「しょうがないだろ、諦められないんだから」
美人で優秀な姉と彼女を優遇する母の影響で、自己評価の低い咲弓は、仕事で訪れたアメリカで外交官の聖凪と出会う。彼は気づいていないが、聖凪は咲弓の初恋の相手だった。姉に恋人を奪われヤケになっていた咲弓は、名前を偽り聖凪と一夜を共にし、彼の前から姿を消す。でも聖凪は職場のカフェに現れ、猛アプローチを仕掛けてきて…!?
「可愛いな、口を開けて」
言われるままに口を開くと、隙間に肉厚な舌が挿入ってくる。上顎をチロチロと舌先でくすぐられ、そこから痺れが全身に伝う。お腹の奥がジンジンする。
聖凪くんの舌の動きに導かれるように、私も自ら舌を絡めていく。甘ったるくて媚薬みたいだ。ピチャッと水音を立てながら、お互いの唾液と吐息を混ぜ合った。
息が苦しくなった頃、聖凪くんが私の耳に口づけた。耳朶を舐めたり甘噛みしたりを繰り返す。同時に彼の片手が胸へと伸びた。大きな手のひらで膨らみを包み込み、肌に指を沈めてやわやわと揉みしだく。合間に二本指で先端の突起をクニクニと捏ねられると、触れられていない子宮がキュンと収縮するのがわかった。
「やっ……ん……っ」
「乳房よりも乳首のほうがいい? これは?」
「あんっ! やぁっ」
先端を爪で引っ掻かれ、身体をビクンと跳ねさせた。
「これも好きなんだね」
聖凪くんは満足げに頷いて、胸に勢いよくむしゃぶりついてきた。右手で胸を揉んだり持ち上げたりを繰り返しつつ、左手で片胸を鷲掴む。乳首を甘噛みしたり、赤ちゃんみたいに吸い上げてみたり、私の反応をたしかめながら様々な刺激を与えてくる。
「やっ、もう……駄目っ」
さっきから下半身が疼いて仕方がない。太腿を擦り合わせてもじもじしていたら、目ざとく気づいた聖凪くんが嬉しげに目を細める。
「まだ触ってもいないのに感じてるの?」
彼が上体を起こして脚のあいだに座り込む。
「脚を開いてごらん」
「えっ?」
「見せて。咲弓のすべてを見たいし知りたいんだ。どこでどんなふうに感じるのか、何をしたら一番可愛く啼くのか、快がるのか。俺は咲弓を最高に気持ちよくしたいから」
――快が……っ!
そうか、聖凪くんが言っていた『咲弓の全部を見たい』は、反応も含めて『全部』なんだ。さっきから一つ一つ丁寧にたしかめて、私を知ろうとしてくれている。
――そんなの……私だって聖凪くんのことを喜ばせたいし知りたいよ。
私は覚悟を決めると、両手で太腿を持ち上げてそろりと股を開く。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。けれど聖凪くんは「もっと見せて」とさらに彼の手で脚を押し開く。パックリと開いたソコを凝視して、「桜色だ」と呟いた。
「自分で弄ったりしていないの?」
「そんなこと、しないよ……」
「そうか、それじゃあ、ここに触れるのも舐めるのも俺だけなんだな」
声に歓喜を滲ませながら、秘部に口を寄せていく。生温かい息を感じた直後、中心線を下から上へとゆっくりと舐め上げてきた。強い刺激に腰が跳ねる。
「きゃあっ!」
慌てて膝を閉じようとするも、強い腕力で阻まれる。
「入り口がヒクヒクしているね。エッチな液が溢れてきた」
「嫌だ、恥ずかしいから言わないで」
「ふっ、これからもっと恥ずかしいことをいっぱいするのに」
言うが早いか聖凪くんが蜜口に舌を捻じ込んできた。狭い入り口をほぐすかのように、ナカで舌先をチロチロと動かしたり掻き混ぜたりを繰り返す。ときおり愛液を啜られると、ジュルッと大きな水音がした。
彼は舌と唇で蜜壺を虐めつつ、右手の指に愛液をまとって小さな粒をクルクルと撫で始める。ビリッと刺激が走って悲鳴が上がる。
「やっ、やだっ、駄目っ!」
腰を捻って逃れようとするも、聖凪くんの顔に阻まれ敵わない。そのあいだにも彼の指は速度を増していき、高速で擦られた花芯がどんどん熱く痺れていく。
「ああっ、あんっ、強い……っ!」
こんな行為は初めてだ。いや、もしかしたら一年半前にもこうされたのかもしれない。無我夢中でわからない、もう考えられない。
どんどん高まる快感が、私から思考能力を奪っていく。
辛い、苦しい、気持ちいい。
けれどそのうち子宮の疼きが強くなり、『気持ちいい』だけが残った。
「あっ……ふっ、いい……っ」
「咲弓、気持ちいいの? 腰が揺れてる」
「ん……気持ちいい。あっ、あんっ」
「クリがぷっくりしてきた。一度イこうか」
不意に蜜口から舌が引き抜かれた。ナカから熱が引いたと思ったその直後、今度は二本指が差し込まれる。
――あっ!
彼の長くて細い指が舌では届かなかった敏感なところを擦る。同時に生温かい舌が蕾を揺らし始めた。弱火でトロトロと煮込まれるように身体の奥がほぐされて、熱く柔らかく変わっていく。ポジションを変えての執拗な攻撃で、快感がピークを迎えた。
「あっ、あっ、いいっ、気持ちいい、あ……っ、あ……」
蕾をつねられたその直後、猛烈な熱さと快楽が私を包み、目の前がパッと白くなる。
「やっ、ああーーっ!」
私は胸を弓反りにしながら嬌声を上げると、一年半ぶりの絶頂を迎えたのだった。
聖凪くんが離れたあとも全身に痺れが残っている。
エクスタシー後の脱力感にぐったりとしていると、聖凪くんが私の頭の両側に手をついて顔を覗き込んできた。
「大丈夫?」
「うん……なんだかすごすぎて……目の前が真っ白になった」
「疲れた?」
「疲れたけど……どうして?」
「無理はさせたくないから。咲弓にもちゃんと気持ちよくなってほしいし、最高の思い出にしたいんだ。今度こそ」
やけに私の体調を気にかけてくれると思ったら、そんなことを気にしていたのか。
私は聖凪くんの首に両腕をまわし、彼の頭を引き寄せる。ぶつけるようにキスをして、「私だって聖凪くんとシたいよ。二人で一緒に気持ちよくなりたい」と彼を見つめた。
「聖凪……〝二度目〟の〝初めての夜〟を、最後までシよ?」
私の呼びかけに彼がハッと息を呑んだのがわかった。
「……咲弓……もう一度名前を呼んで」
「聖凪、大好き、小二のあのときからずっと好きだったの。お願いだから……来て」
彼の瞳がゆらりと揺れて、「ああ」と短く頷いた。サイドテーブルに手を伸ばして避妊具のパッケージを開封した。
「……挿れるよ」
脚を大きく開き、中心に彼の先端をあてがわれる。その直後、熱杭が身体の中心を貫いた。
「ああーーっ!」
熱の塊はあっという間に最奥に到達し、ズンと勢いよく突き上げる。下腹部いっぱいを占める圧迫感に顔をしかめていると、聖凪がそのまま動きを止める。
「咲弓、ゆっくり動くから、深呼吸して」
言われるままに大きく息を吸って吐くを繰り返すと、私の呼吸に合わせるように彼が小刻みに腰を揺らし始める。
隘路いっぱいを占める漲りが内壁を擦りながら、心地よい振動を与えていく。最初にあった異物感が甘い疼きに変わり、快感の波が湧いてきた。
「あっ、いい……っ」
私の喘ぎ声の大きさに比例するように、聖凪の腰使いも大胆になっていく。大きくナカを掻き混ぜながらグッ、グッと最奥を押されると、そのたびに身体を跳ねさせ嬌声を上げてしまう。
「ああっ、いいっ、気持ちいいっ! またイっちゃう……っ」
ゆっくりと繰り返し与えられる強い刺激に耐えられず、腰をブルッと震わせて軽く達してしまった。
「聖凪、イっちゃった」
「ああ、ギュッとすぼまったから、そうだとわかった。でも、もう少しだけ付き合って」
「えっ?」
いきなり膝裏から脚を持ち上げられたかと思うと、折り畳むようにして大きく開かれる。腰が宙に浮いて、私のほうからも蜜壺に半分だけ刺さっている赤黒い彼の漲りが見えた。
恥ずかしくて目が泳ぐ。
「俺たちが繋がっているところが見える? 咲弓が俺を咥え込んで、ギュウギュウ締め付けてる」
私に見せつけるかのように、腰を大胆に引いたり押したりを繰り返す。そのたびに彼の分身がグチュグチュと水音を立てながら私のナカに出入りするのが見えた。
達したばかりのナカは敏感で、スピードはゆっくりなのに、抜き差しされるたびに悶えるほどの快感が私を襲う。
「もう駄目っ、本当に……イった、からぁ! もう変になっちゃう!」
「いいよ、もっと変に……なって!」
聖凪が出口ギリギリまで腰を引いたと思うと、今度は勢いをつけて腰をぶつけてきた。バチン! と恥骨がぶつかる音がする。
それを合図に聖凪が抽送を速くした。フィニッシュとばかりに私の脚を抱えてひたすら腰を振り続ける。
「ああっ、すごい!」
「……っは、気持ちいい……俺のためにあつらえたみたいに、ぴったり吸い付いてくる。二十年間お互いに想い続けていて、身体の相性までいいとか……っ、こんなの、どう考えたって運命でしかないだろ……っ」
――私の運命。
あの日、勇気を出して彼に抱かれてよかった。彼が私を諦めずに追いかけてきてくれてよかった。そして今、再び彼に抱かれることができてよかった。
「ああっ! 聖凪……っ、すごいっ、もう……っ」
救いを求めるように目の前の聖凪を引き寄せ抱きついた。背中に手をまわしてキツく抱きしめると、ピタリとくっついた肌から二人の鼓動が響いてくる。ドッ、ドッ、と響く心音が重なって、私たちが一つになったのだと知らせてくれた。
「聖凪、早く、一緒に……」
「聞こえない。咲弓、もっとハッキリ言って」
「聖凪……っ、好きっ。一緒に……いこ?」
「……っ、咲弓っ、咲弓……っ、ずっとこうしたかった」
――私だって……。
「愛してる、諦めないでいてくれて、ありがとう」
「咲弓……」
私を見下ろす彼の瞳が潤んでいる。長いまつ毛がパサリと閉じて一つ瞬きした途端、透明な雫が私の頬に落ちた。
「咲弓、愛してる」
左鎖骨のホクロに口づけられたその瞬間、彼の分身が私のナカで大きく跳ねる。じわりと熱が伝わって、彼が精を放ったのがわかった。