飲み会で酔いつぶれ、気づけば他社のエリート営業である広瀬と一夜を共にしていた千春。爽やかな笑顔で交際を迫ってくる彼に逃げ腰の千春だったが、広瀬の情熱的で甘い態度にほだされ、お試しで付き合うことに。過去の経験から恋愛に臆病な千春を、蕩けるくらいの愛情で包んでくれる広瀬に心が傾きはじめるが、トラウマの原因である元彼が現れて…!?
「……広瀬さん」
「なに? 言っておくけど、絶対別れないよ、俺は」
「いえ、しばらくここでお世話になろうかと……甘えてもいいでしょうか」
母が亡くなってからずっと、誰にも迷惑をかけないようにと真面目に生きてきた。誰かを信頼して甘えるのは、千春にとっては勇気がいることだ。
でも広瀬には素直に甘えようと思った。彼がそれを心から望んでくれているのが伝わるから。
うれしそうに笑う広瀬に、これで正解だったのだと学んだ。彼の厚意を、きちんと受け取ることができたのだと。広瀬が笑うと、千春もうれしい気持ちになる。
「着替えとか、必要なもの全部取りに行こう。今日からここで暮らせるように。……でもその前に、千春を甘やかしたい」
「ひゃあっ……」
急に勢いよく抱き上げられて、変な声が出た。長身の彼に横抱きにされると、ずいぶん床が遠い。千春は思わず広瀬の首に腕を回す。そのままキスをしてくる彼はご機嫌だ。
「今日は選んでいいよ。このまま寝室に行くか、シャワーを浴びるか」
「……シャワーがいいです」
先ほどまでバーベキューの準備をしていて、浦田との再会で嫌な汗もかいた。このまま寝室は絶対に却下だ。
でも、千春はすぐにその言葉を後悔することになった――着ているものを手際よく脱がせ、自分もどんどん脱ぎ、一緒にバスルームに入ってきた広瀬を見て。
昼間のバスルームは、電気をつけなくても充分明るい。
多少湯気で視界がぼんやりしているものの、小さな観葉植物が置かれた曇りガラスの窓からは、初夏の日差しが差し込んでいた。千春は戸惑いながら彼を見上げる。
「一緒に入るんですか……?」
「うん。ゆっくり入ろうよ、お湯も張ったし」
いつのまにかバスタブにはなみなみと湯が張られている。用意されていたバスソルトに気を取られているうちに、口づけが落ちてきた。
「ふ、ぁ……っ、広瀬さん……」
「ん……」
背中に当たるシャワーの音と、口づけの音が混じった。
くちゅ、くちゅっという濡れた音は、車の中でこっそり交わしたキスを思い出させる。短いキスだけですぐに熱を持つ身体が恥ずかしい。
「かわいい顔。キス、気持ちい?」
頬が撫でられ、自分からその手に顔を擦りつける。大きな手に包まれて安心した。
浦田に掴まれた腕に、広瀬がそっと唇で触れる。
どうでもいいものに触れるときの雑な手つきで、無頓着に掴まれた腕。もうそこに痛みはない。それなのに広瀬は、心まで癒やすように何度も丁寧に口づけた。
「もう俺のものだよ、千春」
「……はい」
「この身体も、心もだ」
「あ……っ」
彼の唇と指が、ゆっくり身体の線を辿る。腕から肩へ、首筋を通って胸元へ。薄い腹を撫でた手が、千春の腰を力強く抱き寄せた。
「他の男に傷なんてつけさせない。俺の大切な唯一の女性だって、もっと自覚して」
「は、い……っ、んんっ……」
「何があっても絶対に守るよ。だから千春も、ちゃんと俺を頼ってくれ」
見つめ合って、唇が重なる。真摯な言葉と熱いキスに、身も心も溶かされそうだ。
ふらついた千春を、広瀬はベンチカウンターに座らせた。大人でもゆったり座れる奥行きがあるベンチカウンターは、座面がひんやりしていて火照った身体に心地いい。
床に跪いた彼が、胸の膨らみに顔を埋める。熱い吐息に、千春はぶるりと震えた。
「あっ……! ん、あぁ……っ」
すでにぷっくりと膨らんでいた先端が、彼に弄られる。片方は指で、もう片方は舌で。尖らせた舌先でちろちろとそこを嬲りながら、広瀬は上目遣いで千春を見つめた。
「もう硬くなってる」
「んっ……」
「かわいいな、そんなに感じて……」
「んぅッ……や、それっ……」
唾液で濡れた先端が指でつままれ、ぬるぬると上下に扱かれた。彼に触られるとすぐ反応してしまう胸の先は、痛々しいほど硬くなって愛撫に応える。
「あ、あっ……ん、ひろせ、さ……あああッ!」
両胸を寄せて、尖りを左右一緒に含まれた。彼の口内で、敏感な胸の先がぐちゅぐちゅと転がされる。やわらかな舌が熱い。あまりの快感に、千春は仰け反った。
「や、両方はっ……あ、んんっ……!」
「ん、千春……」
「あ、あっ! も、やぁっ……!」
ちょっと舐められるだけでおかしくなりそうなそこを、広瀬は執拗にしゃぶり続けた。時折ピンと舌で弾かれ、やさしく噛まれて、身体の奥がきゅうきゅう疼く。
苦しいほどの快感に高められ、いつのまにか全身が敏感になっていた。広瀬の髪がサラサラと肌に当たるのにも感じてしまい、身悶える。
「広瀬さんっ、はぁ……っ、ん、あ、あっ……」
「下も触ってほしい?」
「んっ……さわって、ほし……っ」
ちゅうっと強く吸ってから、胸の先が解放された。赤く熟れたそこに、広瀬がふっと息を吹きかける。吐息にさえ感じるほど高まった身体は、それだけでビクビクと震えた。
「んんっ……!」
「真っ赤。痛かった?」
「い、たくなっ……ん、あぁんっ」
すっかり硬くなった尖りを確かめるように、指先ですりすりと撫でられた。彼にかわいがられることに慣れた胸の先は愛撫に従順で、千春の秘部を痛いほど疼かせる。
――気持ちいい……でも、そこばっかりでもどかしい……。
触ってほしいとねだったのに、広瀬が足のあいだに触れる気配はない。早く触ってくれと急かすように、蜜口からトロリと蜜が零れ出す。
そんなものでバスルームを汚してしまうのは気が引けたが、愛撫を待ちわびる花弁からは蜜が溢れて止まらない。焦れた千春は、彼の手を自分の膝に導いた。
「おねがい……っ、広瀬さん……」
広瀬の目を見られないままに、震え声で乞う。でも、そんな拙い誘惑にも効果はあったらしい。小さく喉を鳴らした広瀬が、膝から太腿までつーっと指で辿っていく。
「……自分で足開いて、千春」
触れるか触れないかくらいのタッチで足を撫で回しながら、彼が囁いた。千春はもう思考もグズグズで、広瀬の言葉に逆らえない。緩慢な動作で、おずおずと膝を開く。
「……こう、ですか?」
「もうちょっと」
「や、それはっ……あ、ああっ!」
両足がぐっとベンチカウンターに上げられた。しっかりと足が開かれ、秘部が晒される体勢だ。
そこまでされると思っていなかった千春は、頭が真っ白になった。目の前で跪く彼からは、きっと何もかも見えてしまう状態。慌てて足を閉じようとしたのに、「暴れると危ないよ」としっかり足を押さえつけられる。
「やだぁ……っ、見ないで……!」
「駄目。俺が千春をこんなに濡らしたと思うと興奮するし……もっとぐちゃぐちゃにしたくなる」
「んんんッ……!」
言葉どおり興奮した様子の広瀬が、花弁に指を伸ばした。
彼の指は蜜が溢れる割れ目を上下に行き来し、くちくちと音を立てて蜜壺の入り口を弄る。もっと強い快感を求めてヒクつく蜜口を見て、広瀬は熱っぽい眼差しで小さく笑った。
「ほしいんだ。かわいい……」
「あっ、広瀬さ……それだめっ、ああっ!」
「大丈夫、気持ちいいことしかしないよ」
「ん、っ……あ、あああッ」
広瀬がぐっしょりと濡れそぼった花弁に舌を這わせる。
男性の秘部への奉仕は何度も経験があるが、自分がされるのは初めてだ。その未知の愛撫は、脳まで蕩けるような快感だった。
形のいい唇が蜜を啜り、肉厚な舌がねっとりと敏感な場所を舐め回す。千春は無意識に腰を揺らして、男の奉仕に溺れた。
「ひ、ぁっ……や、あ、あぁん!」
「もうトロトロ。自分でも分かる?」
「んんっ、は……っ、ああッ……」
広瀬の舌が蜜口から入ってきて、内襞をぐちゅぐちゅと掻き混ぜた。自分でも触ったことがないような場所を舐められて、羞恥と快感で目眩がする。
それなのに、愛撫を喜ぶ蜜襞はもっともっととうねって、彼の舌を奥へと誘い入れた。
快感を貪る自分の身体が恥ずかしい。広瀬の口淫を止めようとしたはずの手は、今は頼りなく彼の髪を撫でるだけだ。
「どんどん溢れてくる。もっとほしがってよ、千春……」
「あ、あ……っ、や、あっ……!」
広瀬の口元からは、くちゅ、ぐじゅっと熟れた果実を押し潰すような音がかすかに聞こえた。その水っぽい音に、自分がどれほど濡れているかを思い知らされる。
「広瀬さん……っ、それ、もうっ……んんんッ」
「ん……」
「ふ、ぁ……っ、あああぁっ!」
彼の舌先が、不意にぐりっと花芽を押し潰した。いきなり決定的な刺激を与えられて、千春はあっけなく達してしまう。
深い絶頂に身体が震え、蕩けそうなほど濡れた花弁が収縮するのが、自分でも分かった。
それなのに広瀬は休ませてくれない。舌先で淫らな芽を嬲り、蜜壺に指が入ってくる。くちょくちょと音を立てて気持ちいいところを探られ、千春は半泣きで首を振った。
「や、もぅ……っ、イってるからっ」
「またイっていいよ」
「あああっ、やぁ……っ、ひろせ、さん……!」
絶頂の名残に蠢いている蜜壺は、新たな快感を期待するようにうねって、彼の指を歓迎する。弱いところをやさしく擦られ、千春はビクッと顎を跳ね上げた。
「んっ、それ……だめ、何か出ちゃいそうっ……」
「うん……出していいよ」
「ほんとに……っ、あっ、出ちゃう……っ」
「いいから、ほら」
「あっ、だめ、駄目……っ、あああぁ……ッ!」
長い指に中のいいところを責められて、我慢できなかった。激しく達すると同時に大量の蜜がぷしゃっと溢れて、彼の手を濡らす。
「や、だ……わたし……っ」
「ん……すごいな、こんなに潮吹いて」
「……っ、や、ぁっ……」
蜜口から指を抜いた広瀬は、見せつけるようにことさらゆっくりそれを舐めた。色っぽく目を伏せた彼が、自分の出したものを余さず舐め取っている。
その恥ずかしい行為を止めたいのに、深い絶頂を味わったばかりの身体は、ぐったりと壁に寄りかかっているのが精いっぱいだった。力が抜けて閉じかけた足が、広瀬の手でまたグイッと大きく開かれる。
「嫌? じゃあ、こっちを舐める」
「ん、ぁ……っ、もうっ、あああっ……」
音を立てて花弁に吸いつかれて、千春は背を反らした。
広瀬は千春を甘やかしたいと言ったが、過ぎた快感は責め苦のようだ。舌と指で念入りに愛撫された身体は、高みからなかなか下りてこられない。
「ああ……っ、ふ、ぁっ、それ……っ」
尖りきった花芽がちゅうっと吸われる。興奮して赤く熟れたそこは、舌先でつつかれるだけでひどく感じた。クリクリと根元から舐め回され、またすぐに達してしまいそうだ。
初めての口淫は、強烈な快感で千春を翻弄した。どこを舐められても気持ちよくて、腰が震えてしまう。
それでも最奥まで貫かれる快感を知っている身体は、舌と指だけではどこか物足りない。熱が籠もったままの身体の奥が、じんじんと疼く。
千春はせわしない手つきで広瀬の髪を撫でた。彼が顔を上げて、ふっと笑う。
「ここ、ほしい?」
「んん……っ」
彼の指が二本、蜜襞を掻き分けて中に入ってくる。気持ちいいところに擦りつけるような動きで出し入れされ、千春は甘いため息を零した。
早くほしくてたまらない。広瀬の問いかけに、素直にコクコクと頷いた。
彼は脱衣所に置いてあった避妊具で手早く準備を済ませ、千春をバスタブの縁につかまらせた。大きく膨らんだ先端が、後ろからゆっくりあてがわれる。
「千春……俺ももう、何もかも千春のものだよ」
「……広瀬さん」
「何があっても離さないし、何も心配しなくていい」
後ろから抱き込まれて、彼の唇がうなじに何度も触れる。それはやさしくて甘い口づけだった。
こんなふうに身動きもできないほど抱きしめられていることに、幸せを感じる。広瀬に愛されていなかったら、浦田との再会はもっと不安な、苦しい出来事だっただろう。
「愛してるよ、千春」