「俺なしで生きていけない身体にしてやりたい」
初心で奥手な性格なのに派手顔で苦労する美波は、海のトラブルから救ってくれた海上自衛官の門屋蒼介と出会い、初めての恋に落ちる。元婚約者の裏切りが原因で女性不信の蒼介を癒やしたいと、彼と一夜を共にする美波だが、遊びで処女を捨てたと思われショックを受ける。それなのに蒼介から「責任を取ってくれ」と、契約結婚を持ちかけられ…!?
「少しでも痛かったり、嫌だと思ったら絶対に言ってくれ」
門屋さんが私の手首を掴み、その内側にキスを落とす。返事をしようとして、声がうまく出せない。こくんと頷くので精一杯。
私が頷くのを見た門屋さんは、ふっと目線を柔らかくして私の手首を舐め上げた。
「ひゃっ……」
思わず上がる声は、自分のものと思えない甘いもの。頭の芯がじぃんとしてきて、もう何をされてもどうされてもいいような気分になってしまう。恋、ほんとに怖い……
門屋さんがソファに乗ってくる。ソファの背に押しつけられるようにして唇を奪われた。ゆっくりと彼の舌が動く。そのたびにちゅくっ、と水音がして、それがひどく淫猥に思えた。頬が熱くなり、呼吸が荒くなるのにキスのせいでうまく息ができない。
「ん、ふぅ、……っ、んっ」
なんとか息をしようともがくけれど、彼はそんな私を逆に抱きしめて腕に閉じ込め、後頭部に手を回してきた。そうしてキスがさらに深くなる。
「んん……っ!」
舌が絡み合う。根本を突かれ、頬の粘膜を舐められ、ちゅっと舌が吸われる。
頭がくらくらすると同時に、身体の奥がぐずぐずになっていくのがわかる。きゅっと太ももを合わせる。付け根が潤んでいて、ドキッとした。
唇が離れる。門屋さんは私をじっと見つめていて、逸らそうとしない。心臓がどんどん高鳴る。それが鼓膜の横にあるみたいに、どきんどきんと音が聞こえる。こめかみがずくずくする。
門屋さんがぐっと息を呑んでシャツワンピースのボタンを外し始める。ひとつひとつ外されていくたびに、期待で身体が疼く。
唇をわななかせると、門屋さんが指の動きを止めた。
「門屋さん?」
「大丈夫か?」
そう言って彼は私の頬を撫でる。
「怖いなら止めよう……この間、やっぱり痛かったよな」
そう言って彼は何度も私の頬を親指の腹で撫でた。大切な人にそうするみたいに。
「悪かった。本当に……怖くなっても仕方ない」
苦しそうに、彼が言うから。
「ち、違うの」
私は慌てて彼の手を握る。
「違うの……」
そうしてその手に頬を擦り寄せる。
「ただ、期待、しちゃったの」
門屋さんがぐっと喉仏を動かした。
真っ直ぐな視線に向かって、私は言う。
「この間も、痛かったけど……でも、気持ちよかったの。だから……」
「美波」
怒ってる声だった。
「そんなふうに言われて、見つめられて、煽られない男がいるとでも思っているのか?」
「煽ってるつもりじゃ」
「クソ、煽ったのそっちだからな」
門屋さんはそう言って、ボタンを途中まで外していたシャツワンピの肩を落とす。そうして鎖骨に噛みついたかと思うと、下着が露わになった乳房を強く揉みしだいた。
「っ、ぁ、やぁっ」
反射的に暴れかけた下肢を、ぐっと押さえつけられる。ぐいっとブラジャーが上にずらされ、直接触れられる。
「ふ、ぁ……っ!」
固くなってしまっていた先端に指先でくすぐるように優しく触れたかと思うと、強く摘まれた。思わず喘ぎ強く手を握る。
彼はその先端を乳房に手のひらで押し込むようにしながら強く胸を揺さぶった。
「あ、ぁあっ、ぅあっ」
声を我慢したいのに、全くできない。必死で口を覆うと、耳元に唇が寄せられた。
「声、聞きたい」
ぶんぶんと首を振る。門屋さんが嗜めるように耳を舐める。軟骨や耳朶を甘く噛まれ、悶えるように身体を捻る。
ふと手が離れたかと思うと、ひょいと持ち上げられ、ソファに座った彼の膝の上に乗せられた。後ろから抱きしめられている状態で振り向くと、唇が重なる。重なったまま、乳房を掴むようにぐにぐにと揉まれる。
「ふ、ぁ……」
口を押さえ、必死で快楽に耐える。
門屋さんがシャツワンピの裾を捲り上げ、私の膝裏に手を当てた。
「足、開けるか」
唇を離され耳元で低くそう言われて、私は何も考えることができないまま、ただ足を曲げ広げる。すとん、とワンピースの裾が腰まで落ちてきた。
彼の硬い指先が、クロッチ越しに足の付け根に触れる。くちゅ、と明らかに濡れた音がして、ちょっと泣きそうになりながら、ただ浅い呼吸を繰り返した。
くいっとクロッチがずらされる。空気に触れたそこは、濡れすぎていてひんやりする。
門屋さんの指先が濡れた入り口に触れた。
「ふ……っ」
顔を背け声を堪える。ちゅく、ちゅく、と入り口を撫でるように弄られる。呼吸がどんどん浅く、速くなるのがわかった。
深く挿れてほしくて腰が動きそうになる。羞恥心と情欲がせめぎ合う。ぐりっといきなり肉芽を押され、足が震えて跳ね上がる。
「……っ!」
同時に指がずぷずぷと肉襞を割るように入り込んでくる。私は高く、細く、息を吐く。それしかできない。
「っ、……ぁ、っ」
門屋さんの中指が奥へ進むたびに淫らな水音が微かに漏れた。肉芽も親指でぐりぐりと押され、強い快楽で知らず腰が浮く。声を我慢しすぎて気管支のあたりが痛む。
「狭いな」
門屋さんが私の耳元で言う。
「こんなに……不慣れなのに。本当に悪かった」
ちゅ、ちゅ、と耳にキスをされる。
「本当に……」
はあ、と息を吐く彼の声があまりに辛そうで、思わず目を瞬く。
「今日は痛いことはしないから」
穏やかな声だった。ただ、その声とは裏腹に、指の動きが少しずつ速くなる。
「ぁ、っ、門屋さんっ、んっ」
ちゅくちゅく、と零れていた音がじきにちゅこちゅこと空気を含んだものになる。ナカが蠕動して、わなないて、彼のが欲しいとわがままに、ぐずぐずと蕩けてしまっていた。
「ここ、気持ちいい?」
信じられないほど甘い声で彼が聞く。半泣きでこくこくと頷くと、門屋さんはそこを一定の速さで強弱をつけながら押してくる。
「う、ぁ……っ、門屋さんっ」
太ももが震えた。細波のように打ち寄せる快楽がどんどん強くなっていく。
「美波。もう名前で呼んでくれないのか」
門屋さんが私の耳殻を食み言った。
「美波」
命令されるように名前を呼ばれ、私は反射的に「蒼介さん」と彼を呼ぶ。
「蒼介さんっ……も、だめっ、来ちゃう、ッ、イっちゃう……っ」
ぴん、と肉芽を弾かれ、私は上ずった声を零しながら達してしまう。その私の身体を蒼介さんが抱きしめ、頬にキスを落とした。
「大丈夫か?」
くてんと完全に力を抜いて彼に寄りかかる私に、蒼介さんは優しく言う。
「眠いなら少し寝るか?」
そっと額を撫でられた。横向きに抱え直されて顔を覗き込まれる。その表情は驚くほど優しいのに、瞳の奥に隠しきれない情欲が浮かんでいて、ずくんと子宮が疼く。
微かに首を横に振った。
「蒼介さん、我慢しないで」
私は掠れた声で言う。
だってわかってた。彼の、が……ずっと硬く、大きくなってくれているって。
「男の人って、我慢するの辛いんでしょ……?」
蒼介さんが軽く目を瞠る。
「……もしかして、それで君、あの日、大して解してもないのに『挿れて』って」
ん、と頷くと彼が私を強く抱きしめる。私の胸元に顔を埋め、蒼介さんは小さく何かを呟く。
俺はばかだ、と──そう聞こえた。
「……蒼介さん?」
ん、と彼は顔を上げる。
「大丈夫だ。なあ美波、君に入りたい」
直接的な言い方に頬が熱くなる。こくん、と頷くと蒼介さんは「だから」と続けた。
「もう少し、解そうか」
「え」
私は首を傾げた。
「だ、大丈夫だと、思いますけど……」
「ダメだ。今日は君が少しでも痛がったら止める」
「そんな」
私の抵抗を無視して、彼はお姫様抱っこで私をベッドに運ぶ。そうして横たわらせ、すっかり濡れそぼったショーツを脱がせた。すぐさま膝頭を持ち大きく開く。
「そ、蒼介さんっ」
彼が私の足の付け根を見ている。なんとか閉じようとしたけれど無理で、私は顔を手で覆った。
「見ないで……っ」
「無理な相談だな」
彼が膝裏を掴み、固定した。そうしてゆっくりと、そこに向かって顔を埋めていく。
「…………!!!」
私は慌てて起き上がろうと身体を捩る。
「だ、だめっ、蒼介さんっ、そこ、汚い……っ」
抵抗虚しく、彼の呼吸が濡れそぼったそこに当たる。細い悲鳴が勝手に口から出た。
「蒼介さ……んっ」
名前を呼び終わる前に、何かぬるついた、柔らかくて固い、わずかにざらついた何か──おそらく、舌──がべろりと入り口のあたりを舐め上げる。
「あ、ッ」
未知の感覚に、顎が上がった。
蒼介さんの大きな手のひらが、膝裏から離れ腰を掴む。絶対に逃しはしないというように──そうしてわざとかのようにジュルジュルと音を立て、そこに吸いつき舐め上げていく。
「ぁ、いやっ、ん、っ、うぁっ」
恥ずかしい。
恥ずかしいのに、全神経がそこに集中してるみたいに、気持ちよくて仕方ない。
ちゅ、と音を立てて離れたかと思うと、肉芽をかりっと甘噛みされた。
「……っ」
反射的に腰が浮く。ぐっと骨盤のあたりを抑え込まれ、彼の指が強く腰骨を刺激する。それさえ気持ちよくて、甘噛みされている肉芽が震えているような気さえする。
ふっ、と彼が私の足の間で微かに笑う。変な笑い方じゃなくて──可愛い、と言われているような気分になって泣きそうになる。
そんなこと、思っているはずないのに。
そんな私の切ない感情は、ちゅっと肉芽に吸いつかれて霧散する。
「ぁ、あっ!」
つま先が跳ねた。吸われただけで呆気なくイってしまった──のに、彼は口の中で肉芽を転がし続けた。舌先で突かれ、吸われ、甘噛みされて。
信じられない快楽にお腹まで震える。自分のナカ、肉襞がきゅんきゅんと収縮しているのがわかる。信じられないほど簡単に、再び絶頂の波がやってくる。
「う、あっ、だめっ、イくっ」
快楽から逃れようと、無意識のうちに彼の短い髪に触れていた。
「あ……!」
びくびくと身体が震える。
ナカの肉襞もまた、快楽への期待に蕩けながら震えている。
そこに硬い指がぬぷぬぷと挿入りこんでいく。それは私のナカでバラバラに動いて──彼の指が二本か三本、ぐちゅぐちゅと蠢く。
はあっと大きく息を吐き出した。ナカがうねっている。気持ちよくて、気持ちよすぎて、身も蓋もなく泣き喚きそうだった。
どろどろと温い粘液が零れ、シーツに落ちる。
「も、お願い、蒼介さんの、挿れて」
頭がおかしくなりそう。
正気を保っていられるうちに終わりたかった。必死で蒼介さんをねだる。
「お願い……!」
彼が笑う気配がした。
同時にちゅっとまた肉芽を吸われて、私はもう言葉になっていない喘ぎ声を上げるしかできない。
「ふ、くぅっ、ぁっ、あんっ、ぁあっ」
身体が再びそこまで来ていた絶頂に身を委ねようと、震えながら準備をした瞬間に、ぱっと指が抜かれ、口が離される。
「ぅ、あ、……っ、なんでっ」