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授かって逃亡した元令嬢ですが、腹黒紳士が逃がしてくれません

授かって逃亡した元令嬢ですが、腹黒紳士が逃がしてくれません

  • 著者:春日部こみと
  • イラスト:森原八鹿
  • ISBN:978-4-596-63650-8

  • ページ:288

  • 発売日:2024年6月12日

  • 定価:本体1200円+税

キーワード
  • Ω令嬢
  • アルファ
  • イケメン
  • エリート
  • オメガ
  • オメガバース
  • シリーズ
  • スパダリ
  • つがい
  • ツンデレ
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  • あらすじ

    「これ以上逃げない方がいいよ。
    ──監禁されたくはないでしょう?」

    類いまれなる美貌を持つ母や優秀な姉と常に比べられ、オメガとして劣等感を抱く六花。失恋でヤケ酒をした夜、柊という男性に出会い強烈に惹かれる。貪るように互いを求め合い情熱的な夜を共に過ごす二人。翌朝、我に返った六花は彼の前から逃亡するが、その後妊娠が発覚。実家から勘当され、シングルマザーとして奮闘する六花の前に柊が現れて…!?

  • 試し読み

    「あっ……!」
     ボタンの外れたシャツワンピースから、下着姿が垣間見える。
     それでは足りなかったのか、柊が無言でシャツワンピースの生地を掴んで引っ張ると、腕から抜き取ってしまった。
    「うっ……」
     ブラジャーとショーツしか身につけていない身体を明るい場所で晒(さら)されて、羞恥心(しゅう ち しん)からぎゅっと目を閉じる。
     柊の視線が自分の肌の上を舐めるように滑(すべ)るのを感じて、六花は唇を噛(か)んだ。
     恥ずかしいやら情けないやらで泣きたくなる。
     この罰のような時間が早く過ぎ去ることを祈っていると、柔らかい感触が額に落ちて、優しい囁きが聞こえた。
    「きれいだ」
    「……っ」
     情感のこもった短い感想には、嘘やお世辞を感じなかった。
     いつの間にか止めていた息を吐き出して、六花は瞼(まぶた)を開く。
     こっくりとした甘い茶色の瞳が目の前にあって、ひどく切なげに六花を見つめていた。
    「……この美しい身体の中で早織を育んでいた姿を、俺も見たかった」
     その囁き声には、責める色が全くない。
    柊はただ、悲しんでいた。そして、苦しんでいた。
    手の中にあったはずの幸福が、知らぬ間に無かったことにされていた悲しみを、昇華できずに苦しんでいるのだ。
    「言い訳も償いも本人から」と言ったわりに、柊は六花にひどいことをしたりしない。
    それどころか、過ごしやすい家を与え、傍に置き、甲斐甲斐しく世話をしてくれる。
    包み込むように大切に、大切にされているのが、日々の言動で伝わってくるから、彼が六花を責めていないことは、すぐに分かった。
     六花は込み上げる涙を、グッとお腹に力を込めて堪える。
    (泣くな、私……! 私が泣くのは、お門違いなんだから……!)
     意思の力で涙を呑み込むと、六花は腕を開いて柊を抱き締めた。
    「……ごめんなさい、柊さん」
     ただ謝ることしかできない自分が、情けなくて悔しい。
     だが過去を悔やんでいても、現実は変わらない。
     今を変えるため――自分の番(つがい)を幸福にするために、考え、動かなくてはならないのだ。
    「……謝らなくていい。俺が欲しいのは、謝罪じゃなくて、償いだから」
    言いながら、柊は六花の背中に手を回しブラジャーのホックを外した。
    拘束から一気に解き放たれ、乳房がふるりと揺れる。
    その柔らかい肉の上でもたつくブラジャーを片手で剥(は)ぐように脱がせると、柊は六花の腰を抱き寄せて自分の膝の上に乗せた。
    向かい合って座る体勢になり、六花はカッと頬を赤らめる。
    脚の間に硬い物が当たったからだ。スラックスの中で、柊のものがすでに熱を持っているのが分かって、お腹の奥がずくんと疼(うず)いた。
     六花が何を思っているのか察したのか、柊がクスクスと喉を鳴らす。
    「勃(た)ってるのが分かる?」
     直接的な表現で言われて、六花は視線を泳がせそうになったが、観念して頷いた。
     すると柊は困ったように目を細め、六花の頬に手を添えて優しく撫(な)でる。
    「……子どもまで産んだくせに、六花っていつまで経ってもずっと初心(う ぶ)だよね」
    「……ご、ごめ……」
     どういう反応をしていいのか分からずつい謝ろうとすると、柊はクッと唇を歪(ゆが)めて笑った。
    「謝らなくていいよ。それ、めちゃくちゃ唆(そそ)るから」
    「そ、そ……」
     これまた反応に困ることを言われて、六花はしどろもどろになる。
     狼狽える姿が面白いのか、柊は涼やかな目元に少し意地悪な色を浮かべた。
    「唆(そそ)るよ。母親なのに初心で、すごくエロい身体をしてるのに触れられるのに慣れてないとか……本当にアンバランスで、めちゃくちゃにしたくなる……」
     うっとりとした口調で囁きながら、六花の胸を両手で揉(も)みしだいた。
     大きな骨ばった手の中で、自分の白い肉がグニグニとパン生地のように形を変える様を見て、六花は奇妙な焦燥感に駆られる。
    恥ずかしいような、嬉しいような、言いようのない心地だ。
    「……?」
     胸を揉んでいた柊が、不意にその手を止めて胸の先を凝視する。
    「……なんか、乳首から垂れてきた。これ、母乳?」
    「っ、あっ、ご、ごめ……!」
     歯が生えてきて、だいぶ離乳食の進んだ早織だが、眠る時やぐずった時などにまだ授乳をしているので、卒乳はしていない。
     なので、完全母乳だった時ほどではないが、六花の胸はまだ母乳を作ってしまうのだ。
     母乳を柊に見られるのがなぜか猛烈に恥ずかしく、六花は泡を食って胸を隠そうとしたが、その手を彼に止められた。
     そして何を思ったのか、柊は母乳の滲(にじ)む乳首をパクリと口に咥(くわ)えてしまう。
    「あ……!」
     びっくりして息を呑んでいると、柊はすぐに唇を離して首を傾(かし)げた。
    「甘くない」
    「……ぼ、にゅうは、甘くないの……」
    「へえ、そうなんだ。甘いと思ってた」
     意外と知られていないが、母乳は甘くない……というより、わずかに塩味があるだけの薄い味だ。
    もちろん個人差はあるらしいが、母乳の原料が血液であることを鑑(かんが)みれば当然かもしれない。
    出産前の母親教室で習っていたが、六花も自分の母乳を舐めてみて驚いたものだ。
    「……ふふ、私もそう思ってた」
     裸で睦(むつ)み合っているのに、こんな会話をしているのがなんだか無性におかしくて、六花はクスクスと笑ってしまった。
     柊は六花の笑顔を見て目を細めると、鼻を擦り合わせるようにしてキスをしてくる。
     舌を擦り合わせ上顎を舐められると、細かい電流のような快感が背中を走り下りた。
    彼の舌は熱くて激しくて、まるで一匹の獰猛(どうもう)な生き物みたいだ。
    その獰猛な生き物に口内を蹂躙(じゅう りん)されると、頭の中がぼうっとするくらい気持ちが好(よ)かった。
    (キスって……気持ちがいいものなのね……)
     何度も角度を変えて唇を合わせられ、その快感に六花の身体がどんどんと熱を帯びていく。
     それを見計らってか、柊の手が柔らかな内腿をゆったりと撫でた。大きな手のひらは乾いていて熱く、その感触だけで六花は腰が震えそうになる。
    (ああ……どうしよう、気持ちいい……!)
     柊に触れる場所、全てが気持ち好かった。
     まるで自分の身体の細胞ひとつひとつが、彼の愛撫(あい ぶ)を歓待しているかのようだ。
     柊の指がクロッチの部分に辿(たど)り着き、その脇から内側へと潜(もぐ)り込む。
     ふ、と吐息(と いき)で彼が笑った。
    「もうぐしょぐしょだ」
     キスの合間に意地悪く囁かれて、六花は涙目で彼を睨(にら)んだ。
     そこがもう濡(ぬ)れているのは、自分でも分かっていた。
     だが愛する番(つがい)に愛撫されれば、身体は番(つがい)を受け止める準備を始めてしまうのだ。
    自然な反応なのだから仕方ない。
     揶揄(からか)うな、と怒っているのに、柊は嬉しそうに目を三日月のようにして再び唇を塞(ふさ)いでくる。
    「んっ……ふぅっ……!」
     キスをされたまま、泥濘(ぬかるみ)の中に指を挿し入れられた。
     ゴツゴツとした指の関節が分かるくらい奥へ挿(い)れられて、その感触に膣内(ナカ)がぎゅうっと蠕動(ぜんどう)する。彼の身体が自分の胎(はら)の中に入ったのを悦(よろこ)んでいるのだ。
     まるで主人に撫でられて悦ぶ犬のようだ。
     柊の指は絡みついてくる蜜襞をあやすように掻き回した後、蜜筒の腹側をぎゅうっと押してくる。それと同時にもう片方の手の親指で、ショーツの脇から見える花芯を弄(いじ)り始めた。
    「んっ! んぅっ、んんっ!」
     強烈な快感に、六花の腰が跳ね上がる。だが柊は逃げようとする妻の柳腰(やなぎ ごし)を片膝を立てて押さえると、膣内(ナカ)と陰核を執拗(しつよう)に捏(こ)ね回した。
     蜂蜜のように濃厚で甘い快楽が、どろりと脳内を溶かしていく。
     抵抗できないほど甘美な快感に、いつの間にか六花は自ら柊の首に腕を回して抱きついていた。
     自分の身体を夫の身体に密着させると、彼の匂いが立ち上がってきてうっとりと目を閉じる。
    柊の匂いが好きだ。
    ハーブとバニラと木の匂い――彼のプロデュースした香水と、彼自身の肌の匂いだ。
    それをもっと嗅ぎたくて、さらに身体を密着させた。
    厚い胸に乳房が押し潰され、彼の着ているシャツに乳首が擦れる刺激に、下腹部がじんじんと痛いほどに疼く。
     欲望の熱に理性が溶かされていくのを感じながら、夢中で柊の舌に自らの舌を絡ませていると、彼が喉の奥でクツクツと笑うのが分かった。
    「欲しい? 六花」
     低く艶(あで)やかな声で訊ねられ、六花はとろりと瞼を開いた。
     愛する番(つがい)の茶色の瞳が、甘く淫靡(いん び)に自分を誘っている。
    「俺が欲しい?」
     もう一度訊かれ、六花はこくりと頷いた。
     柊が欲しい。熱く疼いて堪らない自分を、彼で埋めてほしかった。
     素直に首肯する六花に、柊が満足げに微笑んだ。
    「だよね。俺ももう、君の膣内(ナカ)に突っ込みたくて、はち切れそう」
     言いながら、柊が身動ぎをしてスラックスの前を寛(くつろ)げる。すると跳ねるように彼の昂(たかぶ)りがまろび出て、六花の女陰に触れた。
     完全に勃(た)ち上がって天を突き、雄々(お お)しい肉茎に太い血管が浮いたその姿は、グロテスクなはずなのに、どうしてか六花の胸を高鳴らせる。
    硬く逞しい雄(おす)の猛(たけ)りに、腹の奥からどろりとした蜜が溢(あふ)れ出すのを感じた。
    「柊……」
     哀願する声に、柊がうっそりと微笑んで、六花のショーツを指で脇に寄せた。
    溢れ出した愛蜜でぐっしょりと濡れた布の感触に眉が寄ったが、それ以上に期待の方が大きくて、六花は自ら腰を上げた。
     待ち切れないといった様子に、柊がまたクツクツと笑う。
    「そう焦(あせ)らないで……すぐにあげるから」
     優しく甘く囁いて、六花の腰を抱いて自分の熱杭へと導いた。
     ぬる、とエラの張った先端が濡れそぼった割れ目を撫でる。熱く張り詰めた粘膜の感触に、ごくりと喉が鳴った。
     あの逞しいもので最奥を貫かれ、ぐちゃぐちゃに掻き回され、最奥に浴びせかけられた先日の記憶を、身体が覚えている。
    脳が焼け焦(こ)げるような愉悦を思い出して、まだ受け入れていない隘路(あい ろ)が、物欲しそうにひくひくと戦慄(わなな)いた。
    (はやく……はやく、はやく……!)
     祈るようにしてその瞬間を待っていると、下から一気に串刺しにされた。
     ズン、と恐ろしいほどの質量が胎の中に叩き込まれ、目の前に青白い火花が散った。
    「――ッ、はぁッ!」
     待ち侘(わ)びていた雄を突き入れられた衝撃に、六花は身を弓形(ゆみなり)にして喘(あえ)ぐ。
     頭の中が、快感で真っ白になっていた。
     蜜路が痙攣(けいれん)したようにぎゅうぎゅうと収斂(しゅう れん)していて、下腹部が痛いほどだ。
     挿入されただけで達してしまったのだと、脳のどこか裏側で思ったが、絶頂の最中ではそれもどうでもいいことだった。
    (気持ち好い、気持ち好い、気持ち好い――――)
     愉悦に思考が支配される。
     このまま意識を飛ばしてしまいたいのに、柊が深い息を吐き出しながらもう一度腰を突き上げたせいで、また強い快感で現実に引き戻された。
    「――ッ、はぁ、すごい締め付けだな。一瞬持っていかれそうになった」
     柊は低い声で呻きながら、六花の腰を掴んで猛然と抽送を始める。
    彼の膝の上でリズミカルにボールのように身体を跳ねさせられるたび、凶暴なまでの質量の熱杭に子宮の入り口を突かれた。
    座って抱き合うこの体勢では、自分の体重でより深く彼のものを呑み込んでしまうのだ。
    「あっ、んっ、う、ぁああ、やぁ、これっ、深い……!」
    ゴツゴツとした雁首に膣内(ナカ)を擦られ、怖いほどの快感がビリビリと六花の内側に響いた。怖いはずなのに、媚肉は雄杭に嬉々として絡みついているのが分かる。
    「嫌じゃないでしょ。こんなに締め付けてくるくせに。ほら、もっと感じて」
     優しげな物言いなのに、柊の目つきは肉食獣そのものだ。そのギラギラとした眼差しに、また六花の胎の奥がじんと疼く。
    「しゅ、柊さん、好き……すきぃっ……」
     助けを求めるようにキスを強請(ね だ)ると、柊は苦笑した後望みを叶えてくれた。
     彼の舌が美味(お い)しくて、気持ち好くて、六花は夢中で舌を絡ませる。
     自分の胎に彼の猛りが嵌(は)まっていることが、嬉しかった。彼が自分の中にいることが、どうしようもなく完璧で、幸福だと思えた。
    (……ああ、一分(いち ぶ)の隙もなく密着し、接合部から溶け合って、あなたと一つになってしまいたい……)
     そんな不可思議なことを考えながら、六花はいつの間にか自分から腰を振っていた。
    「ぁあっ、気持ち、好いよぉっ、柊さぁんっ」
     密着した彼の胸で自分の乳首を擦ると気持ちが好くて、腰を上下するたびにそれをしていると、柊が低い声で笑った。
    「快楽でトンじゃうとドエロいとか、本当にヤバいなぁ、六花は!」
     言いながら、右の乳首を強く抓(つね)られる。
    「ひぁあっ!」
     胸の先から強い快感が走り、六花は悲鳴をあげて身を仰(の)け反(ぞ)らせた。

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