許嫁を名乗る一途なエリート警察官僚×継母に冷遇される令嬢
名家の実家を継母に追われ庶民生活をする藍のところに、突然、雪岡と名乗るエリート警視が訪ねてきた。「唐突だけど俺のところに来ないか」彼は藍の知らぬうちに父同士が決めた婚約者で、家を出た藍の境遇や環境が心配で探し出したという。雪岡を実娘の婿にしたい継母から身をひけと脅されるが、真摯に溺愛し甘く口説いてくる彼に藍は惹かれ始めて!?
「雪岡さん」
少し彼との距離を取って、顔を見合わせた。私のことを案じてくれている彼の唇に、自分から唇を押しつけた。
触れた瞬間、雪岡さんの体が小さく揺れた。それに構うことなくずっと唇を押しつけていると、彼の手が背中に回って、きつく抱きしめられた。そして触れるだけだったキスは、彼が舌を入れてきたことで濃厚なキスに変化した。
「……っ、ん……」
まだ二回目なので、慣れない。こういうときはどうする、というノウハウが私の中にないので、されるがままだ。
――長い……
この前はこれくらいで終わったので、今もそれくらいかな、と思っていた。でも、キスが終わる気配は全くない。一度離れてもまた触れあって、角度を変えて唇を食まれた。
このままだと私、この人に食べられてしまいそうだ。
「あ、の……っ、ゆきおかさ……」
「まずいな」
唇を離した雪岡さんが、ぼそっと漏らす。
「ずっと我慢してたから……衝動を抑えきれない……」
「……え。雪岡さんでもそういうことが、あるの……」
すごく理性的な人だと思っていたから、今の発言に驚いた。
「あるよ、人間だもん。それに好きな人に好きって言われて、興奮しない男がどこにいるんだ」
「雪岡さんも興奮するんだ……」
彼が堪えきれない、とばかりにハッ! と笑う。
「藍さん限定だけどね。でも、本当にまずいな、ちょっと抑えないと。さすがに部屋に連れ込んで早速手を出すのは……」
私から距離を取ろうとする雪岡さんの手首を、反射的に勢いよく掴んでいた。
「待ってください!!」
「え」
雪岡さんが、私に掴まれた手首と私を交互に見ている。
なんだか自分がとてもはしたないことをしているような気がした。でも構わない。
「私……っ、いいんです。そのつもりで今日あなたをお誘いしたんです」
「それは、どういう……」
「……この前、桃に会ったんです。あの子、あなたと結婚する気満々でした。でも、あなたのことをご実家が資産家だからとか、顔がいいからとかそんなことでしか見ていないんです。彼女の話を聞いてたら、私、だんだん腹が立ってきて」
雪岡さんの顔にははっきりとなんで? と書いてある。
「……腹が立つ? どうして」
「だって、雪岡さんのことを何も知ろうとせず、表面だけしか見ていないんですよ? そんな桃とあなたが結婚するって考えたら耐えられなくて……そんな妹に負けたくないって、人生で初めて思いました。だから……」
彼がピクッと反応した。
「藍さん」
「だから私、早く身も心も、あなたのものになりたいって、思……」
私が掴んでいた方ではないもう片方の雪岡さんの腕が、私を強く抱き寄せた。
「わかったから」
耳元で囁く声が、とびきり優しかった。
「来て」
今度は彼が私の手首を掴み、ソファーから立たせた。そのままリビングを出て廊下に移動し、近くにあった別の部屋に飛び込んだ。広めのベッドが目に入った途端、全身に緊張が走った。
丁寧にベッドメイクされた掛け布団を、彼がバサッと捲る。しわ一つ無いシーツの上に座り、私に向かっておいで、と手を広げた。
まるで操られているかのように、ふらふらと彼に近づく。体がくっつきそうな距離まで来ると、雪岡さんが私の腰を抱いた。
「ここ、座って」
彼が自分の太股をトントンと手で叩く。
「……重くないですか?」
「全然」
いいのかな、と思いつつ、彼の両足を跨ぐようにして、太股に腰を下ろした。刹那、すぐに彼が唇を重ねてきて、心臓が跳ねた。
「ん……」
そっと触れてくる彼の唇からは、優しさが伝わってくる。
この人とこれから愛し合うんだ。それを想像しただけで、過去最高のドキドキが私を襲った。
触れるだけのキスが、今度は激しく舌を絡め合うキスに変わった。圧倒的に経験値のない私をフォローするように、常に雪岡さんが私をリードしていく。
――キス……うまいな……
イケメンでキスが上手いってずるい。などと考えていると、私の背中に手を回した彼が、私と一緒にベッドへなだれ込んだ。
「あっ……!」
首筋に吸い付かれ、たまらず声が出た。彼はそれに構うことなく、耳朶、首、鎖骨……へとキスを繰り返す。
「や……く、くすぐったい、です……」
キスだけでなく、首筋にいる彼の前髪が肌に触れると、それだけで体が粟立つ。
「……ん? そか。でも、いつまでそんなこと言ってられるかな」
「え……」
顔を上げた雪岡さんが笑いながら、ワンピースの前ボタンをプツプツと器用に外していく。気がつくとインナーに着ているキャミソールが露出し、なぜか私がゴクッと喉を鳴らしてしまう。
「緊張してる?」
「うん……」
「まあ、するか。緊張するなっていうのがまず無理だもんな」
そう言いつつ、彼の手はまだボタンを外し続けている。結果、ワンピースの前ボタンは全て外され、ショーツも丸見えだ。
「寒い?」
「ううん。大丈夫……」
むしろ興奮して暑いくらいだった。
彼の手がキャミソールの裾から中に入り、直接肌に触れてくる。大きな手がブラジャーの上から乳房を包むと、またドキドキが一段と大きくなった。
「すっごくドキドキいってる」
「だって……はじめてだもん……」
「だよね」
クスッとした雪岡さんが、手を一瞬私の背中に回した。パチッと音がして、ブラのホックが外されたとわかった。途端に胸の締め付けがなくなり、胸元が心許なくなる。
「直接触るよ?」
「うん……」
私の許可を得ると、彼の手がブラジャーをどけて直接胸の膨らみに触れてきた。彼は膨らみの感触を確かめるように中心を避け、下からすくい上げるようにして乳房を愛撫する。
――なんか……変な感じ……
まだここまでは余裕があった。
でも、彼が先端に触れてくると、その余裕は徐々になくなっていった。
「っ、あ!」
先端に指が触れた。軽く触れただけなのにビクッと腰が跳ねる。
その様子を見ていた雪岡さんが、少しだけ口元を緩ませた。
「……感じる? ここ」
話しながらキュッと乳首を摘ままれた。
「ああっ!!」
「気持ちよさそう」
私の反応に気を良くしたのか、彼が先端に的を絞って愛撫を始めた。
まず、指の腹を使ってくりくりと軽い愛撫。それから親指と人差し指で強めに摘まんでくる。
経験のない甘い痺れが、容赦なく私に襲いかかった。息つく暇なく快感がやってきて、自然と呼吸が荒くなっていく。
「あっ…………は…………っ、……ン」
太股を擦り合わせながら、なんとか快感を堪えた。でも、指から舌での愛撫に変化すると、私の中にあった余裕が完全に消えた。
「やっ……!! ん…………っ、それ、だめですっ……!」
「だめなの? どうして?」
「だってっ……、き……気持ちよくなっちゃう……からっ……」
「気持ちいいのはいいことなんじゃない?」
雪岡さんが舌先を使ってチロチロと先端を舐る。時折こちらに視線を送ってくるのが、なんだか見せつけられているようで羞恥が増した。
――恥ずかしい。……でも、興奮する……
男女の営みがどういったものなのか、頭では理解していた。でも、実際こういう状況になってみて初めて、いろいろわかった気がする。
こんな恥ずかしいこと、本気で好きな人相手じゃないとできない。少なくとも私は。
「んっ……、あ……」
堪えようとしても、勝手に口から声が漏れる。それが、なんだか自分の声とは思えないほど艶めいていて、恥ずかしいのと困惑とで頭が混乱している。
「雪岡さん……」
「ん?」
「私、恥ずかしくて死にそうです……」
思わず今の心情を吐露したら、愛撫を止め彼が顔を上げた。
「……いや、まだこれからなんだけど……。ここで恥ずかしくて死んじゃいそうなら、この先藍さん、どうなるのかな」
「私が知りたいです……。死んだらごめんなさい……」
「いや。死なせないから」
一際強く先端を吸い上げられ、「あっ!!」と大きめの声が漏れた。
吸われたあとの余韻でハアハアと息を荒げていると、彼の指がショーツのクロッチ部分に触れてきた。
「んっ!」
ビクン、と体を揺らしている私に構わず、彼の指がクロッチの上を何度も往復する。次第にそこが熱を帯びて、私の中からあふれ出た蜜がショーツを濡らしていった。
「……熱いね、ここ」
「よくわかんな……」
「ちょっとごめん」
ショーツをずらされ、股間が露わになる。普段人に見せたことのない場所がひんやりとした空気に晒され、私の羞恥はMAXに達した。
――し、死にそう……。本当に死にそう……!
両手をグッと握りしめながら、浅い呼吸を繰り返す。次にどんなことをされるのだろう、と体を固くしながら待っていると、彼の手が恥丘に触れ、指が蜜口に差し込まれた。
「あっ……!」
蜜口の奥へと進んだ指が前後に動く。もっと痛いものかと思っていたけれど、指の動きに痛みは伴わず、スムーズだった。
こそばゆいような、気持ちがいいような、初めての感覚。
「すごい……もうこんなに」
「な……なにがすごいの……?」
話している最中も、彼は指の動きを止めない。お腹の奥で指が動くというのは初めてで、不思議な感覚だった。
私の問いかけに黙り込んだ雪岡さんが、上体を屈めて顔を近づけてくる。
「俺の愛撫に感じてくれてるんだなってこと」
深い口づけに、目を閉じて身を任せた。その間も彼の指は私を愛撫し続け、次第に私の呼吸が荒くなっていった。
「……っ、ん……っ、あ……」
キスを終えると、雪岡さんが今度は私の腰辺りまで移動する。股間に顔を近づけ、じっくり見られているけれど、今はそれに恥ずかしいとか思う余裕がなかった。
「溢れてくるね。こっちはどう?」
彼が襞を捲り、奥にある蕾を指で弄ってくる。
「あっ、は……!!」
これまでと比較にならない快感に襲われ、反射的に足を閉じそうになった。でも、それを彼に足を掴まれ阻止された。
そのまま、彼は無言で蕾を舌で嬲り始めた。ざらついた舌が嬲るたびに与えてくる快感はもはや電流のように、体を伝って全身に刺激を与えてきた。
「やあっ……!! む、むりっ……こんなの……っ」
左右に体を捩って快感を逃がしても逃げてくれない。愛撫が続くのに比例して徐々に体の奥から湧き上がる得体の知れない感覚が私を支配しそうになり、少しだけ怖くなった。
「あ……っ、だめ、なんか、きちゃうっ……」