就活中の琴美はゲーム会社社長・早見の秘書に採用されるが、同時に結婚を申し込まれる。実は琴美は元アイドルで、早見は彼女の大ファンだという。「好きすぎて、君の前では馬鹿な男になっている気がする」仕事では有能な早見から不器用なアプローチを受け、次第に惹かれていく琴美。だが熱烈な告白とは裏腹に早見との距離は縮まらず、不安を覚えて…?
(あ……抱かれたい……)
なんて不埒なことを思ってしまったんだろうという、罪悪感に似た羞恥心の中には、女としての欲望が確かにある。愛する男をこの身に受け入れたい――いや、もっと率直に言うなら〝欲しい〟のだ。
髪に指を差し入れ、掻き回すように撫でてくれる手のぬくもりに、うっとりとしながら目を閉じる。すると、ちゅっちゅっと可愛らしいバードキスで唇を食まれた。いつもはそれで満足できるのに、今は物足りない。この人によって開かれて、女の悦びを植えつけられた身体が、どうしようもなく熱く疼く。この人がするセックスをもう知っているから。
「んっ――……」
躊躇いながらも口を開けると、彼の舌先が口内に入ってきて、琴美の言葉と呼吸を奪う。
(あ――……気持ちいい……)
この甘いキスに酔いしれる。自分のすべてを奪ってほしいとさえ思う。尖った舌先が口蓋を撫でるように舐められて、肩が快感に震えた。その肩を秀樹の両手が流れるように触れて包み込む。口蓋から歯の裏をなぞり、舌の付け根から絡み付くようなキスが琴美の息を荒くして――
「はぁはぁはぁはぁ――ンッ……ぁ……あぁ……」
小さな喘ぎ声は、角度を変えたキスで再び塞がれる。口内にはとろみを帯びた二人分の唾液が混ざり、頭がぼうっとして、自分がなにに泣いていたのかすらわからなくなってしまうほど、彼とのキスが心地いい。
「……秀樹さん……」
「琴美……ごめん。こんなつもりで君をここに連れてきたわけじゃないのに……今、すごく……君が欲しい」
いつもは頼り甲斐のある凛々しい彼が、今は眉間に皺を寄せ、男の欲望を抑え込んだ苦悶の表情を浮かべているのだ。紅く燃え滾った彼の瞳に囚われると、なぜだかお腹の底からゾクゾクする。
最高の男に求められていることに、女としてこの上ない優越感と歓喜が綯い交ぜになって、琴美に至福の歓びをもたらすのだ。
「……わたしも……わたしも、秀樹さんが欲しいです……」
「琴美……っ!」
ガバッと覆い被さってきた秀樹に唇を奪われる。
心が通い合っていることを知れば、もうとめられない。絡み合うようにキスをしながら、秀樹は琴美の乳房をまさぐってくる。タイトなビジネススーツは仕事中に恋人関係を持ち込まないという一線を引く役割を果たしていたのに、今はただ背徳感を助長させる小道具にすぎない。
シュッ――と、スピード感のある小気味よい衣擦れの音と共に、ネクタイが宙を舞う。見上げるとジャケットとネクタイを外した秀樹が、ワイシャツのボタンを片手で外しているところだった。
(……素敵……)
逞しい胸元、浮き出た鎖骨、節のある長い指先。顔が整っているだけじゃない。男としても、人としても、魅力的で尊敬できる。そしてこの人が自分を猛烈に愛してくれているという事実に、琴美の目は蕩けていく。
そんなとき、無造作に片方の乳房を鷲掴みにされて、「あっ」と声を漏らす。強めに揉みしだきながら円を描く手の動きに自然と口元が緩んで、熱い吐息が漏れた。
「んっ……は……ぁんっ……」
「……ごめん。なんだか今日は、余裕がないかも……」
秀樹は小声でそう囁くと、琴美のブラウスをスカートからキャミソールごと引き抜いて捲り上げ、ブラジャーに包まれた乳房をあらわにする。そして、カップに包まれた乳房の膨らみが作る谷間に顔を埋めると、深呼吸をするように琴美の肌の匂いを嗅ぐのだ。それが恥ずかしいのに「ああ……いい匂い……」だなんて言われると、顔は火照るばかり。
「も、もぉ……秀樹さんたら……そんな……あっ!」
抗議しようとした琴美の声は、瞬時に感じた声へと変わる。秀樹がブラジャーのカップをずり下げて、乳首に吸いついてきたのだ。
ちゅぱちゅぱと音を立てながら、一心不乱に乳首を舐めしゃぶっている無防備な彼の姿に、胸がキュンとして愛おしさが込み上げてくる。この人はこんなにも自分を欲しがってくれているのだ。そして自分も……
「……秀樹さん……」
琴美は秀樹の頭を両手で包み込むと、丁寧に頭を撫でてやった。それが嬉しかったのだろうか? 秀樹はますます強く乳首を吸って、軽く噛んだり引っ張ったり、反対の乳首まで指で摘まんでいじりながら、熱く硬いものを太腿に押し付け擦りつけてくる。形がハッキリとわかるほど盛り上がったそれは、秀樹が興奮している証。
「琴美の中に入りたい」
そう言いながら彼は、タイトスカートをたくし上げ、パンストとショーツの中に手を入れてくる。
「ああ、びしょびしょだね」
嘲りにも似たひと言に羞恥心が襲ってきて、琴美はおもわず両手で顔を隠した。だって本当のことなのだ。琴美のあそこは知らぬ間に愛液を滴らせ、秀樹という男を待っている。彼のあの逞しい漲りに淫らに貫かれ、彼の女にされる快感の瞬間を――
そんな琴美の心の内を知ってか知らずか、彼は人差し指と中指で花弁を開き蜜壺から湧き出る愛液を指ですくうと、コリコリとした敏感な蕾に塗り付けてきた。
「ゃ、ぁ、……あっ、ぅ……」
左回り、右回り、円を描きながら包皮を剥いては、女の一番の弱点をツンツンと指先で玩ばれ、弱々しい声が漏れる。
気持ちよくされればされるほど強くなるのは、早く挿れられたい思いだ。でも彼は、蜜口の周りは触っても、中に指を挿れてくれない。挿れてほしい。彼のあの長くて太く節くれ立った指をいっぱい挿れてほしい。そして、最後は秀樹のも――
今まで秀樹に挿れられ、中を激しく貫かれ、女として愛されてきたことを思い出しては、身体が期待に火照っていく。
「ううう……はぁはぁはぁ……ぅく……ふ、ふぅ、ぁ……ひぃん……」
口から漏れる淫らな声を抑えようとするが、女芯を弾くように突かれる度に身体がビクビクと反応してとまらない。ここをこんになにもいじられたら……
(わ、わたし……、い、いっちゃう……いっちゃうよぉ……)
目も口もギュッと力いっぱい閉じて、懸命に快感を逃そうとするけれどできない。それどころか迫り来る快感に追い上げられて、絶頂の高みへと昇りつめて――
「アアッ――――!」
仰け反って上がる嬌声は、快感を極めた女の声。顔も身体も熱い。その熱い身体をビクビクと痙攣させながら快感の余韻に浸っていると、脱力した脚からショーツとパンストが抜き取られる。そしてカチャカチャとベルトのバックルを外す音が聞こえたかと思ったら、琴美の身体の中に、熱い杭が打ち込まれた。
「ぁは――っ!」
瞑っていた目を見開き、仰け反って口を開ける。びしょびしょの蜜路を、子宮口まで一気に貫かれて呼吸がままならない。なぜなら、琴美の口は秀樹のそれによって塞がれていたから――
「んっ……ぁ、あっん、ンふぁ……」
(……ひ、秀樹さんが……わたし、の……なか、に……)
何度味わっても不思議な感覚だ。本来、ふたつの身体がひとつになる瞬間。それは動物的な欲求を孕みながらも、肉欲だけでなく、胸の内をも心地よく満たしてくれる。
快感だけではない。自分のすべてを愛されている安心感――
(好き――好き、わたし、秀樹さんが好き……)
心が蕩けて、身体も蕩けて、すべてを彼に委ねて横になったソファの上で脚を開く。タイトスカートが腰まで捲り上げられて、足首の片方はソファの背凭れの上に引っ掛けられる。服を着たまま衝動的に侵されているのに、まったくいやじゃない。むしろ、彼の性的な欲望のままに、この身体を抱いてほしいとさえ思う。
くちゅくちゅと舌を絡めながら、濃厚なキスを交わす。彼は琴美の膣が馴染むのをじっと待ちながら手探りで乳房を揉み上げてきた。
少し乱暴に揉まれただけで、乳首が押し出される。男に吸われることを覚えた乳首は、ナチュラルなベイビーピンクでありながらも、ぷっくりと膨らんでどこかいやらしい。まるで、舐めて、吸われて、甘く噛まれることを望んでいるかのよう――それを秀樹は知っていたのだろうか? 揉んでいた乳房の先に軽くキスをして、ゆっくりと口に含んで吸い上げてきた。そして反対の乳房を鷲掴みにして、キュッと乳首を摘まんだ。
「ああんっ!」
ふたつの乳首から、それぞれ違う刺激を受けて、秀樹の屹立を咥え込んだあそこがキュッと締まる。そしてお腹の奥が熱くなって、じわりと新しい愛液を滲ませ繋がった処を潤した。
くちょ――……。秀樹が軽く腰を揺すっただけで、粘度のあるいやらしい音がする。自分の中に、淫らな女の部分があることを、好きな人に知られるのが死ぬほど恥ずかしいのに、不思議と腰が揺れてしまう。
「あっ、あっ、ンッ……ひで、き、さん……っあ!」
不意に奥を突き上げられて、声が裏返ってしまう。痛かったからじゃない……。気持ちよかったから……。そこを重点的に突き上げ、うんと強く抱きしめられて……琴美はブルブルと震えながら達していた。
「あ――……」
(……すごい、きもちぃ……こんな、わたし……、とけちゃいそう……)
身体が思うように動かない。硬い漲りは肉襞を擦りながら、ぬぷぬぷと奥へ奥へと入ってきて、琴美を優しくそして激しく蹂躙する。
「はぁはぁ……んっく、はぁはぁ……あ、はぁはぁ……ふ、はぁはぁ……」
ただ息を荒くして、はしたない声が漏れる口を必死に手で押さえながら、とろんとした目で秀樹を見上げる。
彼は額に薄く汗を滲ませ、いつもは綺麗に整えている髪を乱し、肩で息をしながら喉を鳴らす。瞬きもせずに琴美を見つめながら、一心不乱に行為に没頭している。その彼の男らしい喉仏が上下するのを見て、なぜだかまたキュンとお腹が疼いた。
「うっ!」
突然、秀樹が息を詰めてピタリと腰をとめる。それがなんとも物悲しい。
「やぁ! もっとぉ、もっと、やめちゃいやぁ!」
こんな舌ったらずな甘え声が自分から出るとは思わなかった。でも今までお互いに見つめ合って快感に溺れていたのに、それを取り上げられたのだ。叫ばないではいられなかった。
「ひできさん……ひできさん……」
「待って琴美、そんなに締めたら膣内に射精ちゃうよ……」
少しバツの悪そうな表情は、年上の彼を幼く見せて琴美の胸に愛おしさを与える。
(秀樹さん、わたしでいっぱい気持ちよくなってくれたの?)
この歓びをどう言えばいいのだろう? 彼に快感を与えているのは自分。彼が女として見て、性衝動を抑えられないほどに愛しているのは自分。数多のアイドル……いや、女の中から彼に選ばれて愛されている、その歓び。それを彼に返したい。彼にも味わってほしい。彼を選んだ女がここにいるということを。
「……いいですよ……」
「え?」
聞き返す秀樹が目をぱちくりとさせている間に、琴美はアイドル時代、〝しなやかで美しい〟と評されてきた両脚をスッと彼の腰に絡ませて、呑み込むように自身に引きつける。そして、今まで自分の口を押さえていた手を彼の頬に触れさせた。
「だって好きなんです……秀樹さんのことが……」
どうしようもなく押さえられないこの気持ちに身体ごと心も全部持っていかれて、理性なんてキレイゴトはそっちのけに、彼のことしか考えられなくなる。
「すごく欲しいの……」
強請るように蜜口がヒクついたのが自分でもわかった。そして、奥の蜜路さえも咥え込んだ彼の物をしゃぶって襞を這わせるのだ。これが女の欲なのか。心底惚れきった男を離したくないと、自分の中により深く引き込む。