「初めて会った時から、君は俺にとって特別だった」
見知らぬ男に襲われたところを、自社の社長である千早に助けられた天涯孤独の真麻。
じつは千早は人よりもあらゆる面で優れた〝まほら〟の一族の純血で、真麻はまほらの好物の匂いを発する〝桃蜜香〟の持ち主だという。
桃蜜香の秘密を解明するため、同居することになった二人だけど、まほらの食衝動を抑えるため千早と体液を交わし合うことになり…!?
「……心臓、ドキドキ言ってる……」
当たり前のことを呟くから、思わずフッと噴き出してしまった。
「そりゃ、好きな子に触れているから、そうなるよね」
「好きな子……」
淡い微笑を浮かべて鸚鵡返しをするから、千早は目を細める。多分、想いが通じた事実を反芻しているのだ。
自分も同じような心地でいるから、真麻の気持ちが手に取るように分かった。
「真麻だよ」
「……うん。嬉しいです……」
「俺も嬉しい。ずっと真麻に触れたかった」
素直に白状すると、真麻はちょっと目を丸くした後、ふにゃりと笑う。
「嬉しい。触ってください」
「うん」
許可を得て、千早は啄むだけのキスをしながら彼女の着ている物を剥ぎ取っていく。
やがて生まれたままの姿になった真麻を見下ろし、千早は恍惚のため息をついた。
「……きれいだな」
真っ白な肌は肌理が細かく滑らかで、光沢のあるグレージュのシーツの上に浮かび上がるようだ。華奢な体は嫋やかな曲線を描き、ルネッサンス時代の絵画に描かれた女神のように美しかった。
今からこのまっさらな体に自分の痕を刻みつけるのだと思うと、ゾクゾクとした高揚感が込み上げる。
「あの……あんまり見ないで、ください……」
千早の食い入るような視線に、真麻が恥ずかしそうに腕を前に組んで身を捩った。
そんな細い腕二本で、この芸術品のようにきれいなものを隠し果せるわけがないのに、と思うと、少し揶揄いたい悪戯心が湧いてくる。
「どうして? 見たい」
言いながらか彼女の腕を掴み、片手で頭の上に押し付けた。
露わになった双丘がふるりと揺れて、思わず唾を呑む。
柔らかそうな丸い肉の上に乗った薄紅の小さな尖りが、心臓の拍動に合わせて小刻みに震えていて、なんとも憐れで健気だ。ムラムラと込み上げてくるのは、それに齧り付きたいという動物のような本能だった。
千早は衝動のままに、白く柔らかな肉にむしゃぶりつく。
「ひゃっ……! ぁあっ……!」
小さく柔らかい尖りは、舌先でクルクルと捏ね回すとすぐ芯を持って硬くなった。
下の歯を使って根本を扱いてやると、気持ち好かったのか真麻の体が小さく跳ねる。乳房は片手にすっぽりと嵌まる大きさで、ほのかな温もりと餅のような弾力を楽しむように揉みしだいた。
「ぁ……っ、や、それ……なんか、変な気持ちになる……!」
真麻はどうやら乳首が好い所のようで、舌と指で両方いっぺんに弄ると、甘い嬌声を上げる。
その声がまた可愛くて、千早は下半身を直撃され、腹筋に力を込めた。
己の一物は、見なくても分かるほど完全に勃ち上がって、痛いほどだ。
欲望のままに真麻の中に突き挿れてしまいたいと思う気持ちが、ないとは言わないが、まずは真麻の体を慣らしてからだ。
乳首への愛撫で熱い吐息を吐く真麻が、くたりとベッドに四肢を投げ出す。
千早はその脚に自分の脚を絡めるようにしながら、そっと脚を広げていく。差し込んだ膝で脚の付け根を探ると、そこはしっとりとして熱く、彼女がちゃんと感じてくれているのが分かった。
胸から肋骨へとキスで辿り下りると、皮膚の薄い部分に鬱血の痕が残る。白い肌に赤い痕が浮き出る様は、淫猥にも、清廉にも見えるから不思議だ。どちらにしても、その女体がひどく憐れに見えるのはどうしてなのか。
脇腹にさらに自分の印を刻みつつ、片手でゆっくりと内腿の肉を撫でていく。女の体は男よりも体温が低く、脂肪の多い部分は特に冷たく感じる。柔らかいのにほのかに冷たいという絶妙な触り心地が、男の胸に奇妙な焦燥感を生むことを、真麻は知っているだろうか。
大切に守りたいけれど、めちゃくちゃにしたい。
相反する欲を一度に抱く不思議は、生物としてのバグだと思ってしまうが、バグがあるから生物なのだとも言える。
(……考えてみれば、真麻に関して俺は、バグばかり起きている気がする)
自身の感情すらままならないことなど、子どもの頃を除けばほとんどない人生だったというのに、真麻に関してはほとんどがままならない。
彼女に振り回されていると思うが、おそらくそれは彼女も同じだろう。
そしてその状況に幸せを感じているのも、二人同じなのだ。
太腿を滑っていた手を、さらにその奥へと進ませた。柔らかな恥毛を指で掻くようにすると、しっとりと湿った花弁に触れる。
ヒヤリとした内腿とは打って変わった熱い粘膜の感触に、ゴクリと喉が鳴った。
逸る気持ちを抑えつつ、花弁をそっと開き蜜口を指の腹で撫でる。入り口はまだ狭かったが、愛蜜をトロトロと零し始めていた。
千早はそれを指に絡めると、ゆっくりと粘膜を揉みつつ、入り口の上に隠れた真珠へと指を伸ばす。柔らかい包皮に覆われたそれを円を描くように捏ねてやると、真麻が分かりやすく反応した。
「んっ……あっ、ぁあっ」
猫のような声を聞きながら、体をビクビクと震えさせる真麻が可愛くて、千早は頭を下げてその場所へと顔を埋める。膨らんでその頭を覗かせている陰核を舌先で弄ると、真麻が背を弓形にして悲鳴を上げた。
「ひ、ぁあぁんっ!」
やはり男同様に女性でも陰核は感じやすい器官のようで、まだ弄ってもいないのに蜜口の中から愛液がとろりと溢れ出す。完全に熟した南国の果実のような香りが、千早の鼻腔に入り込む。
(……っ、これは……!)
匂いを嗅いだだけで、ゾクゾクとした快感が背筋を走り抜けた。
酒に酔った時のようにぐらりと眩暈を感じ、瞬きをした次の瞬間には、喉が干上がるような渇きを覚えた。
その甘い香りのする体液を啜ることしか考えられなくなって、千早は夢中で蜜口にむしゃぶりつくようにして口をつける。
香り同様に、真麻の愛液は甘かった。濃厚なまでに甘いのに、どれだけ啜ってもまだ足りず、舌を伸ばして膣内へ侵入し、溢れ出る甘露を刮げ取ろうとめちゃくちゃに掻き回す。
そうやって口淫をしていると、ちょうど自分の鼻先に真麻の陰核があって、ついでとばかりに鼻でそれをグリグリと押し潰してやると、真麻の体がまたビクビクと跳ねた。
「ぁっ、あぁっ……千早さっ……! やぁ、もう、それ、気持ち好すぎて、変になるっ……! ぁあっ、また……、また、来ちゃうっ、やぁあぁあ!」
敏感な場所への執拗な攻撃に、真麻が甲高い嬌声を上げ体を大きく痙攣させる。
絶頂したのだと分かったが、千早は口淫をやめなかった。やめたくなかった。
(ああ……美味い……、甘い……、もっとだ。もっと欲しい……!)
湧き起こる強烈な欲求はまほらの食衝動とよく似ていたが、だが彼女を食べたいという欲求ではない。
例えるなら、『極限まで喉が渇いた状態で、ようやく水を与えられた時』と同じような感じとでも言えばいいだろうか。
涼やかな水が干上がった喉の粘膜を潤し、渇いて死にかけていた体の細胞の一つ一つが、息を吹き返していく感覚だ。
真麻の甘露はとにかく美味く、飲むほどに自分の体が満たされていくのを感じる。
理性はまだ手放してはいないものの、真麻の声もどこか遠くに聞こえていて、自分の強引で執拗な愛撫に何度も絶頂しているのも分かっているのに、彼女を気遣うよりも甘露を啜ることに集中していた。
だが啜っても啜っても満足できない。
愛液を啜るだけでは、この渇きが癒やされないことに気づいた千早は、本能に導かれるようにして動いた。
口淫をやめて上体を起こすと、横たわる愛しい者を見下ろす。
幾度も絶頂させられたせいか、真麻はぐったりとベッドに身を投げ出していて、千早がじっと見つめていることを恥ずかしがる余裕もなさそうだった。
白く滑らかな肢体に、自分の付けた赤い痕が花びらのように全身に散っていて、美しかった。
降ったばかりの雪の上に落ちる椿の花のようだと、酩酊した思考の裏側で思いつつ、千早はむっちりとした脚を開かせ、その間に陣取った。
開いた脚の付け根には、先ほどまで夢中で舐めしゃぶっていた花園がある。愛蜜なのか、自分の唾液なのか分からないが、濡れててらてらと光るきれいなピンク色の肉は無垢でいやらしく、見ているだけで喉の渇きが強くなった。
千早は無言で痛いほどに勃起した肉竿を掴むと、真麻の小さな雌孔に当てがう。密着した亀頭に温かく濡れた感覚が伝わり、心臓がバクバクと音を立て始めた。
早くこの中に突き入れたい。
温かい肉に包まれる瞬間を想像して、舌舐めずりをした。
「……ぁ……、ちーく、ん……」
懐かしい愛称を呼ばれ、目を見張ってそちらへ視線を向けると、とろりとした眼差しをした真麻が、細い両腕をこちらへ向けて開いていた。
『ちーくん、ちーくん、抱っこしてぇ!』
稚い幼児の声が脳裏に響いた。
かつて同じ仕草で抱っこを強請られたことを思い出し、千早は体を倒す。
すると真麻は嬉しそうに微笑んで、千早の首に腕を回してしがみついてきた。
「……嬉しい。早く、一つになって、ちーくん」
耳元で囁かれ、千早は彼女の唇に噛みつくようなキスをしながら、一気に腰を押し進めた。
ずぶり、と己の熱杭が熱い泥濘に呑み込まれていく。
「んんんんぅううう!」
キスで口を塞がれたまま、真麻がくぐもった悲鳴を上げたが、その体はなんの抵抗もなく千早の雄芯を受け止めていた。いとも容易く根本まで咥え込んだ隘路は、媚肉をさわさわと蠢かして侵入者を歓待している。
まるでこれをずっと待ち望んでいたと言わんばかりだ。
だが、それを不思議には思わなかった。
こうなることは、出会った時から決まっていたのだ。
なんの根拠もないが、それが正しいのだと、千早は確信していた。
千早は真麻のために、真麻は千早のために存在する。ただそれだけだ。
(ああ、気持ち好い……)
真麻の膣内は気持ち好かった。熱く濡れていて、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる。蜜襞が千早の形を覚えるように絡み付き、吸い付くように蠢くものだから、腰を振らなくても脳髄を直撃するような快感を覚えた。
繋がった部分から溶け出して、真麻と溶け合ってしまいそうだった。
(だが……まだ足りない……!)
まだ喉の渇きは治っていない。どうしたらこれが治るのか見当も付かないのに、自分の体が分かっていると叫んでいた。
体が訴えるままに、千早は動いた。
真麻を抱き締めたまま、真麻の内側を犯す肉竿を前後させ、最奥を穿ち始める。
「んっ、んぅっ、んんぅうう!!!」
「真麻……! 真麻、真麻……!」
キスの合間に名前を呼び、呼んではまたキスをする。
舌を差し入れて彼女の甘い唾液を啜り上げながら、己の硬い肉で彼女の胎を貫き続ける。
熱い漲りが蜜筒の中を刮ぎ回し、溢れた愛液がシーツをびっしょりと濡らした。
口からも繋がった部分からも粘着質な水音が立ち、それがひどく千早を高揚させた。
こんなに酷い暴挙を振るっているのに、真麻はただひたすらに千早を受け止めてくれる。
首に回された腕や、涙目で見つめるその眼差し、そして自分を犯す凶暴な雄芯に健気に絡み付く蜜襞が、真麻が千早に向ける愛情の深さを物語っていた。
真麻は全身で、千早を愛してくれている。
それがダイレクトに伝わってきて、千早の胸が熱いものでいっぱいになった。
「真麻、愛してる――」
悦びに浮かされて腰を突き上げる。隘路の奥の奥――子宮の入り口を何度も抉っているうちに、真麻の体がガクガクと痙攣を始める。
これまでとは比較にならない強さで締め付けられて、千早は息を呑んだ。
快感が限界を突破し、睾丸にずんと重みを感じて歯を食い縛る。
脳が愉悦で甘く蕩けるのを感じながら、千早は強い射精感に抗うようにして、最後の一突きでもう一度最奥を強く深く抉った。
「あ、あ、ぁあああ――――!」