完璧な御曹司社長×恋を知らない没落令嬢
凋落した家の娘である莉子は、叔父の勧めた見合い相手に一方的に婚約破棄されたところを、勤め先の社長・澄春に救われる。しかも、彼はその場で莉子に自分の恋人にならないかと持ちかけて!? 「いい彼氏になれるよう尽力させてもらうよ」澄春にはメリットのない申し出にとまどう莉子だが、彼はあの手この手で莉子を口説き、甘く恋を教えてきて――。
下着の中で、胸の先が熱くせつなく屹立していく。
「っ……澄春、さん……」
「さわられるの、初めて?」
彼の問いかけに、無言でうなずいた。
丸い輪郭をたどっていた指が、胸を包みこんでくる。
――やだ。これだけのことで、息が……。
呼吸が詰まりそうになるのは、莉子が声を我慢しているせいだった。
気を抜いたらおかしな声が出てしまいそうで、喉にぎゅっと力を込める。
すると酸素がじゅうぶんに入ってこなくて、息苦しい。
「ぁ……っ……」
最初の一声が漏れた瞬間、莉子は両手で自分の口をふさいだ。
恥ずかしさに涙目になる。
体に触れられることよりも、彼に反応して甘い声をあげることのほうが、ずっと恥ずかしかった。
「声、我慢しなくていいのに」
――ムリ。こんなの、聞かれたくない。
「だったら、もっと我慢できなくさせてあげるよ。そうしたら、莉子も慣れてくれるかもしれないね」
シャツのボタンがはずされていく。
両手で口を覆っているせいで、彼を止めることもできない。
――ううん、そうじゃない。わたし、やめてほしくないんだ。もっと澄春さんに触れてほしいって思ってる。
ブラのホックをはずされて、胸元があらわになる。
キャンドルの明かりの下、莉子の肌はほのかに赤らんでいた。
「ああ、やばいな。かわいすぎて、優しくできなくなりそう」
澄春は両手で胸の裾野をそっと持ち上げた。
手のひらの熱を直接感じる。
それだけで泣きそうなくらい、体の奥で情動が湧き上がった。
「莉子、少し驚かせるかもしれないけど、怖くないから逃げないで」
「……?」
大丈夫だよ、といつもと同じ優しい声が莉子にささやく。
そして、次の瞬間。
「っっ……! あ、あっ……!」
左の胸の先に、濡れたあたたかいものが触れて、莉子はがくがくと大きく腰を震わせた。
――や、何? 口に……。
いつも爽やかな笑みを浮かべている澄春の唇が、乳首を食んでいる。
腔内の粘膜に包まれる感触は、人生で経験したことのないものだ。
澄春は、吸い上げるでもなければ唇を動かすでもなく、ただやわらかに莉子の感じやすい部分を上下の唇で挟んでいる。それだけなのに――。
「ん、ん……っ」
莉子は自分から身じろぎして、いっそう彼の唇を強く感じてしまう。
「こら、逃げないでって言ったのに」
「だ、だって……」
「だってじゃありません。いい子にしてくれたら、もっと気持ちよくしてあげるよ」
そして、またしても初めて感じる何かが、莉子を襲った。
「……っ!」
唇をすぼめて、澄春がかすかに乳首を吸う。
その所作は、乳児が母親のおっぱいを吸うのと大差ないのに、体に感じるのはどうしようもない快楽だ。
「ぁあ、吸うの、や、ぁ……」
「感じてくれてるの、わかる。莉子のここ、俺に吸われて硬くなってる」
「んっ、ぅ、ぅぅ……」
右乳首を吸い上げながら、澄春は反対を指の背でこする。
すりすりと根元から先端にかけてかすめる動きに、ソファに座っている腰が揺らいだ。
――こんなの、声を我慢するなんてできない……!
「ああっ……」
大きく息を吐いて、両手を下ろす。
腰のうしろに手をついて、くずおれてしまいそうな体を支えた。
「莉子、どう? 気持ちいい?」
「っわ、かりませ……」
「いつも素直な莉子が、珍しく嘘をつくんだね。じゃあ、体に聞いてみよう」
先端を吸っていた唇が、乳暈ごと大きく胸を口に含む。
ねっとりと粘膜に吸いつかれる感覚に、莉子は小さく悲鳴をあげた。
「こうして、優しく吸うのと」
「ゃ、ああ、あ」
「軽く短く、小刻みに吸うのと」
彼は動きに変化をつけて、莉子を責め立てる。
「それから、舌で乳首を転がすのと――」
「ひ、ぁあッ、それ、や、やだあ……」
逃げ腰になったところを、両腕が抱きとめてつかまえてしまう。
「今度は、唇で根元をぎゅってしたまま、先っぽだけ舌で――」
「澄春さ、あ、あっ、待って、くださ……」
「それとも、強く吸いながら舌でいじめられるのがいい? ねえ、莉子、どれがいちばん感じちゃうのかな」
「うう、ぅ、全部、きもちぃ……」
初心者に、どれがいちばんなんてわからない。
――澄春さんにされるだけで、気持ちよくてたまらないの。
左足首で二連の鎖が、しゃらんと揺れた。
「全部いい、か。素直でかわいいね」
「澄春さん、からかってます……?」
「まさか。本気だよ。ほんとうは気づいてるよね?」
何に気づくというのだろう。
そう思った莉子を、彼はソファに横向きに押し倒した。
「ぇ、あ……」
膝丈のスカートが、腿までめくれ上がっている。
慌てて手で下ろそうとしたが、それより早く澄春が両膝をつかんで左右に割った。
何が起こったのか、把握できない。
もちろん、セックスの外枠は知っているし、そういう行為をはらんでいるのもわかっていた。
けれど、自分の身に起こってみると事態の理解に一瞬、隙間ができてしまう。
「さすがにここで、最後までとは言わないから安心して。俺は、莉子に気持ちよくなってほしい。感じてる莉子の顔をもっと見てみたいんだ」
「あの、どういう……ぅ、んっ……!」
内腿に、手が触れた。
下着の縁、ギリギリのところだ。
――どうしよう。バレちゃう。もう、隠せない。
閉ざされた柔肉の間がぬかるんでいることに、莉子は気づいていた。
これが感じている証拠なのだと、知識も持っている。
だが、澄春に知られると思うとこらえきれないほどに含羞がこみ上げてきた。
「どうして泣きそうな顔をしているの? そんなに嫌なら――」
「ち、違う。違わないけど、違うんです」
怖くない。嫌ではない。
なのに、感情が自分でうまくコントロールできなくなっている。
「……澄春さんに、触れてほしい、です」
「でも、つらそうだ」
「これは……、は、恥ずかしくて死にそうなだけですっ」
だから、触れて。
もっとあなたを感じさせて。
莉子は心を凝らして彼を見つめる。
「俺はきみより六歳上なんだ」
「? はい、知っています」
「なのに、こういうとき、莉子の純真さに心打たれるよ。きみは年齢よりずっと純粋で、だけど俺よりもずっと心が強い」
「そ、そう、ですかね……?」
彼の言っている意味をはかりかね、莉子はかすかに首を傾げる。
「だから、遠慮なくかわいがらせてもらうよ」
「ぁ、あっ……!」
下着の脇から、彼の指が柔肌に触れる。
ぷに、と乾いた部分を軽く指で押されて、莉子は右手で目を覆った。
「見ていなくていいの? 何をされるかわからないのに」
「そんな、見て、られな……あ、ぁあ、んっ」
亀裂を縦に指腹が撫でる。
ぬるぬると彼の指がすべるのは、あふれた蜜のせいだ。
「思っていたより、感じてくれていたんだね」
「……っ、ん、わたし……」
「内側からも、かわいがらせて」
広げられた脚の間に、彼の指がつぷりと埋め込まれた。
「あッ……!」
たっぷりと濡れているのに、そこはひどく狭まって彼の指を追い出そうとしている。
「莉子、痛くない?」
「な、い……、あ、あっ」
彼の指は、目に見えない体の芯に近づくように莉子をおかしくしていく。
動いているわけでもないのに、彼の指がそこに入っているというだけで、全身が粟立つ。
うなじから脳天にかけて、ぞわりと甘やかな予感が漂っていた。
彼を締めつける粘膜は、ひどく敏感になってみだらにうごめくのを止められない。
「うん、痛くないのは嘘じゃなさそう。中、すごく柔らかくて、俺の指をもっと奥まで飲み込もうとしてる」
きゅう、と締まった蜜口を、莉子は彼を押し返していると感じていた。
けれど澄春は、同じ締めつけによってより奥へと誘われていると感じている。
同じ事象を別の観点から見ることによって、それぞれの解釈は違っていくのだ。
――澄春さんのほうが、いい。
莉子は、細く息を吐いた。
それまでは浅い呼吸を繰り返し、全身がこわばっていた。
――わたしは今、澄春さんをもっと奥に感じたいって思ってる。そっちのほうが、自分に正直な気がする。
「ああ、少し緊張がほどけたかな」
「……たぶん。澄春さんが……」
優しくしてくれるから。
涙目で告げた莉子に、彼はこれまででいちばん優しい笑みを見せる。
「安心していいよ。莉子がほんとうにやめてほしいときは、ちゃんとやめる」
やめてください、とも。
やめないでください、とも。
言えないから、莉子は彼を真似て微笑んだ。
そして、あえてこの言葉を選ぶ。
「ありがとうございます」
莉子はいつも「ありがとう」と言う――と、彼は言った。それをなぞるのは、ふたりの約束にも似ていて。
「あー、……このタイミングで、それ?」
「わたしらしいかなって思ったんですけど、ダメでしたか?」
「駄目じゃない。莉子らしくて、いいと思うよ」
どちらからともなく、ひそやかに笑って唇を重ねる。
舌が口腔に入ってきても、怯えたり逃げたりせず、精いっぱい彼に合わせて絡めていく。
やわらかな体内で、澄春の指がゆっくりと中を撹拌した。
「んっ……」
「莉子、もう一本、増やそうね」
「は、い……っ」
一度引き抜かれた彼の指が、二本になって莉子の中へ戻ってくる。
きゅうう、と奥が勝手に狭まって、長い指を食いしめた。
「ぁ、あっ、中、に……」
「俺の指が入ってるんだよ。根元まで、全部莉子の中に入ってるのわかる?」
うなずいた莉子の唇を、掬うようにキスが塞ぐ。
――わたしの体の中に、最初に入ったのは澄春さん。最後までするかどうかは別として、澄春さんの指が初めて……。
優しく甘く彼の指に慣らされて、どのくらい時間が過ぎただろう。
腰から下が溶けてしまいそうな錯覚に陥りながら、莉子は快楽の波に揺られていた。
「そろそろ、いいかな。莉子、まだ中だけだと満足するのは難しいだろうから、こっちも――」
中に指を挿入したまま、澄春は体を起こして亀裂の先端に親指で触れる。
そこには、すでに期待ではち切れんばかりに張り詰めたつぶらな突起が疼いていた。
「や、ぁああッん!」
ひと撫でされただけで、腰がガクガクと跳ねる。
「ああ、こっちならイケそうだね」
「待って、澄春さ……、そこ、ダメ、気持ちよすぎて……っ」
「うん、気持ちよすぎるならいいことだ。莉子のここ、かわいがらせて」
白い内腿に吸い寄せられるように、澄春が顔を沈めていく。
何をされるかわかっても、とろとろに感じきった体は逃げることもできない。
いや、逃げたいわけではないのだ。
このままいっそ、彼のものになれたらいいのに、と莉子は願う。
だが、彼の与えてくれる快楽はあまりに刺激的で、初めての体はもう限界に近かった。
――満足って、どういうこと? 澄春さんは、これ以上どうしたいの? わたしは、どうされたいの……?
花芽に、ちろりと舌が躍る。
反射的に莉子は、ビク、と大きく肩を震わせた。
「澄春、さ……」