、指先がすでに立ち上がっている頂に触れた。
「ン……」
「ここも、うまそうだ」
ぺろりと舐め、口に含まれた。舌先がコロコロと飴玉を転がすように舐めては強く吸い付かれた。気持ちよさに腰がぴくんと跳ねそうになった。
「れい、君……。そっちだけじゃイヤよ」
「ああ、すまない……片方ばかりじゃイヤだよな」
赤くぷっくりした実を名残惜しそうに離し、反対側の胸にも触れてくる。
空いた手で身体の輪郭をなぞられ、みぞおちから臍まで彼の大きな手が触れられるだけで下腹の疼きが増した。
ああ、ヤバイ。キスされて胸を弄られたら、自分でもわかるほど身体の奥から蜜が溢れてくる。
せっかく新しいパンツを履いたのに、もうじっとり湿っていた。それを彼が洗濯するところまで想像できる。さすがに洗濯は私にやらせてもらいたい。
胸元を強く吸われて、キスマークができた。うれしそうに微笑まれたら、私の我慢ももはや限界である。
「玲君……今度は私が脱がせてあげる」
「え?」
身体を起こし、彼のスウェットの裾に手をかけた。
美しい上半身が現れた。私の身体と比べるのもおこがましいくらい、いつ見てもいい被写体になれる裸体である。
「凜子さん?」
若干の戸惑いと期待が込められた声。
上半身を裸にさせた彼を今度は私が押し倒した。
「今してくれたことと同じことをしてあげる」
意識的に艶っぽい声を出すと、玲君の喉ぼとけがふたたび上下した。
私の胸を凝視し、ゆっくりと目を見つめてくる。
恥じらう乙女のように頬は染まり、彼の眼差しは緊張と期待を孕んでいる。薄く開いた唇から漏れる吐息すら官能的で、その胸に触れれば心臓がドクドクと速い鼓動を奏でているだろう。
彼が押し倒され慣れていることに妙な感慨を味わいながら、私は自分の欲望のまま行動を始めた。
「玲君も気持ちよくなりたいでしょ?」
うっとりと、囁くように呟いては、彼の素肌にそっと触れる。しっとりとした肌の質感は吸い付くようだ。三十を過ぎた男の肌とは思えない。……って、十代の若い男の肌を知っているわけでもないが。
「凜子さん、なにを……」
「まずは胸。玲君の胸も、ここで感じるようになったら、きっととても気持ちいいわ」
指先で、すでにピンッと主張している胸の頂に触れる。
「ン……、あ、待って……ッ」
「ふふ、だーめ。じっとしてて?」
さわさわと、両手で胸をマッサージするように揉んでは、親指と人差し指でキュッと胸の飾りをつまんだ。綺麗な眉を寄せて、色っぽい声を堪えている姿がたまらない。
彼はさっきまで私の胸を好き放題弄り、舐めて吸ってを繰り返していたのだ。同じことをされると想像しているのだろう。呼吸が荒い。
適度に筋肉がついて引き締まった身体がとてもエッチで、眉間に皺を刻んで掠れた吐息を漏らす姿だけで濡れてしまう。
胸の愛撫だけでぐっしょりと下着が濡れている自覚があるが、今は気にしないふりをして、私は彼の小さな実に唇を寄せた。
「あ……っ」
舌先でぺろりとひと舐めし、強く吸う。私の唾液塗れになった彼の乳首が、いやらしくぷっくり腫れてくれたらいい。
たまに刺激を与えるように、カリッと歯を立ててみれば、玲君はわかりやすく腰が跳ねた。
「凜子さん、もう……っ」
「んー? 私の胸が、玲君の胸板とこすれるのがイヤ?」
そう言って、わざと自分の胸を彼の肌にこすり合わせた。素肌で触れられる体積が増えると、温かくてすべすべで気持ちいい。
しっとりと汗ばんできた肌を掌全体でまさぐる。腹筋の凹凸が感じられるって、一体いつ鍛える時間があるんだろうか。
彼の貞操が今まで守られて来た奇跡を心の中で喜びつつ、ぺろりと舌で唇を湿らせた。
「イヤじゃ、ない……だが、もうくるし、い……」
ハア、と悩ましく吐いた息がたまらない。そして彼の下半身が限界に近いことを、私ももちろん気づいている。
大きくテントを張っているそこを両手で弄ったら泣いてしまうだろうか、とか考えながら、私は宥めるように彼の首筋に口づけた。
「……ッ!」
息を呑んだのを肌で感じる。私の肌にたくさんキスマークをつけられたのと同じく、彼の肌にも刻みつけたい。周囲に牽制が必要なのは私よりも玲君だ。それこそ男女関係なく魅了できるなんて、存在が総受けで好きすぎる。
首筋から鎖骨にかけて、満足するまでチュウッと吸い付く。
彼は喘ぎ声を堪えているが、存分に啼かせてあげたいと私の煩悩が訴えていた。
もう痴女認定されてもいい。合意の上で、双方が満足できればそれでいいのだ。
ギンギンに滾っている股間へ手を伸ばし、スウェットの中に忍ばせた。パンツの上からそっと熱い杭をさする。
「——ッ、ダメだ……」
「うん? ダメなの?」
少し布を下げれば、すぐにそれはブルンと酸素を求めて顔を出した。苦しそうなのでスウェットごとパンツをずらし、その窮屈さを解放させた。
「ダメじゃないでしょう」と、うっとりとした囁きを落とし、玲君の心臓付近にキスをしつつ片手で立派な欲望を握る。
雄々しく猛々しいそれは、片手じゃ握り切れない。指先だけで先端のくぼみを弄ると、液体が滲んでいた。ずっと我慢していた証だろう。
付き合う前から彼の性器を見ていたな……とか、妙な心境に陥りながら、存分にその欲望を吐き出させたくてたまらなくなる。
はふはふと呼吸を荒くする彼の唇をキスで塞いでしまおうか。そう悩んだ一瞬の隙に、私の肩に彼の両手が置かれた。
「え、——ッ!」
ふたたび背中がマットレスに当たる。
形勢逆転——。
彼は下半身の雄をギンギンにさせ、ギラギラとした獣の目で私をまっすぐに見下ろしていた。
「凜子さん、凜子——っ」
恥じらう乙女はどこ行った!
性急な手で私の最後の砦を脱がしにかかった。待ったをかける余裕もなく、ぐしょぐしょになったパンツまで見られてしまう。
「ああ、もう、我慢なんかできない……今すぐほしい」
「ン……! あ、待って、れいく……」
「待てない」
膝を立たせられ、股の中央に彼の麗しい顔が埋まる。自分でも見ない場所を見られるだけでなく、舐められる光景を見るのはとても心臓に悪い。
「ずっと我慢してたのは、俺だけじゃなかったんだな。ここがもう、とろとろになっていて、赤く充血してて……早く入りたい……」
「っ——!」
そ、そんなところで喋るんじゃない!
私がとろとろな顔になった玲君を堪能するはずが、何故こうも形勢逆転されるのだろうか。私の中のSっ気が不満を訴えるが、次第に快感が増してくる。
肉厚な舌が蜜口をつつき、浅く出入りする。じゅるじゅると蜜を啜られる音も、私の官能を高めるスパイスになる。
「あ……、んぁあ、ゃ、ああ……っ!」
舐められ啜られ、器用な指が花芽を同時に弄って来る。強弱をつけた絶妙な指先だ。一体どこでいつ習得したのだと思っても、彼の体験は私だけ……じんわりと優越感が心を満たしていた。
唇が離れたと思った瞬間、赤く腫れているであろうその突起に強く吸い付かれ、私の胎内でくすぶっていた熱が一瞬で弾けた。
「アァ——……ッ!」
目の前がチカチカする。真っ白い世界へ放り投げられたかのような浮遊感。
全身から力が抜け、絶頂を味わったことを悟った。あっけなく達してしまうこの身体は、すっかり快楽に弱くなってしまったらしい。
敏感になっているときに指を挿入され、さらに中を広げられる。私の中は彼の指をそれこそ歓迎するかのようにあっさり二本も飲み込み、三本目も多少の違和感を覚えつつも飲み込んでしまった。
「すごい締め付けだ」
「ン……、ああ……っ」
異物感があるのに、痛みはない。一度達したからか、私の膣内は程よく蕩けているらしい。
「本当、凜子さんは可愛い……、こんな風に乱れる姿が見られて、たまらない」
少し前までホイップクリームちゃんは乙女だったのに、野獣に転身してしまった。
そのジョブチェンジは正直いらなかった……いや、どうだろう。乙女な姿もワイルドな雄っぽい姿も、二度楽しめておいしいかもしれない……なんて考えるあたり、私の煩悩は節操がなさすぎる。
すっかり気持ちよくさせられて、自分の嬌声に甘さが混じっていたのを自覚した頃。玲君の雄がスタンバイOKになっていた。いつの間に装着したのか、きちんと避妊具までつけている。
「これからじっくり、今までの経験を上書きするから……これからは俺だけを求めてほしい」
だから男性経験なんてないって……、と心の中で反論するが、最後の台詞が思いがけずキュンときた。
自分だけを求めてほしいと懇願されるのは、破壊力が強い。一途な愛を捧げられた心地だ。私もその気持ちを返したくなる。
了承の意味を込めた微笑みを向けた瞬間、熱い質量が私の蜜口にあてられた。