「“運命の番”と出会ってしまった以上、他のアルファを番にすることなど不可能なんだ」
小清水家の四女・麻央は、弁護士として成功を収めるアルファの梓規と出会い、互いに惹かれ合う。しかし〝女神胎〟という特別なオメガを輩出する一族の次期当主となった麻央は、家のために政略結婚することが決まっていた。さらに両家の間に浅からぬ因縁があることが分かるも、麻央を諦めきれない梓規は、あらゆる手を使い彼女を手に入れようとし…!?
(……やだ、もう濡れてるのに……!)
まだキスしかされていないのに、もうそこが潤んでいるのを、麻央は本能で悟っていた。
発情期を起こしたオメガの身体が、番に触れられて準備を整えないはずがない。
それが分かっていても、恥ずかしくて顔が真っ赤になっていく。
「大丈夫、怖くない。私に触れさせて」
梓規の穏やかな優しい声がする。
番の優しい命令に、麻央の身体が自然と力を抜いてしまう。
(……ああ、ダメなのに……。梓規さんを、拒まなくちゃいけないのに……)
泣きたい気持ちでそう思う傍らで、それをせせら笑う自分もいる。
――嬉しいくせに。本当は拒みたくなんてないんでしょう?
(……そうだよ。拒みたくなんてない。当たり前じゃない。この人は、私の唯一無二なんだから……!)
番であるアルファの手や声を喜んで受け入れて何が悪い。
梓規の指が、ショーツの上を撫で、敏感な突起を見つけると、そこを爪で引っ掻いた。
「んぁっ」
びっくりするような快感に襲われ、麻央が小さく悲鳴を上げる。
その声に、梓規が嬉しそうに笑った。
「ああ……いいね。可愛い声だ。もっと聞かせて」
(……ああ、嬉しい……。嬉しい、もっと言って。もっと私を、可愛いって言って……)
梓規の声が好きだ。
チェロみたいな低くて滑らかな響きが、耳に心地好い。
以前からずっとそう思っていたけれど、今ほど彼の声が甘いと思ったことはない。
まるで溶かしたチョコレートみたいな声に、麻央の脳が鼓膜からじわじわと溶かされていく。
(もっと……もっとちょうだい、もっとあなたで、私をいっぱいにして……)
腕を伸ばして梓規の首に巻きつけると、麻央は自ら彼の唇にキスをする。
吐息で彼が笑って、麻央の舌を包み込むように受け止めてくれた。
肉欲が解放されていく。
先ほどの梓規のキスを真似して、彼の舌に自分のそれを絡ませる。
優しくそれに応じてくれていた梓規だったが、やがてもどかしげに主導権を奪うと、荒々しく麻央の口内を蹂躙し始めた。
「ん、んぅ……は、んぅうぅぅ……!」
あまりの激しさに身悶えすると、梓規がようやくキスをやめた。
そして息も絶え絶えな麻央の唇を舐め取りながら、眉を顰めてうっそりと笑う。
「ごめんね。優しいキスをしてやりたいが、今は私も余裕がない。……君の匂いが、甘すぎる」
蕩けそうに甘い低音で囁かれ、それだけで麻央の背筋にゾクゾクと快感の電流が走った。
「……っ、ぁっ……」
脚の間にあった梓規の指が、クロッチの部分を寄せるようにして中に忍び込む。
すでに潤んでいた蜜口が、それだけでクチュリと淫靡な音を立てた。
麻央は恥ずかしさに泣きたくなったが、梓規が喉を鳴らす音が聞こえてきて、歓喜にお腹の奥が疼く。
番のアルファが、自分を欲しがってくれているのだと、本能で理解したからだ。
「すごいな……想像以上だ」
「え、梓規さん……? ぁ、やだ……!」
譫言のように呟いた梓規が、脚の間に頭を埋めた。
そんな場所を見られるのが猛烈に恥ずかしくて、麻央はそれを阻止しようと脚に力を込めたが、梓規は麻央の両膝を押さえつけるようにして脚を開かせてしまう。
「やだ、っぁ、ひんっ……!」
ショーツにぷくりとその存在を主張していた陰核を舐められ、強烈な快感に麻央は甲高く喘いだ。
(あ……! ぁ、ああ……気持ち好い……! 気持ち好いよぅ……!)
梓規の舌に陰核を執拗に弄り回されて、麻央の脳にバチバチとした白い火花が瞬く。
尖らせた舌先でぐりぐりと擦られると、お腹の奥――子を孕む場所が甘く疼いた。
腰がくねり、もっと欲しいというようにゆらゆらと揺れる。
愛蜜が奥からとぷりと溢れ出して、淫猥な音をさらに大きく響かせ、その音を恥ずかしいと思うのに一方でそれを悦び、どうしようもなく昂っていく自分もいた。
濡れて重くなったショーツを傍に寄せた梓規が、また喉を鳴らす微かな音が聞こえてきて、それだけで胸がキュンと軋む。
花弁を左右に割り開かれて、節立った指がゆっくりと膣内に挿入された。
「あっ……!」
他人の身体の一部が自分の内側に入り込む感覚は奇妙であるはずなのに、それが番の指だと思うだけでゾクゾクとした快感に襲われた。
誰も受け入れたことのない蜜路が、梓規の指に嬉しげに絡みついていくのを感じる。
「はは、すごいな。初めてで、もうこんなになっているのか。オメガの身体は難儀だな……」
梓規が少し掠れた声で呟くと、指で隘路を掻き回しながら、包皮の上から陰核を舌で弄り始める。
敏感な花芯を熱い舌先で上下左右に嬲られて、執拗な愛撫に麻央は四肢を小刻みに引き攣らせながら喘いだ。
「あっ、ああっ、ダメ、それ、だめぇ……!」
「ああ、すごい。食い千切られそうだ」
媚襞が戦慄き、梓規の指を食い締めている。
彼はその指を媚肉と戯れるように蠢かしながら、唇と舌を使って器用に包皮を剥くと、顔を覗かせた陰核に甘く歯を当てる。
「ひぃあぁっ!」
(あああ、ダメェ、だめぇ……!)
愉悦が頂点に達して、麻央は腰をガクガクとさせながら達した。
身体中が燃えるように熱くて、噴き出す汗が冷たく感じた。
いつの間にか止めていた息が再開されて、心臓が立てるバクバクという振動が自分の内側で鳴り響いていた。
身体中が熱い。
落雷のような絶頂は、やがて霧のように消え始め、愉悦の残滓が肌の上で戯れているようだ。
(……甘い……)
濃厚な花蜜のような匂いが鼻をつく。
絶頂に達したせいなのか、さっきよりもずっと発情期フェロモンの匂いが濃くなっていて、麻央の思考を鈍磨させていった。
それに反比例するように、身体の疼きがより鮮明になっていく。
(ああ……奥が熱い……苦しい……)
自分の奥が疼いて仕方なかった。
梓規の指では全然足りない。
もっと重く、深く、自分の虚ろを梓規で埋め尽くしてほしかった。
「ああ……すごい匂いだ。だめだ、我慢できそうにない……」
呻くように梓規が言って、麻央の脚をさらに開かせ、その間に陣取る。
自分の脚の間から、滾り切った熱杭が見えて、麻央の胸が歓喜に震えた。
あれが欲しい。欲しい。
あれを自分のナカに埋め込んで、めちゃくちゃに暴いてほしい。
内側から全て、彼のものにしてほしい。
溢れ出るオメガの欲望で眩暈がしそうだった。
梓規は重たげな自身を掴むと、そのエラの張った亀頭を麻央の蜜口に充てがった。
絶頂の後の麻央のそこは濡れそぼり、充てがわれるだけでクチュリと音を立てる。
だがそれを恥ずかしいと思う理性は、もう残っていない。
(――あ、ああ……早く、早く、それで私の奥深くまで貫いてほしい……!)
自分の蜜筒が強請るようにうねるのを感じて、麻央はごくりと唾を呑んだ。
お腹の奥がより熱くじんじんと疼いてくる。
身体の細胞全てが、番を求めて騒ぎ立てていた。
「梓規さん……」
欲望に潤んだ目で見上げると、梓規はひどく優しい微笑みを浮かべていた。
「……麻央。今から君を私のものにするよ」
その言葉に、麻央の目から涙がポロリと溢れ落ちる。
嬉しい。嬉しかった。
(あなたのものにして。あなたのものになりたい)
そして彼を自分のものにしたかった。
もう二度と離れなくても済むように、自分に縛り付けてしまいたかった。
「あ……あああ……っ!」
梓規の肉棒が隘路を押し広げるようにして、中に侵入してくる。
想像していたよりも太く、大きな感触に、麻央は海老反りになって悲鳴を上げる。
肉襞を引き伸ばされる感覚は、確かに苦しいはずなのに、麻央の身体は悦びに戦慄いていた。
性行為はこれが初めてだ。女神胎なのだから当たり前だ。
初めてであるはずなのに、オメガの肉体は苦痛を感じることなく、アルファの肉欲を受け止める。
梓規の男根が、ずぶずぶと自分の奥深くに侵入してくる衝撃は、信じられないほどの歓喜を麻央に教えた。
みっちりと番の雄芯で自分の虚ろを満たされる愉悦は、言葉にできないほどの充足感を麻央に与えてくれる。
「あ……ああ……」
ずん、と深い一突きで最奥まで収められ、その圧迫感に浅く喘いでいると、梓規が苦い笑みを口元に浮かべた。
その表情がひどく艶めいていて、麻央の胸がキュウッと音を立てて軋む。
「ああ、本当にすごい匂いだな……。理性が焼き切れそうだ……」
苦い笑みの交じるその声色が、麻央の胸を堪らなく掻き毟った。
(嬉しい……)
彼が自分の発情期フェロモンに反応してくれているのが、堪らなく嬉しかった。
先ほどまでは、彼の自由を奪ってしまうとあれほど怯えていたくせに、今の麻央にはその恐怖はきれいさっぱり消えている。
ただひたすら、目の前のこの愛しいアルファを、自分の番にしたかった。
「梓規さん……、梓規さん、好きぃ……! お願い、もっと……もっと、ちょうだい……!」
まるで子どものような声が出た。
これが自分の声だとは思えないほど、甘く拙い声だ。
だが本能とは拙いものなのかもしれない。
「……困った子だ。そんな煽るようなことを言ってはダメだよ。……我慢できなくなる」
梓規の掠れた声に愛しさが込み上げる。
年上の余裕からか、梓規はいつも穏やかで紳士的な印象だった。
その彼が自分を前に余裕をなくしているのだと思うと、愛しさで胸が膨らむような心地がした。
「我慢なんかしないで。私はあなたの、全部が欲しい」
彼の全部を自分のものにしたい。
それが麻央の本音だった。
(そうよ。私は梓規さんを見た時からずっと、私のものにしたかったんだ……!)
このアルファは、私のものだ――その本能の叫びが、内側から苛み続けていたのに。
男らしい精悍な輪郭を、手のひらで包み込む。
汗ばんだ肌の感触すら、愛しかった。
「私の全てをあげるから、あなたの全てを、私にちょうだい」
「……麻央」
「あなたが、私の唯一。私の〝運命の番〟だったんだね……」
泣きたいわけじゃなかったのに、どうしてか自然と涙が溢れた。
その涙を、梓規の唇が拭った。
「――そうだよ、麻央。私たちは、こうなる運命だったんだ」
恍惚と呟いて、梓規がゆっくりと腰を引く。
一番奥まで届いていた男根が、膣壁を刮ぐようにして引き抜かれていった。
初めて男を受け入れたばかりの隘路は蕩けていてもまだ狭く、張り出した雁首で抉るように引っ掻かれると、疼痛に近い快感が麻央を襲う。
「んっ、ぁあ、あああ……」
気持ち好いのに、梓規が自分の膣内から出ていってしまう喪失感に襲われ、麻央はイヤイヤと頭を振った。
だが次の瞬間、再び最奥目掛けて叩き込まれた。
「ィッ――!」
その衝撃に声にならない悲鳴を上げて、麻央は再び絶頂する。
内臓ごと貫かれたかのような衝撃に、爪先がピンと引き攣り、弓形にした背中がブルブルと震えた。
目から火花が散るような快感に全身から汗が噴き出す。
だが梓規はその一突きの後も立て続けに叩き込んできて、その容赦のなさに麻央は息をすることもままならず、ひたすら彼の情熱に翻弄された。
激しい出し挿れに、ベッドがギシギシと音を立て、接合部から淫らな水音が鳴り続ける。
硬く熱いもので女孔を抉られ、子宮の入り口を突き上げられるたび、頭の中が徐々に白い光に染まっていく。
気持ち好い、気持ち好い、気持ち好い――――。
梓規に全てを暴かれることが、幸せだった。
激しく揺さぶられ、上も下も、内も外も分からなくなりながら、自分の中心から熱いものが噴き出してくるのを感じた。
「ぁ、ああっ、や、ぁ、も、へん、変になっちゃう――」
絶頂が近い――そう感じ取った瞬間、麻央はボロボロと涙を流して叫んだ。
「噛んで……! 梓規さん、首、噛んでぇ……!」