元彼と社長令嬢の婚約パーティに行く羽目になった小春。見返すためセレブな偽装恋人を雇うが、当日現れたのは仲介者で元同級生の維玖本人だった。実は御曹司だった彼は裏切り者達をやり込め、小春と即挙式を宣言。「きみに触れているのに、平気でなんていられないよ」挙式後すぐ強引に入籍され、昔から好きだったという彼に身も心も愛され溶かされ!?
小春が身じろぎすると、維玖は熱い吐息をひとつ落として、扇情的な表情で小春を見上げる。
「小春だけが、俺を男にしてくれる」
どこまでも蠱惑的な男の艶をまとって。
「だから俺も……俺だけが小春を女にしたい。今まで小春が誰にも見せたことがない顔をさせたい。気を張らずに自然に俺とセックスがしたいと思えるようになりたい。この先もずっと」
なんていう破壊力がある言葉と色気なのだろう。
維玖の執着を断念させるはずが、自分の方が維玖に囚われそうだ。
しかし――。
「興味を無くすよ、いっくんも。この格好は受け入れてもらえたとしても、わたしの胸には……傷があるの。それに女っぽい身体もしていないし……」
維玖は特に驚く様子もなく、優しく微笑んだ。
「俺は、その身体が小春のものであれば、なにも変わらず愛するよ」
「変わるよ。高校時代の同性の友達だって、実際に見たら腫れ物を触るような対応になったし。寛人さんも、傷が決定的な要因ではなかったかもしれないけど、結局は……」
「元彼の話はいらない。それに言っただろう。俺はあんな奴とは違うと」
「……っ」
「見せてよ。そのTシャツの下」
「え?」
「俺が、きみの裸を見て、引いて萎えると思っているんだろう? だったら確かめてみて。きみの直感が正しいのか、俺の言葉が正しいのか」
ああ、別れというものは唐突に訪れる。
維玖にとっては可愛い女の子のままでいたかったな……など思いながら、小春は覚悟を決めてTシャツを両手で捲り上げた。
痛いくらいの視線が胸に注がれ、小春は恥ずかしくて顔を横に背けた。
「可愛い傷じゃないのがわかったでしょう? だったら……」
シャツを下げる前に、維玖が動く気配がした。
右胸の上方に斜めについている傷に、維玖の唇が押し当てられたのだ。
「な……」
「こんな傷になるなんて、相当だったね。よく生きていてくれた」
(なんで……目を潤ますの?)
「この傷を愛しいと思っても、気持ち悪いなんて思わないよ。思うものか。……俺が代わってやれればよかった。そうすれば辛い目に遭わずに済んだだろうに」
何度も口づけられる。後悔と甘さと愛おしさを入り混ぜた表情で。
ほろりと小春の目から涙がこぼれ落ちた。
(ああ、最初から彼を好きになれたらよかった。そして彼が御曹司でなかったら、わたし……)
「小春?」
小春は涙を手で拭いながら笑った。
「ありがとう。いっくんは優しいね」
「優しいのは小春だよ。小春に救われたから、俺……」
柔和に細められたその眼差しには、昔の小春が映っているのだろう。
小春が覚えていない記憶こそが、彼の愛の原点だ。
……胸の傷が痛い。
痛みなどとうになくなっているはずなのに。
(ああ、最後まで……救われたな、いっくんに)
寂しいけどどこか満足した気分でシャツを下げようとしたら、維玖にその手を掴まれ止められた。
「なんで下げて、すべてが終わったような顔をしているの? これからだよ、小春との初夜は」
「え……。傷はOKだったにしても、貧弱なわたしの身体を見たでしょう?」
「小春は俺を煽ったんだよ。逆効果」
「は……?」
維玖の両手が小春の両胸を包み込み、やわやわと揉んでくる。
「や、ちょ……」
弾む息がすぐに甘さを滲ませると、維玖は嬉しそうに微笑んだ。
「感度もいい。大きさも柔らかさも……俺の好みど真ん中。味は……どうかな?」
維玖はうっとりとした顔を傾けると、小春の胸の頂きを口に含み、強く吸い立てた。
(や……いっくんが、わたしの胸を……!)
直に口淫されている卑猥な視覚効果に加え、ちりとした痛みがぞくぞくとした興奮にすり替わる。
「あぁあんっ」
こんなに感じたり、維玖とのセックスに興じたりする気はなかった。
なぜ維玖は失望してくれないのだろう。
「ああ、おいしい。食べ頃の果物みたいだ。もっと味わいたい」
維玖の舌先が蕾を忙しく揺らして、音をたてて吸う。
反対の胸は強く揉みしだかれ、刺激を待って半勃ちしていた蕾を、指先で強く捏ねられる。
ぞくぞくとした快感が止まらない。過敏に反応する身体はまるで自分のものではないようだ。
あまりに強すぎる刺激に、小春の嬌声が止まらない。
下腹部の奥に直結しているかのように響き、秘処がきゅんきゅんと疼いているのがわかる。
(やだ、わたし……こんなに感じすぎるなんていやらしい!)
秘処からとろりとしたものが垂れたのがわかり、足をもじもじとさせる。
こっそりとしていたのに、維玖には気づかれてしまったらしい。
維玖はゆっくりと体勢を変えて小春をベッドに押し倒すと、小春の両足を大きく開いてその間に腰を入れた。まるで正常位で繋がっているかのように服越しに秘処をぐりぐりと押しつけ、ここに入りたいのだと主張をしながら、ちゅうちゅうと音をたてて胸の先端を強く吸う。
そして時折、彼女の傷に舌を這わせるため、傷が性感帯かのように過剰反応してしまう。
(ああ、彼は……人から目を背けられていた傷まで、情熱的に愛してくれてる)
この喜悦感は、コンプレックスから開放され、女として目覚めたゆえのものか。
それとも、小春に自信をつけさせてくれる彼への感謝の気持ちなのか。
他になにかあるのか。
「あ、あんっ、そこ……気持ち、いい……」
小春を見つめる維玖の眼差しの奥に、焦がれるような切望の炎が揺れると、維玖は薄く開いた小春の唇を奪って舌を絡ませた。少し余裕をなくした性急な舌に応えながら、気づけばふたりの腰はいやらしく動き、早く埋め合いたいと意思を伝えているかの如く秘処同士を強く擦り合わせる。キスの合間に快楽に熱い吐息をこぼし、目が合えばまたキスをして大胆に腰を揺らす。
(服がもどかしい……)
そう思ったのは小春だけではなかったようだ。
維玖は、自分のカットソーを脱ぐと床に放った。
柔和な顔立ちとは対照的に、男らしい筋肉がついた、均整がとれた上半身に目が奪われる。
(着痩せするタイプなんだ。色気が一段と……鼻血出そう)
下も脱いでいるようだが、凝視するのも憚られて横を向いていると、裸になった維玖が笑いながら小春の頭を撫でた後、小春の隣に横たわるときつく抱きしめてきた。
ムスクにも似た甘さを持つ、彼独自の香りにくらくらする。
大きな身体ですっぽりと包まれると、羞恥以上に安心感と心地よさが勝って感嘆の息が出た。
おずおずと触れてみる維玖の背中は広く、男らしい精悍さを感じる。
(ああ、なんなのこの感覚。肌が触れ合うだけで、こんなに気持ちよくなるものだっけ……)
「俺だけを感じて。あの男のことなど、すべて忘れてくれ。俺の色に染まってくれ」
……彼がセックスをしたがったのは、優しさもあったのかもしれない。
小春が前を向いて進めるようにするために。
離婚するために彼を萎えさせようと、半ば勢いで始めた行為だったけれど、こんなに幸せに思えるセックスならば、離婚する前に一度だけ……最後まで抱かれてみたい。彼の男を感じたい。
この傷に口づけ、心の傷まで癒やそうとしてくれた……優しい王子様と出逢えた記念に。
(ご褒美と言うにはおこがましすぎるけど、いっくんが望んでくれるなら……いやではないのなら、わたし……彼の初めての女になりたい。それだけで、それ以上はなにも望まないから)
小春がこくりと頷くと、維玖は小春の腰に巻きつかせた手を滑らせ、ショーツごとショートパンツを抜き取った。そして小春の両膝を押しながら、足を左右に開く。
紫赤色の瞳が見つめているのは――。
「み、見ないで、そんなところ」
見られているだけで、その部分がじゅくじゅくと熱く蕩けてくる。
慌てて足を閉じようとするが、維玖の両手が膝を掴んでいるためにそれは叶わない。
「見たい、小春のすべて。これから俺たちがひとつになる大切な場所を」
(ひとつになる……場所)
それを想像した小春の秘処も胎内も喜びに奮えた。
小春の抵抗が薄らいだことを知り、維玖は指を伸ばしてさざめく花弁を左右に割ると、陶酔しきった吐息を漏らした。
「ああ、ここが小春の……。ピンク色で……きらきら光ってすごく綺麗だ。こんなにとろとろと蜜を溢れさせて……」
焦がれるようなため息をつくと、維玖は秘処にゆっくりと顔を埋め、熱い息を吐きかけながら、じゅるるると音をたてて一気に蜜を啜った。
「やっ、そんな汚いところ、だめ!」
抵抗して維玖の肩を押したがびくともしない。
驚いて慌てる小春に蠱惑的な流し目を送り、維玖は恍惚とした表情で舌をいやらしく動かして舐め取って見せる。
「美味しい……」
維玖は本気でそう思っているかのように、艶めいた顔で微笑む。その瞬間、色気がぶわりと広がり、当てられた小春は息が苦しくなった。
「お、美味しくなんて……」
そう言うのがやっとだ。
「美味しいよ、小春の蜜。熟成された濃厚な味……病みつきになりそうだ」
そして維玖は再び秘処に口づけた。
何度も重ねた唇が淫らな蜜を吸い、何度も絡ませ合った舌が花園を忙しく往復して蜜を掻き集め、飢え乾いた者のように、溢れ出る蜜をごくんごくんと嚥下する。
「や、ああっ、だめぇぇ!」
だめだと言いつつ、恥部を犬猫のように舐めさせて、強烈な快感を味わって悶える自分はなんと淫乱なのだろう。維玖にこんなことをさせている罪悪感と倒錯感ですら、自らの昂りにしてしまっている。
「ねぇ、そんなことされたの初めてなの。おかしくなっちゃうから、もう……」
自分に理性がまだ残るうちにと制したのに、小春を見遣る維玖の目が煌めいた。
「初めて、なんだ?」
「……うん。わたし……自分がどうなってしまうかわからなくて怖いの。だから……」
「だったら、小春が喜んでくれるように頑張るね」
「そ、そういう意味ではなくて!」
(逆に……やる気にさせてしまったような……?)
「いいよ、とことんおかしくなって。感じまくる……可愛い小春を俺に見せて。俺のやり方で、小春を心から気持ちよくさせたいから」
そう言い終わらないうちに、維玖は小春の腰を両手で抱えて蜜を強く吸い立てた。
「あぁぁんっ、だめ、それだめったら!」
そして舌を生き物のようにくねらせて摩擦し、花園に刺激を与えてくる。
小春は身を捩らせて、悲鳴のような声で啼いた。
「ん……ああ、すごい。こんなに舐めて吸い取っているのに、後から後から蜜がこぼれてくる。なんて可愛いんだ、きみは」
色気をまといながら甘く微笑む顔は、破壊力がありすぎた。小春の身も心もきゅんきゅんとしてしまい、さらに感度も上がった気がする。
「ふふ、初めてのくせにすごく感じてるね。でもこんなに蜜が溢れるのなら、小春の身体もつらいだろう? 蜜が湧き出る部分から、根こそぎ掻き出してあげるよ」
維玖は熱っぽい声でそう言うと、舌先を蜜穴につぷりと差し込んだ。
突然熱い異物が、刺激を欲していた蜜壷に侵入してきたため、中がひくひくと収縮して喜んでいる。維玖は頭を動かしながら、舌を深く抜き差しした。
「あっ、あああっ」
くねくねとした舌の感触に、ぞくぞくとした快感が止まらない。
蜜は止まるどころかより一層とろとろに蕩けて、こぽりこぽりと垂れ流している感覚がある。
それを余すところなく、維玖に舐めとられているのだと思えば、羞恥と興奮に小春は身を震わせた。
「いやらしいことをされて恥ずかしいのに、嬉しいって……気持ちよすぎるって……ああ、もう……もう、わたし……! やだ……ああ、イッちゃう……! いっくんが見てるのに!」
自分でもなにを口走っているのかわからないまま、迫り上がってくる不穏な激流に呑み込まれて、小春はぱああんと弾け飛んだ。
しばし放心状態のまま、荒い呼吸が落ち着かない。
(セックスって……もっと静かなものではなかったの?)
前戯の段階でこうなら、この後はどうなってしまうのだろう。
ぼんやりと考え込んでいると、維玖が立ち上がってなにやらがさごそと音をたてた。
そちらに顔を向けている元気もなく、ベッドに四肢を投げ出したまま必死に呼吸を整えていると、維玖が戻ってきた。そして小春の隣に身体を横たえ、小春をぎゅっと抱きしめて唇を奪った。
舌を濃厚に絡ませ合いながら、維玖は小春の足を持ち上げて、猛々しく昂った彼自身を小春の秘処に滑らせてくる。
(熱くて……大きい……)
思った以上に猛々しい熱杭が、まだ甘い余韻が残る秘処の表面を往復する。
そのたびに目眩がするほどの歓喜と快感が込み上げ、うっとりとした声が漏れてしまった。
そんな小春の耳元に、維玖が囁く。
「小春……俺、もう限界なんだ。小春の中に挿ってもいい?」
余裕のない掠れきった声が、子宮を震わせた。
ふと床に、封が切られた避妊具の包みがあることに気づく。
女に欲情しないと言っていた維玖が、避妊具を用意していることを怪訝に思っていると、それを察した維玖が苦笑する。
「小春と暮らしているんだ。俺が暴走する可能性はゼロじゃない。困った事態にならないように先に用意していた。どうせ小春と結婚したら使うことになるし。もちろん、合意の元だけど」