「余計なことを考えられないくらい、めちゃくちゃにしたい」
アパレルメーカーに勤める沙耶は、仕事で行ったパーティーで、取引先の会社の御曹司・千璃に一目惚れされ交際を申し込まれる。恋愛初心者の沙耶は突然のことにとまどいつつも承諾したが、実は千璃も本気の恋は初めてで…!? 溺愛が止まらない距離感バグり気味の彼に、沙耶はうろたえながらも、与えられる甘い快感にやがて身体も心も包まれてしまい――。
「抱きたい」
直接的な欲求に、沙耶は降参した。千璃の声と熱に絡め取られたかのように、動けない。いくら理性を口にしても、沙耶の体は千璃を拒絶しない。
「……お風呂、入らせてくれるなら……」
「わかった。一緒に入ろう」
「どうしてそうなるの」
一緒に入る必要はないと思った沙耶の二の腕をつうっと撫で、千璃はやわらかくも欲の籠もった声で告げた。
「早く沙耶に挿入りたい」
その指先が醸し出す快感に、沙耶は逆らえなかった。
服を着たままラウンド型の黒い大理石のバスタブの縁に座り、シャワーを浴びてキスを繰り返す。息苦しくて、沙耶は千璃から逃れるように身を捩った。
ミスト状のシャワーはしっとりと体を濡らし、濡れた服が張りついている。その上から、千璃の指が体の線をなぞった。
ざっくりと首元が開いたニットは、防御力が弱い。首筋に、千璃が何度も口づけてくる。いつもは少し冷たい唇が、今は沙耶の体温と殆ど変わらない。触れられる度、体が震えるのを抑えられない。
固定されたシャワーヘッドから降り注ぐ温かい湯が、水滴になって肌の上を滑っていく。それを追うように、千璃の唇が沙耶の体に所かまわず口づけてくる。
薄く開いた唇に指を含まされ、口内を撫でられる。ゆるゆる動かされると、快感と違和感が綯い交ぜになった不思議な感覚に囚われた。千璃は沙耶の唇や耳元にキスを繰り返しながら、口内を犯す指を二本に増やした。
「……ん」
「苦しい?」
問いかけに首を横に振ったら、千璃の目が満足そうに細められた。そのまま沙耶の頬にキスして、千璃は指で口内を嬲りながら、空いた手でスカートの留め具を外した。湯で重くなったスカートが床の上に落ち、沙耶の脚を拘束する。
「こんなの着けてたんだ?」
「……っ」
露わになったガーターベルトをつつかれ、沙耶はかあっと赤面した。ストッキングより風通しがいいので使っていたが、改めて指摘されると恥ずかしい。
「知ってた? 俺は沙耶の脚がすごく好きなんだ」
愉しげに含み笑いして、千璃の手が太腿を這う。ガーターストッキングの上からでもわかるほど、愛おしげに撫でている。
「ぞくぞくする」
囁いて、千璃は沙耶の口から指を引き抜いた。そのままガーターストッキングのレース部分に指先を引っかけたかと思うと、ぴりっと小さな音がして、繊細な生地が引き裂かれていく。
「だめ……っ」
左のストッキングを破られ、沙耶は両脚を閉じた。が、千璃が強引にそれを割る。
「ヤバい。もう、挿入たみたいに気持ちいい」
ぐっと両脚を開くと、千璃は今度は右の太腿を愛撫する。気持ちよさと不安が相乗効果になって、沙耶の感覚を淫らに刺激している。
「無駄な肉はないのにやわらかくて、細すぎなくて。脚タレ出来るだろうけど、させたくない。他の男に見せたくない」
千璃が沙耶の体を壁に押しつけ、右脚を大切そうに包む。丁寧にガーターストッキングを脱がせて、素肌の感触を楽しむように撫でる。
「もう、や……っ、脚ばっかり……!」
沙耶は体をくの字に折って、両の太腿にキスしている千璃の髪を掴んだ。そっと引き離そうにも、力では敵わない。
「そうだな、程々にしないと保たない」
嘯いて、千璃は沙耶の脚の付け根にキスをした。秘部に触れるギリギリのところに赤い痕を残され、沙耶は羞恥で目を閉じた。
その隙に、ニットの裾から忍び込んできた手が、ゆっくりと乳房を持ち上げる。やわく揉みながら持ち上げられると、薄らとした快感に包まれた。
「ん……っ」
「沙耶は、どこも綺麗で可愛い」
ふにふにと乳房を揉み、下着越しに先端を擦って、千璃が囁く。悪戯な指先がきゅっと先端を摘まむ度、もどかしい刺激に体がくねる。
「や、くすぐった……」
「くすぐったいだけ?」
そう笑いながら、千璃は沙耶の体を支えてニットを脱がせた。下着姿になった沙耶の鎖骨に唇を這わせ、窪みを舐めるように味わっている。
ブラの肩紐をずらし、零れた乳房をやわやわと愛撫する。同時に首から肩のラインを舌で辿る動きに、沙耶は軽く仰け反った。顔に当たるシャワーの湯が少し温く感じるほど、体が高揚している。
沙耶の乳房に触れていた手が背中に廻され、ブラのホックが外される。千璃は器用に沙耶の腕を抜かせて、露わになった胸を強く掴んだ。
ん、と声を噛んだ沙耶の喉に触れた唇が、少しずつ肌を滑り落ちていく。同時に、乳房を甘やかに揉まれる。大きな手と長い指が淫らな愛撫を施し、沙耶の呼吸と思考を乱す。
立ち上る熱気に逆上せそうだと思いながら、沙耶は千璃の頭をかき抱いた。
硬くなった先端を千璃が口に含み、舌先で転がしながら舐る。吸い上げるようにつつかれて、快感で体が震えた。ぎゅっと彼の頭を抱き締めたが、千璃は意に介さず沙耶の肌を嬲った。
背骨をなぞるように指先が遊び、流れ落ちる水滴ごと肌を舐める。触れる舌の熱さとやわらかさに、沙耶は必死で声を殺した。
「沙耶」
甘く、それでいて欲に濡れた声が沙耶を呼ぶ。返事をしようとした唇に、また指が差し込まれた。
「ふ、あ……っ」
くすぐったいような息苦しいような曖昧な感覚のまま、沙耶は素直に指を咥えた。口内を撫でる指の動きは優しい。触れられる度にぴりぴりとした快感が走り、夢中になって舌を絡めた。
「いやらしいくせに可愛いって、君は本当に狡い」
千璃の声が耳をくすぐり、乳房に刺激が走る。ちゅっと吸い上げられた部分が、じんわりと熱を帯びた。
「座って」
沙耶が浴室の床の上にぺたりと座り込むと、千璃は指を唇から抜き取り、ショーツをずらして秘花に触れた。水とは違うぬめりのある感覚が、沙耶の体内から零れる。
「ん……!」
花片を割り拓きながら指が押し込まれ、くちくちと抽送される。ぼうっとしてきた頭を千璃の肩に預けたら、彼の指が花芽の上で意地悪く蠢いた。思わず零れかけた声を、咄嗟に唇を噛んで堪える。
「血が出る。噛むなら、俺にして」
ほら、とまた指を咥えさせられ、沙耶はむずかるように首を振った。が、その度に口内を気持ちよく弄ばれ、蜜路の入り口を擦られる。
「あ、ん……っあ……!」
沙耶の嬌声に、千璃は嬉しそうに笑う。
「その声だけでイケそう」
甘い毒のような声で囁きながら、上も下も抽送される。声を抑えたいのに、快楽が羞恥を上回る。
「ん……んぁ、あん……っ」
口内にある千璃の指を噛むことは出来なくて、沙耶は快楽の声を零した。甘えるように鼻にかかった声は、自分でも信じられないほど淫らだった。
千璃がシャワーを止めると、沙耶の花芯を抜き差しする蜜音が耳を打つ。恥ずかしくて泣きそうになった時、不意に指が引き抜かれた。戸惑う沙耶の体を、千璃は力強く抱き上げる。
「え……?」
「ここだと、口でしてあげられない」
千璃の手が沙耶の脇の下と膝裏に廻されて、沙耶は不安定な体勢のまま彼にしがみついた。
リビングのデイベッドにそっと横たえられた沙耶は、すぐ近くにある窓から夜景が見えることに怯えた。
「や、千璃さ……」
「大丈夫。外からは見えないようになってる」
沙耶の下半身に残っていたガーターベルトとショーツを剥ぎ取ると、千璃は床に膝をついて脚を拡げさせる。千璃以外見たことがない桜色の花を拓かせ、濡れた秘花に顔を寄せた。
「あ……っあ、ん……!」
浴室での愛撫ですっかり硬く凝っている花芽を弄り、指先でくるくる円を描く。その度に沙耶の体が跳ね、デイベッドのスプリングが軋んだ。
「だめ、あ……ん!」
沙耶が弱々しく拒絶すると、千璃は淫核をかぷりと食べた。貫くような快感に、沙耶は声も出ない。
「どうして駄目? 気持ちよくない?」
「や、ぁん、ん……っ」
千璃が嬲るように言葉を紡ぐと、そのささやかな動きが淫らな愛撫になる。舌と歯が異なる刺激を与えてくるから、沙耶は震えを押さえるように自分の体を抱き締めた。
「沙耶。ほんとに嫌? 嫌ならやめるから」
本音を晒せと誘う声も、その唇の動きも、何もかもが沙耶の快感を煽る。千璃の存在そのものが、沙耶の性感帯になったように気持ちいい。その指がくすぐる肌も、注ぎ込まれる声も、掠める髪一本すら快感に繋がってしまう。
「だめ、きもち、いい……っ」
「どっち?」
問いかけながら、千璃の舌が花芽をつつく。次いで甘噛みされ、沙耶の腰が揺れた。
「ん、だめ、きもちよすぎ……だめ……!」
「でも、今やめたら、沙耶、イケないけど」
「────!」
濡れて過敏な部分に息を吹きかけられ、沙耶は身悶えした。気持ちいい、けれどずっと続いたらおかしくなりそうだ。
「て、かげん……して」
「沙耶?」
名前を呼ばれるだけで、達してしまいそうだ。本当に、加減してもらわないと、沙耶の体が造りかえられてしまう。
「俺は、優しくしてるよ?」
「まだ、ついてけな……ん、やぁ、それだめ……!」
蜜壺を抽送しながら花芽を擦られ、沙耶は蕩けきった声を零した。
「これ、嫌い?」
そんなことを問いかけるくせに、千璃は答えを確信したように沙耶の秘花への愛撫を続ける。くすぐったり擦ったり、時に乱暴に嬲る。その度に沙耶の唇からは甘い声が漏れ、蜜路からは愛液が溢れ出る。
淫核を舌先で弄られると、どうしようもなく体が乱れた。熱を持て余して千璃を見つめ、沙耶は泣きそうになるのを堪えている。
「我慢してる顔も可愛い」
笑みを含んだ声で囁き、千璃は指の抽送を速める。深さを変えながら抜き差しされ、浅いところをくすぐった後に深い部分をぐりぐりと擦られ、沙耶は高い声で啼いた。
「ん、っ……あ、ぁ……っ」
「中もやわらかくなってきた。吸いついてくる」
淫らに蠢く内襞を刺激し、千璃は満足そうに呟いた。そう言われた瞬間、体が反応して千璃の指をきゅっと締めつける。
「沙耶は、体も素直だ」
「あ、ん……っ」
くちくちと入り口の部分を愛撫され、沙耶の意識は蕩けていく。ぼうっとしてきて、千璃が与える快感と熱に溺れそうになってしまう。
そんな様子に気づいたらしく、千璃は殊更ゆっくりと、やわらかな刺激を与えてくる。とろとろと溢れる蜜を啜り、舌を蜜路に差し入れた。指とは違った、熱くねっとりした感触に体が震える。
巧みな舌遣いで沙耶の秘花を荒らしながら、花芽を指先で爪弾く。痛みを与えないギリギリの強さで触れられる度、沙耶の体が熱くなり、思考がぼんやりする。
「あ、ん、ん……っ、ぁんっ……」
体に力が入らず、与えられる愛撫に溶かされていく。唇から零れる甘えた声が煩わしいのに、後から後から溢れてくる。
秘花を暴いていた指が、ぷっくりと膨らんだ花芽を摘まむ。くりくりと擦るように動く指に翻弄されながら、沙耶の体は快感を受け止める。
「あ、それ、だめ……っ」
沙耶が啼くと、千璃は蜜路から舌を引き抜いた。そして、蜜を塗り込めるように花芽を口に含んだ。
「──っ!」
かり、と扱くように歯を立てられた瞬間、沙耶の意識が飛んだ。白とも赤ともつかない、強烈な何かに感覚を灼かれる。
千璃の喉がごくりと鳴り、沙耶の脚を持ち上げて開かせる。いつの間にか用意していたらしい避妊具を着けたそれは、千璃の秀麗な顔とは似つかないほど生々しく見える。
先日初めて肌を重ねたものの、あんな大きなものが自分の中に挿入るのが信じられない。思わず手を伸ばして、それに触れた。
「沙耶?」
「……熱い」
熱くて硬いそれは、先端が丸みを帯びている。張り出した部分と太い幹を撫でると、千璃が息を呑んだ。
「沙耶。焦らしながら煽るのはやめてくれ」
え、と問い返す暇もなく、デイベッドの上に仰向けに固定される。そのまま、千璃は沙耶の秘花に侵入を開始した。
「ん……っ」
先端が沈んでいく時、痛みはないものの異物感はある。同時に、快感が押し寄せてくる。 ずぶずぶと挿入り込んでくる熱の塊に、沙耶の感覚も引きずられていく。足りない部分が埋められたようにぴたりと収まったそれに、沙耶の媚肉が妖しく蠕動し始めた。自分の体内が蠢くのがわかって、沙耶は両手で顔を覆った。
が、千璃がその手を引き剥がし、頭上で縫い止めた。
「沙耶はすぐ隠そうとする」
仄かに眦を赤く染めた千璃は、不満げに囁いた。
「だ、って……恥ずかし……」
「どうして恥ずかしいんだ。可愛いのに。俺は、全部見たい」