大企業を継ぐエリート御曹司×夢に向かって頑張るヒロイン
カフェ開業が夢の真梨香は、不定期に夜だけ開くパフェ店に魅せられ、会社員の傍らアルバイトを始める。モデル並みの容姿の店長の要は、何と真梨香の勤め先の御曹司だった。出会って以来、包み込むように寄り添ってくれる要だけど、初恋の思い出に嫉妬した彼に告白され!? 惹かれつつも自分は釣り合わないと思う真梨香を、要は甘く解きほぐしていき…。
「店長に聞きたいことがあるんですが」
「名前で呼んでくれると嬉しい。俺もそうする」
「……要さん」
「なに? 真梨香。なんでも聞いて」
名前で呼び合う感覚になれず、なんだかくすぐったい。
「私のどこを好きになってくれたんですか」
要の気持ちを疑うわけではないが、自分が彼に好かれる資格があるのか、まだいまいち自信が持てずにいた。
「全部」
「全部、禁止です」
本当なんだけどなあと、要は困った顔をして頬を掻いた。
「ボリュームのあるうちのパフェをぺろりとふたつ食べて平気な顔をしてたところとか、その何時間かあとに雇ってくださいって突撃してきた度胸とか、かといって面白いから雇ってみればずうずうしいどころか謙虚で頑張り屋なところとか、夢に向かってまっすぐなところとか。あと、顔」
「顔!?」
ごくごく平凡な顔立ちだと自負している真梨香の顔を間近から見て、要はとろけそうな表情をしている。
「ころころ表情が変わって可愛いし、裏表がないのがわかるから安心する」
「あ、そういう」
造作が整っているという話ではなく、愛嬌があるという意味らしい。そういうことなら素直に受け止められる。
「真梨香も俺の顔好きだよね」
「えっ」
「いま見とれてるなってわかるときがある。たぶん自惚れじゃないと思う」
真梨香は床に視線を落とした。要の顔がまともに見られない。彼の言うとおり、しばしば見とれていたからだ。真剣にパフェを作っている横顔も、忍とじゃれあって笑っている顔も、なんなら『モラトリアム』から出るときのちょっと眠たそうな顔まで、あまりにかっこよくて視線が引き寄せられてしまっていたのはバレバレだったらしい。
「自惚れ……じゃ、ないです……すみません」
「なんで謝るの。嬉しいよ」
要が謙遜しないのは、きっとこれまでの人生でさんざん容姿を褒められてきたからだろう。
「だって私、なんだかすごい面食いみたいじゃないですか」
「そんなにかっこいいと思ってもらえてるなんて光栄だな」
フフフと嬉しそうに笑って要が真梨香を抱き締めてきた。
「それに、容姿だけで好きになってもらえたとは思ってないよ。十代ならともかく、二十歳を越したら性格やら生き様がどうやったって顔に出るからね。中身も全部好きになってくれたんだと思ってる。違う?」
「……違いません」
真梨香の答えに満足したらしく、要は機嫌よさげに真梨香の体を横抱きにした。
「きゃっ」
不安定な体勢が怖くて、要の首に腕を回し、しがみつく。
そのまま連れていかれた先は、リビングの隣の寝室にある大きなベッドの上だった。
「あ……」
真っ白いシーツの上に優しく下ろされ、靴を脱がされる。
要が首元に手をやり、ネクタイを緩めながら真梨香の上にのしかかってくる。おとなしく寝かされている真梨香の頭の両脇に手を突いてじっと目を見つめてきた。
真梨香は目を逸らさなかった。
微笑みを浮かべた要の顔が下りてきて、唇が重なった。要との、二度目のキスだった。
「ん……」
厚みのある要の唇が、遊ぶように真梨香の薄い上唇を食んでくる。
穏やかなキスだが、この先のことをどうしても考えてしまい、心臓がうるさいくらい強く拍動する。
何度も角度を変えて唇を押し付けられる。ゆっくりとした動作に余裕を感じ、自分だけがこんなにドキドキしているのかと思ったが、胸と胸がくっついたとき要の心臓の鼓動もかなり速いのを感じてホッとした。
「真梨香……」
熱い舌が、歯列を割って内側に入ってくる。
「んんっ」
真梨香の鼻先から、くぐもった声が漏れた。
恐る恐る真梨香の方からも舌を伸ばすと、すぐさま絡め取られた。
ちゅくちゅくと、いやらしい音が脳まで響く。
いつのまにか全身が密着していて、要の重みと温かさを感じていた。
半分酸欠のようになって、頭がぼうっとしてくる。シーツに沈んでいる体はまるで自分のものじゃないみたいにまともに動かせない。キスだけでこんなふうになっていたら、この先自分はどうなってしまうのだろう。
キスを続けたまま、頭の横に置かれていた要の右手がシャツの裾からもぐりこんできた。直接素肌を撫でられ真梨香は、は、と熱い息を吐いた。全身が敏感になっているのがわかる。
温かくて大きな手はお腹に触れ、脇腹を撫でて上にあがってくる。体をよじりたいようなむずむずした感覚がこみ上げてきた。太い指の動きひとつひとつを敏感に拾ってしまい、変な声が出そうになる。
そしてブラジャーの上から、包み込むように乳房に触れられた瞬間。
「あっ」
顔を横に向け、上擦った大きな声をあげてしまった。
恥ずかしい。しかし要は、少し驚いた顔をみせたあとで、嬉しそうに口元を綻ばせた。
「もっとちゃんと触らせて」
いったん上体を起こし、シャツのボタンをプチプチと外された。体の下になっていたコートとシャツをはぎ取られ、ストッキングも脱がされて、真梨香は下着とスカートだけの姿になった。
脱がせたものをベッドのすぐ脇にあるソファに置き、要が半裸の真梨香をうっとりとした顔で見下ろしてくる。
彼の方はネクタイを少し緩めただけで、自分だけがあられもない格好をしていると思うといたたまれない気分になる。かといって「あなたも脱いで」などと言えるわけもなく、真梨香は涙目になって両腕で自分の上半身を抱いた。
顔もだが、体にもあまり自信はない。太っても痩せてもいない標準体型ではあるけれど、もうちょっと凹凸があればいいのにと常日頃思っている。
「綺麗だ、真梨香」
要は少しでも体を隠そうとしている真梨香の手をあっさり剥がし、胸の谷間に唇を落としてきた。
ブラジャーがずらされ、その下に隠れていた乳房がまろびでる。とても見ていられず、真梨香はぎゅっと目をつぶった。
要の手は止まらない。左右の乳房を寄せ集めるようにして愛撫しつつ、たまに指先でツンと勃った乳首を掠めてくる。
「あ、あんっ、んっ……ああっ」
真梨香は自分に施される愛撫を受け止めながら、切なく喘いだ。抑えようとしても声が抑えられない。微弱な電流でも流されているみたいに、体がピクピクと反応してしまう。
「真梨香、可愛い」
右の乳房の上の方に、ちゅうっと強めに吸いつかれる。目を開けてみると、赤いあとがついていた。まるで彼のものだという印をつけられたみたいだ。
要の手が背中にまわってきたかと思うと、ブラジャーのホックをぷつりと外される。中途半端にまとわりついていたブラジャーを取られ、上半身に身に着けていたものはなにもなくなった。
「寒くない?」
「は、はい」
恥ずかしさが先にたって、部屋の温度を気にする余裕はない。
長いこと恋人がいない生活をしていたので、こういうときどうふるまえばいいのかわからず、身を任せているだけで精一杯だ。
じっ、と観察するような目で要がこちらを見てくる。右手が乳房から離れ、スカートのなかに入ってきた。
「あっ……」
太ももやその付け根のきわどい部分を触られ、その合間にも乳房の頂点を口のなかで転がされて背筋がぞくぞくする。
真梨香は気持ちがよくてじっとしていられなくなり、膝と膝を擦り合わせた。そうすると、自分の中心部がぬるりとして、濡れているのがわかってしまい顔が熱くなる。
要の手が、真梨香の一番恥ずかしい部分に伸びてくる。
「あっ、だめ!」
「え? あ……」
ショーツの上から割れ目に触れた指が止まった。
「すごい濡れてる……」
「い、言わないでください……」
「どうして? こんなに感じてくれて、俺は嬉しいよ」
「私は恥ずかしいんですっ、あ、ああっ」
ショーツ越しに割れ目をなぞられ、腰が跳ねる。
要の指一本でこんなに反応してしまう自分が恥ずかしくてたまらないのに、どうしようもなく感じてしまう。
真梨香の敏感な反応に気をよくしたのか、要はクロッチの脇から指をねじ込んできて、割れ目に直接触れてきた。
「──あっ!」
背中をのけぞらせて固まってしまった真梨香の太ももの間から、くちゅくちゅといやらしい水音がする。
体が一気に熱くなった。
いつも繊細なパフェを盛り付けている器用な指先が、自分の一番大事なところを行き来している。羞恥と快感でめまいがした。
要の愛撫は巧みで、一番弱いところを的確に刺激してくる。ときどき、耳を舐められたりこめかみの近くに唇を押し当てられたりもする。
熱い息が首筋にかかり、要が興奮していると伝わってくると、なおさら感じた。
「あっ、か、要さん……っ」
「なに」
要の声は少し掠れていた。
「イ、イキそうっ」
「いいよ、イクとこ見せて」
耳元でささやかれ、きゅうっと太ももに力が入った。
要の指は一定のリズムで割れ目のなかをなぞっている。
抗えない快楽の大波にさらわれそうになり、真梨香は要の背にしがみついた。
「あ、ぁ……!」
快感がつま先から頭まで駆け抜け、真梨香は全身を震わせて絶頂に達した。
目を閉じ、長く続く余韻に浸る。あまりに気持ちがよくてふわふわと体が浮いているようだった。
少し呼吸が落ち着いてからまぶたを開くと、要が至近距離から真梨香の顔をじっと見つめていてぎょっとした。本当にイクところを見られていたようだ。
じわじわと恥ずかしくなり、真梨香は要から目を逸らした。
自分はいったいどんな顔をしてしまっていたのだろう。いまさらだが、もっと部屋を暗くしておけばよかった。
「なんで見るんですか……」
「見たかったから。すごい可愛かった」
嘘だ。全然取り繕う余裕なんてなかったからきっとひどい顔をしていたはずだ、と思ったのだが、太ももに要の硬くなったものをごりっと押し当てられ、反論できなくなる。
「俺もう限界」
短く言って、要は真梨香のスカートとショーツを手際よく脚から引き抜いた。ついに全裸になってしまった真梨香を満足げに見下ろし、熱い息を吐く。
真梨香とは対照的にほとんど着衣を乱していなかった要が、邪魔だと言わんばかりに乱暴な手つきで自分の着ているものをはぎ取っていく。
初めて見る要の体は、無駄な肉が一切なく、ほどよく鍛えられていた。かっこいいひとは脱いでもかっこいいんだなと、つい見とれてしまう。しかし要の手がベルトを外しにかかったところで、さすがに見ていられなくなり、顔を逸らした。
カチャカチャとバックルを外す音がする。続いてスラックスを下ろしているだろう音。
いよいよかと思うと、胸が痛むくらい緊張してきた。
すべて脱ぎ終わった要が太ももの間に入ってきた。
「あ……」
ちらっと見てしまった彼のものは力強く上を向いていて、いつのまにかコンドームが装着されていた。
「入れるよ、真梨香」
濡れた声で名前を呼ばれ、両膝の裏をぐっと持ち上げられた。蜜液の溢れる入り口に、硬いものの先端を擦り付けられる。
要はじれったいくらいゆっくりと入ってきた。
狭い穴をあやすように、少し入ってきては抜き、もう少し奥に入ってきては抜いている。
「あ、あぁ……」
真梨香はシーツを掴み、挿入される感覚に耐えた。