元カノを一途に愛し続けるイケメン社長×甥の子育てに奔走する彼女
独りで幼い甥を育てながら老舗和菓子会社で働く碧生の前に、コラボ先の社長になった元カレ・勝利が現れた。五年前と変わらず一途に溺愛してくる勝利に戸惑いつつ素直になれない碧生だったが、本当はずっと彼のことが忘れられなくて…。「もっときみを俺だけのものにしたくなる」甥とも打ち解けて着々と外堀を埋める彼に、熱烈なプロポーズまでされ…!?
舌を絡ませたのは、どちらからだったのか。
ちゅ、くちゅ、と雨音よりも近くで淫靡なキスが響く。
体の内側に溜まっていく熱で、脳まで溶けてしまいそうな甘いくちづけ。
離れようとすると、勝利が両腕で碧生を強く抱きしめてくる。
逃がさない、と彼の唇が告げていた。
いつも優しい彼が、強引に続きを求めてくれる。
それが嬉しいだなんて、どうかしているのかもしれない。
「ぷはっ……」
長すぎるキスに、思わず顔をそむけて酸素を欲した。
「駄目。もっとして」
「勝利、んっ……」
ぐいと引き寄せられ、またキスに引き戻される。
スーツのジャケットが、フローリングの上に落ちていた。
ブラウスのボタンがはずされていく。
ひとつ、またひとつ。
素肌があばかれていく感覚に、碧生は小さく身震いする。
「碧生が言い出したことだよ。俺の心はわからないけど、碧生を抱きたいと思ってるのは伝わってるんだろ? だったら、もっと……」
背中で、ぷつりと小さな音がする。
同時にブラが緩んで、キャミソールごとずらされてしまう。
あらわになった乳房が、フローリングに仰向けになる勝利の上で揺れた。
「もう、こんなになってる」
長い指が、胸の輪郭をかすめる素振りでなぞっていく。
彼の腰を跨ぎ、押し倒したような格好で、碧生は必死に上体を起こそうとした。
けれど、胸の先端に勝利がキスしたとたん、がくんと大きく体が震える。
「ぁ、あっ……」
「ここ、舐めてほしかった?」
赤い舌がみだらに躍る。
かすかに隆起した部分を、根元から優しく舐め上げて、勝利が甘やかに笑った。
「かわいい。反対も舐めてあげないとね」
「んっ……、ぁ、勝利……っ」
固く力を入れた舌の表面で舐られると、どうしようもないほど腰の奥が疼く。
両手で乳房をあやされて、やわらかく指でこねられる。
大きく口を開けた勝利は、色づいた部分をたっぷりと口に含んで優しく吸い上げた。
「ああっ……!」
腰が上下するのを止められない。
スーツのスラックス越しに、彼もまた興奮しているのが伝わってくる。
「そんなに動いたら、足首が痛いよ。碧生、動かないで。俺がちゃんと感じさせてあげるから」
「や、そんな……んっ……」
逃げようとしたのを察したのか、勝利は胸の先を指できゅうっと強くつまむ。
「ひ、ぁあッ」
そのまま糸を撚るようにくりくりと弄られて、体の奥にもどかしいまでの情欲が溜まっていく。
自分から腰を押しつけて、高ぶる彼のものにこすりつける。
――こんなの、おかしくなっちゃう。
「碧生から、押しつけてくれるんだ? 熱くなってるの、わかるよ」
「勝利だって……、んっ、ぁ、もぉ、胸ばっかり……やだ……」
「ほんとうに? 碧生の体はそう言ってないみたいだけど」
左胸を甘噛みしながら、右胸を指であやす。
彼の舌と指で翻弄されて、碧生はあえかに体を震わせた。
彼の顔にこぼれた髪が、毛先まで波を打つ。
――胸だけなのに、どうしよう。わたし、このままじゃ……。
体の内側にある空洞が、ひりつくほどにうねっていた。
ちゅ、ちゅうっと強く吸い上げられて、碧生は喉をそらした。
「んっ……ぁあっ、あ、あっ」
腰をがくがくと震わせながら、胸だけで達してしまう。
開いた脚の間で、甘い蜜が下着を濡らすのがわかった。
「……これだけで、イッちゃった?」
くたりと倒れ込んだ碧生の耳元で、勝利が笑う。
吐息まじりの声が、いつもより甘く濡れていた。
「ち、が……」
「からかってるわけじゃないよ。俺も、碧生にこすられてイキそうだった。簡単にイッちゃう碧生、かわいい」
ちゅ、と耳たぶにキスされて、含羞に頬も鎖骨も赤く染まる。
「この前、挿れなかったから……。今日は、いい?」
「聞かないで、そんなの」
「合意がほしいんだよ。ちゃんと、碧生も俺をほしがってくれてると思いたい」
手のひらに収まる薄く丸いパッケージを、勝利が取り出した。
蓋部分をぺりりと剥がして、中からそれを指でつまみ上げる。彼は「ねえ、これ、使っていいの?」と碧生に微笑みかけてきた。
「……使わないほうが、困る」
「それを言い換えて。もっと、積極的に」
「使って、勝利」
五年前なら、こんな会話は不要だった。
触れ合うことが当たり前だったのもあるけれど、慣れない碧生に勝利はいつだって先手を打ってくれたから。
離れていた間にも、時間は過ぎる。
時間が過ぎるということは、世界の認識も常識も変わるということにほかならない。
あるいは、勝利の性癖が変化することだってありうる。
それが、五年という時間の長さだ。
「ストッキング、脱がせるよ。腰を浮かせて」
「自分で……」
「駄目だよ。俺が脱がせたいんだ」
スカートはそのままに、内側だけがつるりと剥かれていく。
内腿に空気が触れて、自分の肌の熱さを知る。
避妊具を着けた勝利は、劣情の根元を握って先端を亀裂に這わせてくる。
「ん、ぁ……っ」
すでに濡れた間は、張り詰めた亀頭でなぞられて、くちゅくちゅと音を立てた。
「まだ挿れてないのに、入り口が吸いついてくるみたい。碧生、もうほしい?」
「いちいち、言わないで……、あ、っ……」
「俺はほしいよ。それにね、言葉にするのって大事だって碧生が教えてくれたんだ。言わなくてもわかるって、伝わるって勝手に思ってた。一緒にいたいと思ってるの、わかってくれてると思っていたのに、そうじゃなかった」
――それって、五年前の……?
尋ねるより先に、切っ先が碧生の中にめり込んでくる。
みちみちと内側から押し広げられて、うなじがぞわりと粟立った。
「言わないと駄目だよね。だから、ちゃんと言う」
上半身を起こした勝利が、左手で碧生の背を抱き寄せた。
耳元に、彼の唇が近づく。
吐息が産毛をそよがせた。
「碧生、好きだよ。もっと奥まで俺を受け入れてくれる?」
「んっ……、あ、あっ、勝利……っ」
返事をするよりも早く、自分の体重を支えきれずに碧生は腰を落とした。
ずぶずぶと、彼が体の中心に突き立つ。
「ははっ、言葉で言ってもらいたかったのに、体で答えてくれたんだ? 碧生のほうから、俺をのみ込んでくれるの、嬉しいよ」
――違う。これは、体勢のせいで。
言い訳をする頭の中で、それだけが理由ではないことを碧生も知っていた。
ほしいのは、碧生も同じだった。
もう我慢できなくて、彼がほしくて。
「勝利、もっと……」
自分から、キスをせがむ。
「うん、もっとつながろう。奥まで、碧生とひとつになりたい」
両腕で碧生を抱き寄せた勝利が、上半身を密着させて首筋にキスする。
久しぶりなせいもあって、なかなか体が受け入れない。
じゅうぶん濡れているのに、半分ほどで腰が引けてしまう。
「……なんか、思い出しちゃうな」
碧生の髪を撫でながら、かすれた声で彼が言う。
もしかして、と思い当たることがあった。
――だって、わたしもあのときみたいだなって思っていたから。
顔を上げ、勝利と目を合わせる。
言葉はなくとも、何を思い出しているのか、お互いに通じ合っているのが感じられた。
つきあいはじめて、三カ月。
初めて勝利に抱かれた夜のこと。
「碧生も、忘れてない?」
「忘れるわけない。だって、わたしは、その……」
生まれて初めて、体の内側に他者を迎え入れた。
あのときの緊張も、不安も、期待も、そしてかすかな痛みも、碧生の大事な思い出だ。
――勝利しか、知らない。
別れてからの五年間、誰ともつきあわなかった。
だから、碧生にとって初めての相手が最後の相手なのだ。
「碧生は? 続き、聞かせて」
軽く腰を揺すって、勝利は浅瀬を往復する。
「んっ……、ぁ、やだ、待っ……」
「待てないよ。ねえ、碧生、続きが聞きたい。俺に初めて抱かれた夜のこと、覚えてるんだよね? 忘れなかった理由を教えて」
「ぁあッ……」
次第に自分から腰を振ってしまう。
奥まで届かないからこそ、もどかしさにおかしくなりそうだった。
「わ、たし……、勝利と、しか……」
「俺としか?」
「ぁ、あっ、んっ……、し、てな……い、から……っ」
「ほんとうに?」
彼が碧生の細腰を両手でつかむ。
手のひらのぬくもりに、一瞬で心がやわらかくなるのを感じた。
そして、次の瞬間――。
「ほん、と……っ……、あ、あァッ……!?」
ずぐんっ、と最奥まで彼の雄槍が貫かれた。
「ひぅッ……」
――奥、まで……来てる……!
腰を浮かせようとしても、勝利が腰をつかんだまま離してくれない。
子宮口に切っ先を押し当てたまま、彼は深いところを抉ってくる。
「しょ、り……っ、あ、あっ」
「初めてのときは、ここまで挿れられなかったよね。碧生が苦しそうで、浅いところをゆっくり動かした。ねえ、ひどいことを言うんだけど、俺はあのときの碧生の顔が今でも忘れられない」
「何、言って……」
「泣きそうな顔で、俺に『平気だから』って言ってくれた。碧生の体は震えていて、あまりに華奢で壊れてしまいそうだったのに」
「ん、んっ……、ぁ、奥、当たってる……っ」
「当たってるんじゃなくて、当ててるんだよ?」
「やぁ……っ」
彼が腰を揺らすたび、つんと屹立した胸の先が勝利のワイシャツにかすめる。
そのかすかな刺激だけで、また碧生の体は敏感になっていった。
「それとも、もっと激しく動いてほしい? 碧生は、俺としかしたことないんだよね?」
「勝利、ぁ、ぁあっ、まだ、わたし……」
「ほら、こっちに腕まわして」
勝利の首に両腕でしがみつくよううながされ、碧生は上半身を預ける。
少し腰が浮いた分、圧迫感が軽減される。
そう思った直後、彼が下からグッと腰を突き上げてきた。
「あっ……! あ、あっ、んぅッ……」
「かわいい。碧生、涙目になってる」
――それは、勝利が思い切り突き上げるから……!
「キスしよう? そのほうが、碧生は感じるの知ってるよ」