京都地検で非常勤職員として働く恵茉の初恋は、学生時代、痴漢から助けてくれた〝王子様〟。その彼に似たエリート検事・室見は何かと恵茉を気にかけてくれる。室見に惹かれる恵茉だが、彼には好きな人がいるらしい。そんなある日、ひょんなことから室見と一夜を共にしてしまった恵茉は、任期満了までの半年間、体だけの関係を結ぶことを提案して……!?
「っ、あんっ、やっ、ぁっ、あ」
ごつごつと奥を突かれる。私のナカの粘膜は抽送されるたびにきゅんきゅんと悠人さんの屹立を締め付けた。
「……っ、恵茉。締めすぎだ」
「や、っ、ごめんなさい、っ、ごめんなさい……っ」
私はベッドにうつ伏せになり、後ろから攻め立てられて息もできない。悠人さんはぎゅうぎゅう後ろから私を抱きしめていて、私は全く身動きできなくて──シーツを握りしめ、何度イっても無理やりにまた与えられる快楽に、もはや自分の身体が完全にコントロール不能に陥っていた。
勝手に感じて、勝手に締め付けて、勝手に達して、勝手に──泣いて。
涙がシーツに染み込む。涙だけじゃない、喘ぎすぎて唾液までもだらだらだ。シーツを洗わなきゃ、と完全に痺れた脳髄でどこか遠い出来事のように考える。
「恵茉」
悠人さんに嗜められるように名前を呼ばれながら私はまたイって──同時に、悠人さんのがどくんとナカで拍動し、薄い皮膜に精を放ったのを感じる。
吐き出そうとゆるゆる動く、その緩やかな腰の動きにすら私は強い快感を覚えて甘い声を上げた。
は、と悠人さんが息をつき、私のうなじに噛み付いた。
「ゃあっ!」
「可愛い……」
思わず、といった感じで漏れた彼の言葉が嬉しい。
「ところで」
私のナカから出て行ったあと、べろりと私のうなじを舐めながら悠人さんは言う。
「『こんなふう』ってなんだったんだ?」
「──え?」
「さっき言ってくれただろう? 『こんなふうにしたんだから責任取って』と」
私はぎゅっとシーツを握りしめた。耳まで熱い。絶対真っ赤になっていると思う……!
「あの、その」
もじもじしていると、くるりと身体を反転させられた。
「あのっ」
真っ赤であろう顔を見られたくなくて両手で覆うと、悠人さんが低く笑う。
「いちいち可愛いなあ」
そう言って、私の太ももを掴み、大きく広げた。
「──っ、悠人さん!?」
「なんだ?」
とっても普通のトーンで悠人さんは返事をして、それからべろりと大きく私のソコを舐め上げて、舌をねじ込む。
「ぁ、あっ、うぁ」
ちゅくちゅくちゅく、小刻みに舌を抜き差しされ、私の足が跳ねそうになる。それを悠人さんは手で押さえ込み、肉襞を舌先でつつく。
「あっ、ぁあっ、あんっ」
腰ががくがく揺れる。いちばん奥が強く収縮し、また熱い屹立を欲しがって蕩けた。
「ゆー、とさん……」
ちょうだい、という想いをこめて彼の名前を呼ぶ。早く慰めて欲しかった。奥の熱は切なさを通りして、もはや痛い。
悠人さんはじっ、とそんな私を見て少し考える仕草を見せて──それから「ああそうだ」と思いついたように言う。
「結局『こんなふう』の答えを教えてもらってないな」
「もう、っは、秘密ですっ」
「秘密か」
残念だな、と悠人さんが呟き、次の瞬間には疼いていた肉芽をちゅうっと強く吸う。
「……っ!? っはぁ、……っ!」
唐突に与えられた強い快楽に、頭が真っ白になる。
「……、っ、やだっ、気持ちぃ……っ」
違う。気持ちよすぎる……
がくがくと身体を震わせ、イきそうになったその瞬間……悠人さんは刺激をやめてしまう。
「……え」
「ひどいな、恵茉は」
太ももの内側にちゅう、と吸い付きながら悠人さんは言う。
「俺たちは恋人同士じゃないのか」
改めて言われた「恋人同士」という言葉に妙に照れて、思わず顔を覆った。
「また隠す」
手の甲にキスを落としながら、悠人さんはからかうように言う。
「なんでも隠してばかりだ。さっきのも秘密にされてしまったし」
「だ、だって」
「悪い子だ」
低く、耳の傍でそう言われた。ずくん、と身体の奥が疼く。
「悪い子には何が必要だと思う」
はむ、と耳朶を噛む彼の歯の硬さを感じる。ぞくぞくと背中を快感が走り、痛いほどに奥が切ない。
「んんっ……」
「償いをしてもらわなければ」
「償い……?」
「あなたの好きそうな言葉で言い換えると」
悠人さんの舌がちゅく、と耳の穴を舐める。甘い声を上げる私の耳元で、さらに悠人さんは続けた。
「『お仕置き』」
「──え?」
顔から手を離し、彼の顔を見つめた。悠人さんは唇を上げて──
それから私の横に寝転がり、ヘッドボードからゴムのパッケージをひとつ手に取り私に差し出した。慰めてほしければ自分でやりなさい、って感じで──
(お仕置き)
こくり、と唾を飲み込んだ。
「いじわる……」
「そんな言葉で興奮させても無駄だぞ」
「こ、興奮するんですか?」
「するに決まってる」
悠人さんはそう言って私の頬をゆっくりと撫でた。ふと見ると、さっき果てたばかりの悠人さんのが、再び強く屹立し熱を持っている。
「──ぁ」
視界に入れた瞬間に、ずくんと奥がまた切なく痛む。きゅうきゅうと肉襞が収縮し、それを欲しがって疼く。私は羞恥で頬が熱くなるのを覚えながらゴムのパッケージをぴっ、と開けた。潤滑剤でしっとりと濡れたゴムを取り出し、悠人さんに表裏を確認してから、彼のものに触れる。
ゴムを被せる前に、ふとその屹立の先端にキスをした。なんだかそれが愛おしく思えたから──
びく、といっそ大袈裟なほどに悠人さんが腰を揺らす。それから軽く身体を起こし、私を見て挑発的に片方の唇を上げた。
「そんな可愛らしいことを──覚えてろ」
「……!?」
嫌ではなかったみたいだけれど、でも宣戦布告をされてしまった。戸惑いつつも己の欲求に従って悠人さんのにゴムを被せ、悠人さんの身体を跨いで膝立ちになった。
「ふ、……っ」
思わず漏れそうになる声を堪えながら、腰を落とし屹立を飲み込んでいく。
全てを挿れきって、私はほう、と息を吐いた。安心したのも束の間、埋められた熱に勝手に腰が動く。
「んっ、んっ、んぁ、はぁっ」
私は両手で口を塞ぐ。
(恥ずかしい……っ!)
目頭が羞恥で熱くなる。こんな格好をしているのも恥ずかしいし、快楽を自分から求めて浅ましく動くのも、ひどくはしたないことをしている気分になる──
「それだと声が聞こえない」
不満そうな声で悠人さんが言うけれど、私はぶんぶんと首を振った。
ぐちゅぐちゅ、と淫らな音が結合部から溢れる。それが私が、私自身で出している音だと思うとひどく恥ずかしくて、なのにきゅっと締め付けてしまう。悠人さんが「気持ちよさそうだな」と微かに笑う。私は「はい」とも「違う」とも言えず、ただ淫らに腰を揺らす。
──なのに。
「ふ、っ、ぁんっ、ぅ」
身体の奥がじんじんと疼く。いちばん刺激が欲しい「そこ」がどこかわからず、切ない疼きは、また強く、強くなっていく。
「ぁ、っ、ふぅっ、ふぅっ」
押さえつけた手の隙間から荒い息が漏れる。熱い疼きがもどかしくて、でも彼に見つめられているのが恥ずかしくて仕方なくて、私はうまく動けなくて──
ふ、と悠人さんと目が合う。冷静な顔をしている彼の目だけが、ぎらぎらと情欲に染まっていた。そして彼は「手を」と口を開く。
「手で足首を掴めるか? ──そう」
は、は、と荒い息を吐きながら、私は言われた通りに足首を掴む。
その手を足首ごと、悠人さんの大きな手が包み込む。そうして下からぐっと突き上げられた。
「ふ、ぁっ!?」
「そこがあなたのイくところだ」
「ぁ、あっ」
ずっと欲しかったソコを、悠人さんがぐちゅぐちゅと突き上げる。
「あっ、あっ、ぁあっ、気持ち、ぃっ、やっ、やんっ」
私はびくりと仰け反る。
「ぁ、イきそう、来ちゃう、ぅ、あ──」
あと一度の抽送で達する──その予感でナカがうねり悠人さんを締め付けた時、悠人さんはぴたりと動くのを止めた。
「ぇ? ぁ、っ……」
は、は、と肩で息をしながら彼の顔を見下ろす。悠人さんはフラットな表情で私を見返す。それでもやっぱり、目はぎらぎらしていて──そうして悠人さんは柔らかく笑った。
「自分でしなくてはお仕置きにならないだろう」
「っ、いじわる……」
その言葉に、実に嬉しそうに悠人さんが笑う。その顔に余計に情欲を刺激されて──私は恥ずかしさを押し殺しながら、ぐちゅぐちゅと腰の律動を再開する。
足首を掴んでいるせいで少し背中が反って、そのせいで──さっき悠人さんが教えてくれた「感じるところ」に彼の先端がぐりぐりと当たる。いちばん奥、子宮口をごつごつと抉る彼の屹立──
「ぁ、あんっ、あっ」
口から溢れるのはいやらしい高い声。自分のものだとは思えない。媚びて甘える、発情した声。両手は足首を掴んだまま悠人さんに押さえられているから、なすすべもなく腰を振ることしかできない。奥に押し付けるように、ぐりぐりと腰をうねらせる。
「んっ、はぁっ、ぁあっ」
頭が痺れる。悠人さんの視線が絡み付いていることがわかる。恥ずかしくてたまらない。なのにふしだらな私は、腰を止めることすらできなくて──
「ぁ、やだっ、見ないで……っ、悠人さんっ、あっ、来ちゃう」
私は首を振る。見ないで。見ないで。ぽろぽろ涙が溢れた。同時にきゅうきゅうと悠人さんのを締め付けて私は達する。力を入れていられなくなって、悠人さんの身体にしなだれかかった。
気怠い快楽の余韻に浸ろうとした瞬間、私は悠人さんに押し倒されていて──体勢を入れ替えられたらしい、と気がついた時には、足を高く持たれごつごつと最奥を抉られていた。
「ぁ、ぁあっ!? やっ、悠人さんっ、私、イったばかり……でっ」
無理、無理です、とうまく回らない舌で言うけれど、私を見下ろす悠人さんは「そういえば」と掠れた声で言う。
「『こんなふう』がどんなふう、か……予想を言っていいか?」
「ゃ、ぁあ……んっ」
やだやだ、と首を振る私に悠人さんは続ける。
「『こんなふうに淫らな身体』……だとか、そんなところか? 自分であんなふうに腰を振って喘いで」
「──っ!」
言い当てられて、私は羞恥で涙目になる。そんな私を見下ろして、悠人さんは嬉しげに目を細めた。
「俺の前でなら、好きなだけ乱れてほしい。淫らにふしだらに、思うさま快楽を貪るといい」
その言葉に、思わず首を振る。
「む、りです……っ、あんっ、恥ずかし……っ」
「──無理と言う割には」
ごちゅごちゅと私を貫きながら、悠人さんは笑った。嬉しくて仕方ない、っていうその顔に、私は揺さぶられながらも釘付けになって──愛おしい、と思った。この人が愛おしいと。なにをされてもいいと、そう思えるくらいに。
そんな悠人さんは言葉を続ける。
「こんなにうねって、絡み付いて吸い付いて──咥え込んで離さないくせに」
悠人さんの低い声で、身体の奥がずくんと疼く。こめかみを涙が伝っていく。快楽が強すぎて思考がまとまらず、さっき達したばかりで敏感になっていた私は甲高い声と共にまたイってしまう。
自分で動いた時よりも何倍も強い感覚に、私から溢れる言葉はもはや意味をなさない。
「ぁー……っ、あっ、あ……っ」
がくがく揺さぶられる身体。真上から穿たれる最奥。ぬちゅぬちゅと水となにかが混じったような粘液の音が部屋に響く。
「や、ぁ、ゆっ、と……、イっ……め、てっ」
「言えてない……ぞ?」
悠人さんの息が荒くなる。彼も気持ちいいんだとわかって、嬉しくて仕方ない。
「ゆ、とさんっ、ゆーと、さんっ」
自分でも恥ずかしくなる、舌ったらずな発音で彼の名前を呼ぶ。悠人さん。悠人さん。
「恵茉……っ」
荒い息のなか、彼が私の名前を呼び、ぎゅっと顔を歪めた。
「こうしてあなたの感情を動かせるのが……世界で俺だけだったらどれだけ」
悠人さんが吐露するようにそう言って、ぐいんと腰を大きく動かした。
「え? ……っ、ぁ、ぁんっ!」
再び与えられた絶頂に爪先まで力が入る。ぴん、と足が攣りそうなほど伸ばした足先──その付け根、私のナカで、悠人さんの屹立がびくびくと拍動した。ゴムの薄い皮膜越しに、悠人さんがたくさん吐き出しているのがわかって、私は胸があったかくなる。
とすん、とお互い身体から力が抜けて、ベッドの上、折り重なった。