「社内一の王子様」だけど変わり者の同期×恋愛初心者のアラサーOL
アラサーOL・心春の同期、胡桃沢遙が海外赴任から戻ってきた。社内で「王子様」と呼ばれる遙は、心春をお姫様扱いして過剰なほど世話を焼くちょっと変なヤツ。男友だちだった彼に迫られ、お試し交際を受け入れたけれど、恋愛経験のない心春は翻弄されっぱなしに。でもなぜ彼が自分に過保護な愛情を注ぐのかを知り、少しずつ心惹かれていって……!?
本作品はWeb上で発表された『やたらお姫様扱いしてくる同期がキモい』に、大幅に加筆・修正を加え改題したものです。
僅かな躊躇いを突かれて後頭部を引き寄せられた。腰に腕が回り、唇が合わさった。
「ン……!」
身体も唇も密着する。遙の上に体重をかけたら重いだろうに、彼は私をどかすつもりはないらしい。
無遠慮な舌が口内に侵入した。舌先を引きずり出されて絡められるだけで、お腹の奥からムズムズするようなもどかしい熱がこみ上げてくる。
「……っ」
酸素を求めて唇を離そうとするけれど、遙の手ががっしりと後頭部を掴んで放さない。何度も角度を変えて深くキスをされて、じんわりと生理的な涙が溢れてきた。
「は……ぁ、はる、か……」
「ん、可愛い。そんなとろんとした目で見つめられたら、俺の方が貪りたくなる」
唾液で濡れた唇が目尻に触れた。しっとりとした感触が生々しくて、心臓がドキッと跳ねる。
「それで、俺を襲いたいんだっけ? こんなにトロンとした顔で?」
身体が反転した。形勢逆転だ。
遙は私に覆いかぶさると、カットソーの裾に手を差し込んだ。
「あ……っ」
直接腹部を撫でられる。遙の大きな手で触れられているだけで、肌が粟立ちそうだ。
「俺のことはいつでも好きにしていいけれど、今日は譲って」
そう告げた遙は私の服を手際よく脱がせた。鮮やかすぎて唖然とする。
「ちょっと待っ……」
「無理。ごめん、もう待てない」
「……っ!」
ブラのホックを外された。まろび出た乳房にそっと触れられる。
「ひゃ……んっ」
「可愛い。すごく綺麗だ」
胸の感想なんて言わないでほしい。自分と他人の胸など比べたことがないからわからない。
どんな下着を身に着けていたか気にする余裕もなかった。一応、遙に見られても恥ずかしくないものばかり選んでいたけれど、彼の好みかどうかはわからない。
両胸をすくい上げられながらふくらみに口づけられた。宝物を扱うようにそっとキスをされると、ぞわぞわとした震えが止まらなくなる。
「あぁ……ん」
胎内に熱が籠もる。下腹が疼いて、少し脚をすり合わせるだけで淫らな水音が響きそう。
遙はそっと胸の頂に触れた。指先で撫でただけで、私の腰がビクッと反応する。
「敏感だね、可愛い」
「……ッ」
肌に吹き込むように囁くのはやめてほしい。
「可愛くなんて、ないから……っ」
「なんで? 俺には心春の全部が可愛くてたまらないんだけど。暴走しないように食い止めるので精いっぱいだ」
理性なんてすぐにでも千切れると言いたげだ。彼の額にじんわりとした汗が滲んでいる。
「服に隠れるところに痕をつけたいけれど、今はまだ我慢する」
チュッ、と乳房にキスをしてリップ音を奏でた。そのまま舌先が移動し、存在を主張する赤い実を舐められる。
「ンァ……ッ」
「ここも可愛い。すごくおいしそう」
片方の胸の頂を口に含みながら、もう片方は指先で弄りだした。ビリビリとした電流が背中を駆ける。
胎内に溜まった熱の逃がし方がわからない。唾液で濡れた赤い実が淫らすぎて直視できそうになかった。
先ほどまで強気だった自分が嘘みたいだ。可愛い遙を襲いたいだなんて、生意気言ってすみませんでしたと土下座したいくらい、今の遙は色気魔人である。
舌と指で翻弄される。空いた手で腹部を撫でられると、本能的にこの先の刺激を期待した。
「ンン……ッ」
じゅわり、と蜜が零れた感覚が気持ち悪い。下着はもはや使い物になっていないだろう。
ニットのタイトスカートをずらされる。「腰を上げて」と命じられて、恥ずかしさに悶えながら応じた。
「どうしよう。俺、童貞に戻ったかもしれない」
「どういう告白?」
やっぱり遙は童貞じゃないよね。
ほんの少し落胆する気持ちもあるけれど。でも嘘みたいにモテる胡桃沢遙が清らかな身体だった方が驚きだ。
遙は手早くシャツを脱いで上半身裸になった。私の片手を握り、心臓に触れさせる。
「……すごくドキドキしてるね」
「うん、正気じゃいられないと思う」
その告白はどうなのだ。理性を失った成人男性を受け止められるほど、私は頑丈ではない。
「傷つけないように気を付けるから……でも俺が暴走しそうになったときは鳩尾を蹴って」
「できないから! というか、あの今さらだけど、シャワーは……」
寝室には太陽の光が入っている。
まだ真昼間の時間にこんなことをするなんていかがなものか。私の裸も丸見えというのも恥ずかしいし、できれば直視されたくない。
「一緒に入ったら襲う自信があるけれど。はじめてはうちのお風呂場がいいの?」
「別々で入ればいいだけかと」
「無理。諦めて」
この場を逃がすことはしないと、その目が語っている。これ以上の我慢をさせたら骨の髄までしゃぶられそうだ。
「じゃああまり見ないでね」と懇願したが、それも却下された。濡れたショーツを脱がされるのがものすごく羞恥心を煽ってくる。
「後で手洗いしておく」
「洗濯機でいいから! というか私が洗います」
ムードなんてどこへやら。でもここではっきり否定しておかないと、遙はやると決めたら有言実行の男だ。ドロドロになった下着を洗われる羞恥と屈辱は味わいたくない。
視線だけで犯されている気分になってきた。
遙の色素の薄い目の色が私をじっくり眺めている。
「あまり見ないで……」
「ごめん、無理。綺麗すぎて呼吸を忘れそうになる。俺が触れていいの? って、自問自答してた」
答えはなんて出たんだ。だがここで「やめておく?」と言ったら、今度は悲愴感たっぷりな顔で絶望を訴えられるかもしれない。
「あ、そうだ。避妊は……」
「大丈夫、用意してある」
ベッドのサイドテーブルから避妊具の箱を出された。そんなところに入っていたとは思わなかったけれど、チラリと見えた箱の数は多くなかったか。
「先週生理が終わったけれど油断するべきじゃないし、ちゃんと避妊はするよ。とはいえ絶対安全とは言い切れないけれど」
コンドームの避妊の確率は百パーセントではない。破れることも外れることもあるだろう。遙は淡々と、「挿入したまま出さないのが一番だと思う」と言った。
大事なことを話しているのに、私の頭の中では何故先週生理が終わったことを把握してるんだっけ? と考えていた。
「忘れたの? 周期を管理するアプリで共有してること」
そういえばなにかのついでにいくつかのアプリを共有した気がする。
でも面倒くさくなって遙に丸投げしていたような……。あの共有したアプリの中に生理周期のものまで入っていたとは。相変わらず抜け目がない。
「他に懸念は?」
「目の前の人が一番の不安の種かもね」
遙を出し抜ける気がしない。周期は把握してもらっていた方が楽ではあるが。
「それなら不安を消さないと。恥ずかしくなったら目を閉じててもいい」
額と目の横にキスを落とされた。
ささやかな触れ合いが私の官能を表面に引きずり出す。胸や腹部に触れられて、その手が太ももをなぞった。
「ん……っ」
「はあ……心春はどこも柔らかくておかしくなりそう。ずっと触れていたい」
いやらしく触れられたら無意識に腰が揺れてしまいそうだ。
「あぁ……ン」
太ももの内側を甘く噛まれた。そのままきつく吸い付かれる。
「遙……っ」
「すごくいやらしい。心春の太ももにまで蜜が垂れてる」
「……ッ!」
見ないでほしいと懇願しても無駄だろう。遙はどこかうっとりした表情で私に触れている。
「舐めてもいい?」と訊かれたときは反射的に拒絶していた。どこを、とは言われなくても伝わるものがあった。
「ダメダメ! 汚いところは絶対無理ッ」
「残念。じゃあ綺麗にした後にとっておこうか」
お風呂上りなら問題ないとは言っていないのだが、今はしないことに安堵する。
「ひゃあ……っ」
自分でも滅多に触れないところに触れられた。恥ずかしい蜜を滴らせる場所に遙の手が触れているのだと思うと、顔から火が出そうになる。
もどかしいくらい優しく割れ目を撫でられた。ぞわぞわとした震えが身体中を巡る。
「あ、ふぁ……っ」
「熱いね。ゆっくり触れるけどいい?」
了承を得なくても触れているくせに、こういうときは確認するなんてズルい。この先に進んでもいいのかと訊いてくれる誠実さはうれしいが、こちらは羞恥心でどうにかなりそうだ。
頷いたのを確認後、遙の指が狭い隘路に挿入された。
「ン……ッ!」
愛液でぬかるんだ場所はすんなり彼の侵入を許した。異物感は特になく、二本目まで飲み込んだ。
「痛い? 大丈夫?」
「まだ、平気」
私の様子を確認しながら進めてくれる。あんなにも我慢はできないと言っていたわりに、遙は決して自分本位ではない。
額に滲んだ汗を見たら随分やせ我慢をしているのに。いじらしさに胸がギュッとなりそう。
膣壁を擦られる感触はあまり慣れない。ぞわぞわしたなにかがせり上がりそうだ。
快楽の逃がし方を習得していないから、どうしていいかわからない。
「あ、遙……もう、いいから。一思いにやっちゃって」
遙の目に剣呑な光が浮かんだ。隠しきれない劣情とは別の感情が垣間見える。
「一思いにって、そんな心春が傷つく真似なんかできるはずがない。俺は確かに理性なんて紙切れ同然だと思っているけれど、好きな女性に痛い思いはさせたくないんだよ」
最初から気持ちよくなれるとは思っていない。でも遙は最大限努力をしようとしている。
「ごめん……」
「うん、わかってくれたならいいよ。でもまあ、俺の限界はすぐそこまで来てるんだけど」
三本目の指を挿入されると、ピリッとした痛みを感じた。引きつれるような痛みはすぐに気にならなくなったが、はっきりとした異物感がある。
「狭くて熱くてたまらない。ギチギチに吸い付いてくるね」
「わかんな……」
「無意識だから仕方ない。でも心春、自分で弄ることは?」
自慰行為はしたことがあるかと確認されたが、私はほとんど性欲がないのだろう。正直にないと答えると、遙は深く息を吐いた。
「想像以上に清らかすぎて困るな」
「幻滅した?」
「違う、逆。これから俺が穢すのかと思うと興奮しすぎて血圧が上がりそう」
身体に負担がかかるようであればここでやめておこうか。
だがそんな提案をしたら今度こそ遙はどんな表情をするやら。理性や常識の糸がプツンと切れるかもしれない。
監禁とかされたくないので、余計なことは言わないようにする。私が真っ当な人間として隣で支えるんだと意気込んでいる間に、遙は避妊具を装着していた。
「……あまり見られると俺も照れるんだけど」
「遙、それなに?」
なにと言われた方も困るだろう。臨戦態勢になった男性器としか言いようがない。
でも私が想像していたものよりご立派なそれは、ちょっと予想外すぎた。
「この間触ったこともあるのに? まじまじと見られるともっと興奮する」
「それ以上大きくなるってこと? 無理だから、もうちょっと小さくして!」
処女には負担が大きすぎる! どう考えても私には受け止めきれる気がしない。
「小さくするには吐き出さないと」
それはその通り過ぎるのだけど、私のキャパはもういっぱいだ。
さっきは一思いにどうぞって考えていたけれど、もう少し段階を踏んでから進むべきではないか。
「心春ちゃん、観念しようか」
「台詞が悪役じみてません!? って、あ、待っ……ンン――ッ!」