「君のことは絶対に俺が守る」
仕事に邁進する紗夜は、執拗に関係を迫ってくる知り合いの男性に悩まされていたところ、以前もある場所で助けてくれた警視正の吹雪に救われる。偶然の再会から急接近したふたりは、彼女を気遣う吹雪の家で一夜を過ごすことに! 出会ったときは自分に恋愛は必要ないと言っていた吹雪だったけれど、その言葉とは裏腹に、紗夜は過保護に蕩かされ――。
*本書は、『執着系策士の不埒な溺愛にされるがまま』のスピンオフ作品となります。
見つめ合ったままでいると、再び吹雪の顔が近づいてくる。今度はキスされるのだと予感して、咄嗟に目を閉じた。
そっと押し当てられた唇が、静かに離れていく。けれど、離れたと思ったらまたくちづけられ、優しいキスが何度も与えられた。
吹雪は、やがて紗夜の唇をやんわりと食み始める。まるで壊れ物を扱うような仕草は、紗夜を甘やかすようでもあった。
息が上手くできない。どうすればいいのかわからなくて、繋がれたままの右手に力を入れてしまう。
「口、開けて」
そう言われて瞼を開けると、すぐ傍に彼の顔があった。紗夜を見つめる目は艶を帯び、なにを求めているのかわかってしまう。
「ほら、紗夜?」
甘やかすように微笑んだ吹雪は、頬に添えていた右手の親指で紗夜の唇を撫でる。くすぐられたような感覚に、背筋がゾクッと震えた。
真っ直ぐな瞳に射抜かれて、抗えない。鼓動はうるさいくらい高鳴っているのに、紗夜はおずおずと唇を開いた。
「そのまま閉じないで」
優しい命令に小さく頷くと、彼が唇を重ねてくる。何度か啄まれているうちに心地よくなっていき、紗夜は目を閉じて身を委ねていく。
程なくして、唇を舐められ、口内に熱いものが入ってきた。
「んっ……!」
それは吹雪の舌だと、本能で理解する。彼の舌先で上顎を軽く撫でられ、紗夜の身体がピクンッと跳ねた。
くすぐったいような、もどかしいような……なんとも言えない感覚に、身も心もついていかない。初めての感覚は、紗夜を戸惑わせた。
そうしている間にも、吹雪の舌は紗夜の口腔を這い回る。上顎をくすぐっていた舌が、おもむろに紗夜のそれを捕らえた。
舌の側面をなぞり、表面を撫でて。口内を味わうようにしている彼に、紗夜は意識のすべてを奪われそうになる。
頬に置かれていた手が首を撫で、指先が輪郭をたどって鎖骨を滑る。肌に羽が触れるような感覚が走り、吹雪に触られた場所からゾクゾクとしていった。
「っ、ふぅ、ん……」
ぴちゃっ、くちゅっ……と、艶めかしい音が鼓膜を揺すぶる。それは紗夜の脳内にも響き、どんどん激しくなっていく。
(どうしよう……。もしかして、このまま吹雪さんと……?)
嫌なわけじゃない。けれど、もし幻滅されてしまったら……と不安が過る。
吹雪は、きっと優しくしてくれる。紗夜が嫌がることはしない、という信頼もある。
それでも、彼の手がTシャツの裾から入ってきたときには、全身が大きく跳ねた。下腹部に感じた骨ばった手の感覚に身体が強張り、咄嗟に左手で硬い胸元を押して唇を離してしまう。
「紗夜?」
吹雪は一瞬目を見開いたが、すぐに紗夜を真っ直ぐ見つめた。
「実は……私、経験が……なくて……」
紗夜が消え入りそうな声で伝えると、彼が瞠目した。紗夜はこの年齢で処女だなんて引かれてしまうんじゃないか……という怖さが拭えず、身を小さくしてしまう。
次の瞬間、吹雪は紗夜の服から手を抜き、「ごめん」と呟いた。
「……浮かれて焦りすぎた」
紗夜が着ている服を整えた彼が、その手で紗夜の頭を撫でる。繋いだ手を解かずにいてくれたことに、紗夜はホッとした。
「今夜はやめよう。大事にしたいのに、こんな性急な形はよくなかった」
吹雪は優しく微笑むと、紗夜から少しだけ身体を離した。
繋いでいた手まで離れていき、紗夜の心の中に寂しさが芽生える。それは羞恥よりも大きくなり、紗夜の戸惑いを跳ねのけた。
「違うんです……。嫌だったわけじゃなくて……」
「うん」
「ただ、幻滅されたらどうしようって思っただけで……。私は、吹雪さんとなら……」
声は小さくて震えそうだったが、勇気を振り絞って本音を零す。そのあとで急に恥ずかしくなり、顔中が熱くなった。
「俺は、別に理性的な人間じゃないんだ」
「え……?」
「そんな風に可愛いことを言われて我慢できるほど、聖人じゃない」
困ったように眉を下げた彼の瞳には、まだ熱が滲んでいる。その目を見ていると喜びが込み上げてきて、紗夜は言葉にできない代わりにこくんと頷いた。
吹雪を受け入れたい。その意味を込めた紗夜の反応に、彼が喉を小さく鳴らした。
「怖かったり、やめてほしくなったりしたら、ちゃんと言って」
その言葉だけで、吹雪が紗夜を大事にしようとしているのが伝わってくる。そんな彼だからこそ、このまますべてを委ねてしまってもいいと思えた。
紗夜が再び頷くと、吹雪が紗夜の額にそっとくちづけた。優しい温もりに安堵感を抱き、不安も怖さも溶けていく。
そのまま瞼や頬、鼻先にくちづけられ、顔中にキスの雨が降ってくる。少し顔が離れて視線が絡んだあと、ふたりの唇が重なった。
触れて、食まれて、戯れのような行為が繰り返される。紗夜は、慣れていないなりに吹雪に応えたくて、必死に彼の仕草を真似した。
唇を啄まれればそっと食んで、舌でつつかれれば口を開ける。口内でうごめく舌をどうすればいいのかはわからないが、吹雪のすべてを受け入れたくて彼の背中に手を回した。
すると、吹雪が紗夜の頭を優しく撫でてくれる。舌を搦め取られて息が上がっていく中、その行為に心から安心できた。
「紗夜、顔真っ赤」
「だって……こんなキス、初めてで……」
元カレとは、キスはしたことがある。けれど、触れるだけのもので、その先の行為がこんなにも甘くて艶めかしいなんて知らなかった。
「そうか。じゃあ、これからたくさんして、慣れような」
柔らかい笑みとは裏腹に、その目には色香が滲んでいる。捕食者のような欲望が見え隠れして、紗夜は胸がきゅうっと苦しくなった。
「ほら、もっとキスしよう」
またしても、彼に唇を塞がれる。素直に口を開けると、すぐに舌が入ってきた。
熱い舌先が紗夜の舌に触れたかと思うと、上顎を撫でてくる。くすぐったさとむずがゆさが混じったような感覚に、紗夜の背筋がゾクッと粟立った。
「んっ、ぁ、っ……ふっ」
吹雪の手は紗夜の頭から頬に移動し、首筋をたどって鎖骨へ。そうして止まることなくさらに下に向かい、胸の膨らみにそうっと触れた。
Tシャツ越しなのに、紗夜の肩が大きく跳ねる。直後、彼が唇を離した。
「紗夜、下着は?」
「っ……。それは、その……だって、びしょ濡れだったから!」
ブラは隅々まで濡れていて、乾かすにしても時間がかかりそうだった。吹雪は洗濯機を使っていいと言ってくれていたが、いきなり恋人の家の洗濯機に下着を入れる勇気などない。
「えっと、下は……?」
下げられた視線がどこを見ているのかなんて、確認しなくてもわかる。紗夜はいたたまれなくなりながらも、「そっちはさすがに穿いてます」と小さく答えた。
ショーツはバスルームで軽く手洗いし、ドライヤーで乾かした。髪を乾かしたり荷物を拭いたりするよりも、これに一番時間がかかったと言っても過言ではない。
彼がふっと笑う。そして、紗夜のウエストラインから下に向かって撫でていき、スウェットの上からショーツの縁をたどった。
「なんだ。俺はノーパンでも大歓迎だったのに」
「吹雪さんっ!」
じとっとした目で見ると、吹雪がククッと笑う。楽しげな彼を見ていると紗夜もつられ、つい小さな笑い声を漏らしてしまった。
「なんだか力が抜けました」
「リラックスできたならよかったよ」
こつんと額をぶつけられ、笑みを零し合う。濃密になりつつある寝室の空気はそのままに、紗夜の身体を強張らせていた緊張が和らいだ。
「じゃあ、そのままリラックスしてて」
吹雪は優しく囁き、右手で紗夜の下腹部を撫でていく。服越しでもなんだか身体が熱くなっていき、思わず唇をきゅっと結んだ。
「怖くない。紗夜を気持ちよくするだけだから」
低い声音と吐息が耳朶に触れ、下腹部のあたりがむずっとする。彼は紗夜の首筋に顔を埋めると、そっとキスをした。
「やっ……くすぐったい……」
首を竦めたくても、吹雪がそこにいるせいで上手く動けない。紗夜が行き場のない手をがっちりとした肩に置くと、彼は紗夜の首にそっと舌を這わせた。
紗夜の唇から吐息が漏れ、思わず喉が仰け反る。反射的に身体が上に逃げようとしたが、吹雪の左手が紗夜の肩を抱き、もう片方の手が乳房に触れた。
豊満なそこを、やんわりと揉まれる。優しい触れ方と布越しの刺激のおかげで怖くはないが、自然と身は固くなった。
気持ちいいかと言われれば、まだよくわからない。ただ、自分以外に触ることのない場所を彼に許しているという状況に、羞恥が込み上げてきた。
「あっ……!」
優しい動きが、不意に強くなる。大きな胸を揉まれ、手のひらが先端をこすった瞬間、甘い痺れがピリッと走った。
吐息交じりの声が漏れるたび、紗夜は唇を噛もうとする。しかし、吹雪がTシャツごと突起を摘まみ、紗夜のささやかな抵抗を阻止した。
「んっ、ぁっ……やっ」
いつの間にか、左手でも胸を揉まれていた。両方の乳房と果実を捏ねられ、刺激が強くなっていく。布ごとこすられ続けていると、そこがじんじんと痺れ出した。
「服の上からでも硬くなったのがわかる。ほら」
そう言われて思わず視線を下げると、ふたつの果実がTシャツを押し上げていた。服越しでもツンと尖っているのがわかって、紗夜は顔中が熱くなる。
「やだっ……! 見ないでください……」
「ダメ。こんなに可愛いんだから、むしろ早く全部脱がせたい」
悪戯な笑みを浮かべた吹雪が、紗夜のTシャツの裾を一気に捲り上げる。紗夜が抵抗する間もなく上半身があらわになり、とうとう胸を彼の前にさらしてしまった。
吹雪がごくりと生唾を呑み、うっとりとしたように目を細める。視線はたわわな乳房に注がれたまま、大きな手がむにむにとそこを揉みしだいた。
「柔らかいだけじゃなくて、色も形も綺麗だ」
そんなこと言わないで、と言いたい。けれど、恥ずかしさと胸を直接触られている刺激で、言葉の代わりに甘えたような声ばかり零れてしまう。
すでに勃っているふたつの果実は、薄桃色から赤く色づきつつあった。そこをクリッと捏ねられ、紗夜の身体が跳ねる。
彼は気をよくしたように唇の端を持ち上げ、突起ばかりを集中的にいじくった。
「あっ、あんっ……やっ、ッ、ぁ……」
親指の腹で下から持ち上げて撫で、人差し指も加えて摘まみ、クリクリと捏ね回す。ときに先端のくぼみを爪で弾かれ、紗夜の唇からは高い声が絶えず飛び出した。
くすぐったさはもうない。じんじんと痺れるような、じくじくと疼くような……なんとも言えない感覚が押し寄せてくる。
吹雪は左手はそのままに、紗夜の胸元に顔を近づけてきた。まさか……と思うよりも早く、彼が左側の突起を舐めた。
「アッ……」
ざらりとした舌が敏感な場所をこすった瞬間、ビリッと強い痺れが走る。電流にも似た刺激に、紗夜は思わず背中を反らしていた。
右側の先端は指で、左側は舌で愛でられていく。彼は周囲に舌を這わせると、丸い実を口内に含み、ちゅぱっと吸い上げた。
「んんっ、あぁっ……やっ、ぁ」
指での愛撫でも翻弄されそうだったのに、舌や口で弄ばれるのはその比ではない。知らない感覚に襲われ続ける中、下腹部に熱が溜まっていく。
思わず膝をすり合わせると、吹雪の右手が臍のあたりをやんわりと撫でた。優しい触れ方なのに、紗夜の身体はピクピクと震えてしまう。
今度は、大きな手がスウェットのウエスト部分から侵入してきた。迷うことなく下に進まれ、紗夜は思わず太ももを閉じそうになったが、一瞬早くショーツに忍び込んでくる。
そうして長い指が柔毛をかき分け、ある一点に届いたとき。
「あんっ!」
今まで一番強い感覚が紗夜を襲い、全身がビクンッと跳ね上がった。激しい電流を流されたような刺激に戸惑い、紗夜の目が潤む。
そこばかりを上下にこすられて、吐息交じりの甘い声で啼くことしかできない。くちゅ、グチュッ……と響く水音が恥ずかしい。そんな紗夜に、彼が喜々とした笑みを浮かべた。
「すごく濡れてる。ちゃんと感じてくれてよかった」
その言葉で、紗夜はようやく気づく。今、自分が感じているのが快楽なのだ……と。
処女で、自分で触った経験もあまりない。興味本位でひとり遊びをしたことはあるが、違和感ばかりが強くてすぐにやめた。
たぶん、自分は性欲があまりないのだろうと思っていた。快感もよくわからず、いつしか興味も薄れた。
それが一転……。知らない感覚なのに気持ちいいのだと自覚した途端、身体はもっと欲していることに気づいてしまう。
「ふぶき、さっ……!」
恥ずかしいのに嬌声は止まらず、未知の状況は怖いのにやめてほしくない。ただ、困惑も大きくて、思わず吹雪の首にしがみついてしまった。
彼がゴクッと喉を鳴らす。直後、敏感な芽をいじる指が速度を増した。
上下だけだった動きに左右も加わり、まるで捏ね回すようにいじくられる。喜悦はどんどん大きくなって、身体の中でなにかが弾けてしまいそうだった。
「やっ、やぁっ……ダメッ……! まって……」
これまでとは比べ物にならない波が押し寄せ、紗夜は怖くなって必死に首を横に振る。吹雪は紗夜のこめかみにくちづけると、「大丈夫だから」と囁いた。