「他の男には見せたらダメだよ」
クールな見た目だけど、可愛いものが大好きな美玲。彼氏から振られてしまった誕生日に、高校の先輩・真宏と思いがけない再会を果たす。密かに想っていた真宏から、当時された甘くて強引なキスが忘れられない美玲は、誰と付き合っても感じなくなっていて…。酔った勢いで真宏にその悩みを打ち明けると、「俺で試してみない?」と10年ぶりの熱情を教え込まれて!? 独占欲を露わにした彼の愛撫に溺れていき――。
「リクエストはある?」
「え?」
「不感症攻略のために、どんな風にされたいとか一ノ瀬さんの希望があれば教えて」
「ど、どんな風……と言われても」
いつもはリクエストされる側だったため、はじめて希望を聞かれて戸惑う。
(私がされたいこと……)
考えて、すぐに思い浮かんだのがひとつ。
だが、美玲はギュッと目を瞑って心中で頭を振った。
(強引に攻めてほしい、なんて恥ずかしくて言えるわけない!)
いまだ処女の自分に性癖暴露は難易度が高すぎる。
BARでは苛立ってつい天崎のせいだと口走ったが……。
(あ、待って。これなら……)
攻められたい、よりもいくらかお願いしやすそうな希望。
今日まで美玲の心を捕らえて離してくれなかった、あの日と同じような――。
「キスが、したいです」
ドクドクとうるさく騒ぐ心音の合間に、天崎の囁くような声が聞こえる。
「わかった」
その直後、耳朶を啄まれ、頬に熱が集まった。
間近に感じるムスクの香りと相まってくらくらする。
「ここでいい?」
掠める吐息がこそばゆく、美玲は小さく身を捩った。
「ち、違います」
「じゃあ……こっち?」
問うた天崎の薄い唇が、今度はうなじに押し付けられる。
美玲がまた「違う」と否定すると、天崎はくすっと笑った。
どうやらわざとやっているらしい。
けれど、そんな戯れのおかげか緊張が僅かに緩み、強張っていた身体から力が抜ける。
するとその時を待っていたかのように、天崎の手が美玲の顎を優しく掬って、肩越しに唇がそっと重なった。
軽く啄ばむようにされると、優しいリップ音が奏でられる。
それは、あの頃と同じようなキスの始まり。違うのは、美玲が少しだけ経験を重ねたため、鼻で息継ぎができることだ。
唇を合わせながら身体を天崎に向き合わせると、口づけがしっとりと深まる。
(私……天崎先輩とキス、してる)
感触を確かめるように角度を変え、唇を押し付け合う。
やがて、天崎の舌先が侵入を尋ねるように美玲の唇をなぞった。
乞われるままに口を開くと、熱を帯びた舌が差し込まれる。
同時に、大きな手が後頭部に添えられて、隙間なく合わさった唇の中で天崎の舌が絡まった。
湿り気を帯びた音が咥内で響き、漏れる呼気ごと唇を食まれる。
口づけは徐々に荒々しさを纏い、美玲を蹂躙するようにかき回す。
(ああ、このキスだ)
そう思った刹那、下腹の奥に熱が灯った。
キュンと疼くような感覚に、美玲の背中が震える。
「キス、気持ちいい?」
両腕で腰を抱き込んでいた天崎の片手が、官能を高めるような甘い手つきで背中を擦る。
「は、い……」
とろけた瞳で見上げると、天崎はうっとりと細めた双眸に悦びを滲ませた。
「君のその顔が、ずっと忘れられなかった」
天崎が嬉しいと囁いて、また唇が塞がれる。
(先輩も、あの日を覚えていてくれたなんて)
自分だけが過去を忘れられず、心を縛られていたと思っていた。けれど、天崎の記憶にも残っていたと知り、心が歓喜に震える。
「今夜はたくさん見せて。君の、可愛い反応」
言われ慣れていない「可愛い」という言葉にはにかんでいるうちに、身体を横抱きに持ち上げられて美玲は目を丸くする。
「えっ、あの」
「ベッドに行こう。立ったままじゃつらくなるだろうし」
それはつまり、快楽によって立っていられないほどの状態になる、ということだろうか。
「その心配は無用かも」
「ひどいな。俺じゃ君の身体は反応しないってもう決めつけるんだ?」
キングサイズのベッドに下ろされた美玲は、自分の失言に気付いてハッとした。
「そ、そういうわけじゃ……ただ、今までダメだったのに、そんな状態になれるような気がしなくて」
「そう? キスが気持ちいいって思えたなら、望みは十分あると思うけどな」
ジャケットとネクタイを外した天崎が「ほら、もう一度しよう」と囁き、形のいい唇が再び目の前に迫る。
今度は最初から嚙みつくように唇を押し付けられ、その勢いのままベッドに組み敷かれた。
歯列を割って入り込んできた舌が、美玲の上顎を擦り、舌裏をなぞって絡まる。
呼吸さえも奪うような深い口づけに翻弄され、息継ぎの仕方を一瞬忘れかけた美玲は顔を逸らした。
しかし、満足に息を吸えないうちにまた食らいつかれて塞がれる。
「んんっ……まっ……せんぱ……!」
トン、と固い胸板を叩くと天崎の唇が僅かに離れた。
「ん?」
「はぁ……は……息、うまくできなくて」
「前に教えただろう? 鼻で息を吸うんだ」
やってみろと言うように再度唇が重なって、美玲は肺を空気で満たそうと必死に応え続けた。
「そろそろ、キス以外にも気持ちよくなれる場所、探してみようか」
唇が頬に押し付けられ、リップ音を奏でながら首筋へと移動していく。
「身体に触れるよ」
緊張しつつも小さく頷けば、天崎は美玲の鎖骨に口づけを落として、右手をカットソーの中に滑り込ませた。
ゆるゆると脇腹を這い上がり、早鐘を打つ胸に到達すると、レースの上から膨らみを包む。
天崎の熱い呼吸が鎖骨を掠め、くすぐったさに身を捩ると硬い指先が下着をずらした。
顔を出した色付きはすぐさま捕らえられ、撫でるように甘く転がされる。
じんと痺れる感覚がして、美玲は唇を引き結んだ。
「勃ってきてる。気持ちいい?」
「た、ぶん……」
今まではっきりとした快感を得たことはないが、もどかしいようなぞわぞわとした感覚がある。
「なら、このまま続けよう」
そう告げた唇が未熟な突起を薄いカットソー越しにぱくりと食み、歯で優しく甘嚙みした。その途端、腰がびくりと勝手に跳ねる。
舌先でくにくにと押され、唇に挟まれ、唾液に濡れた尖りを目の当たりにした美玲は、その卑猥な光景に頬を赤く染めた。
(まるで、私の身体の反応を見せつけるみたいに……!)
強引にされたわけでも、言葉で攻められたわけでもない。
ただ、服越しに天崎の口で愛撫されただけ。
だのに、大きな手で乳房を掴み、勃ち上がったそこに舌を押し付けながら美玲を見上げる双眸がいじわるそうに細められた刹那、身体がぶるりと戦慄いた。
天崎の唇がもう片方の先端を口に含み舌で弄る。
先ほどと同じように攻められ、濡らされ、さらには揉み込まれて爪でひっかかれて。
次々と施される愛撫に、腰が浮いて腹の底がぎゅうっと締まった。
それは高校時代、天崎とのキスのあと、思い出すだけで身体が反応していたのと同じ。
当時はわからなかったが、身悶えるようなあの感覚が快感だとしたら。
(私、やっぱり先輩じゃないとダメなのかも)
今までの恋人に反応しなかったのは、性の趣味嗜好の不一致とトラウマによるものだけではないのでは。
「こっちもぷっくりしてきた。気持ちいいって俺に伝えてるみたいで可愛いな。君のとろけた顔も可愛い」
可愛いと連呼され、ただでさえ恥ずかしいというのにさらに頬が火照ってしまう。
「ね、直接触ったらもっと気持ちいいと思うけど、どうする?」
尋ねながら美玲を見上げるその瞳はどこか楽し気だ。
(どう……って、そんなの言えるわけない)
キスでギリギリの線だったというのに、ここから先はどれも口にし難いことばかりだ。
「言って。俺にどうされたいのか。君の口から聞きたいんだ」
耳元で囁いた唇が耳朶を優しく嚙む。
「ほら、早く」
耳孔を熱い舌先で犯された美玲は、天崎のおねだりに抗えず戸惑いながら口を開く。
「ちょ……直接、してください」
「どこを?」
さらに突き詰められて、喉の奥でううっと呻いた。
(先輩、わざと言わせようとしてる……!)
けれど、それによって不思議なほど昂揚している。
美玲は脳が沸騰しそうなほどの羞恥に襲われながら、震える唇を開いた。
「む、胸……の、先を」
か細い声でたどたどしく告げると、顔がこれ以上ないほどに熱を孕む。
天崎は、朱の差した美玲の頬に口づけてクスクスと笑った。
「いいよ。今日はそれでOKにしてあげる」
(〝今日は〟……?)
囁いて甘やかした声に疑問が浮かぶと同時、天崎の手が美玲のカットソーを捲り上げ、緩めた下着を押し上げた。
どくどくと鳴って止まない双丘に、天崎の熱い眼差しが注がれる。
「あ、あんまり見ないでください」
「それは無理だな。見惚れるくらい綺麗だし」
天崎の手が、弾力のある膨らみを包み、突起を指で挟みながらゆっくりと捏ね回す。
すると、再び疼く感覚がして、美玲は短い吐息を零した。
「君のこの身体を見て触れたやつがいるなんて、いい気がしないな」
どうして、と尋ねる前に、先端を口に含まれ、質問の代わりにくぐもった声が漏れる。
「ここ、俺が触るたびに尖って可愛い」
天崎の温かな舌先が桃色の頂を押し潰し、擦り、大きな手がもう片方の胸も揉みしだく。
手のひらで突起を転がされ、交互に吸い付かれると呼吸が段々と浅くなる。
「よくなってきた?」
「わからないけど、さっきからずっと変な感じがしてて」
「変、か。じゃあこれは?」
天崎は、口内で突起を転がしながら手を美玲の下肢へと移動させ、スカートの上から下腹部を撫でた。
ぐっ、ぐっとお腹を優しく押されると、奥でくすぶっていた妙な感覚が強くなってくる。
「な、なにこれ先ぱっ……」
戸惑いながら、胸への口淫を続ける天崎を見る。
すると、興奮を滲ませた瞳と視線がぶつかった。
「子宮、気持ちいい?」
どうやら、子宮を外側から押して刺激しているらしい。
(ここも性感帯なの? むずむずが止まらない)
胸と共に意外な場所を攻められ続け、美玲の吐息が熱を帯び、思考が溶けていく。
「やっぱり……君のその顔そそるな。もっと見たくなる」
天崎が、あの時と似た恍惚とした表情で美玲を見つめ、腹を愛撫していた手をさらに下降させた。
どこに向かっているか悟った美玲は、緊張に身体を強張らせる。
(また反応してなかったらどうしよう)
元彼たちの時とは違う感覚はある、が。
『全然濡れない。なんで? 俺としたくない?』
『やっぱり僕たち相性悪いのかな』
言われると焦り、さらに反応しない悪循環に陥った日々が、走馬灯のように脳裏を過ぎる。
今、天崎はお試しで触れているが、不感症だとわかっていても反応がなければ落胆するかもしれない。
ひとり不安に駆られているうちに、天崎の指がスカートの裾から入り込んだ。
止める間もなく白い腿を這い上がって、ショーツの上から恥丘に触れる。
枯れることのない羞恥が襲い、美玲はぎゅっと目を瞑った。
あわいをなぞる指先が中心をくっと押し込んだ刹那、天崎が短く息を吐く。
「濡れてる」
「えっ……嘘っ」
「本当。ほら」
天崎の長い指がクロッチをずらして侵入し、直接肌に触れる。
すると、粘り気のあるぬめった感触がして、美玲は目を瞠った。
(私の身体、感じることができたの?)
天崎に触れられて、ようやく前進できた。
一生このままだと諦め始めていた美玲の胸が、喜びと安堵でいっぱいになる。
「こうなるのは初めて?」
「は、はい!」
「そっか。じゃあ、もっととろとろになろう」
天崎は、美玲の白い足からショーツを抜き取り、再び指をあわいに這わせた。
そこは、指を少し動かしただけで水音が立つほどしとどに濡れており、美玲は自分の身体の変化に戸惑う。
「ここはどう?」
秘部の小さな芽を指の腹が優しく擦り上げる。
その途端、ぞくぞくと背筋からなにかがせり上がり、美玲は目を白黒させた。
「や、なに、これ。こんなの知らないっ」
それは、生まれて初めての鮮烈な快感。
腹の奥を熱が満たし、じっとしていられず身を捩って足を閉じようとした。
だが、天崎の手がそれを阻止する。
「ダメだよ。今まで知らなかった気持ちいいことたくさん教えてあげるから、足、ちゃんと開いてて」
耳元で囁いた天崎の手が美玲の太腿を撫で、ゆっくりとMの字を描くように足を開かせた。