不運にも銀行強盗の人質になった日菜子は、警察の特殊急襲部隊SATによって無事に救出される。それから数日後、車に轢かれそうになったところを佐野というイケメンに救われるが、偶然にも彼はマンションの隣人だった。ベランダ越しに交流を重ね、距離を縮めていくふたり。しかし、警察官だという佐野には、日菜子には言えない秘密があって……!?
「ごめん日菜子、いまは何も聞きたくない。日菜子が俺のだって確認させてくれ」
どこまでも力強い、男性らしい声なのに、怯えがその奥にあるのを感じる。迷子みたいな声音に、肋骨の奥が痛んだ。
なんでだろうね、私、彼がすること全て受け入れられるんだ。
鷹和さんが嘘つきでも。私のこと、騙してても。
刺されたように胸は痛むけど、構わない。
「いいよ、鷹和さんの好きにして」
彼がいまは何も聞きたくないと言うのなら、それでいい。力を抜いた私の服を彼はあっという間に脱がせてしまう。下着も、全て。
身につけているのはダイヤモンドの指輪だけだ。
彼は私の肌の上を節が張った指でなぞる。他の人の痕跡がないかを確かめるように。丹念に触れられて、私の下腹部が熱を帯び出す。
鷹和さんが私の足を大きく開く。まだお昼前で、秋の陽が部屋に差し込んでいる。開かれた私の濡れた粘膜までも丸見えだろう。
恥ずかしくてそっぽを向くと、頬を掴んで正面を向かされた。
「俺のこと見てて、日菜子。俺がどれだけ君を愛してるか、君しか見えてないか、君に夢中になってるか」
そう言って自分も服を脱ぐ。彼の虫刺され……あるいは鬱血がほのかに浮き出しているのは、彼が興奮しているからだろう。
鷹和さんは私をベッド脇の壁に寄りかからせた。そうして私を見て微笑んだ。
いつもの笑い方。目だけが相変わらず昏い。
「ちゃんと見てて」
そうして私の膝を持ち、足の付け根に顔を埋める。
「んんっ」
肉芽を念入りに舌で解される。指で皮を剥かれて、神経が剥き出しになったかのようなそこを優しく舌先でつつかれ、つい腰が揺れる。
「ん、ぁあっ、んぅっ」
自分のものと思えない、どこか媚びさえ感じる甘えた声だった。優しい舌の動きにうっとりと快楽の波を感じていると、唐突に──本当に急に、彼は肉芽を舌で押し潰した。
「ぁあ……っ!」
思わず彼の髪を掴み、叫ぶ。腰がビクビクと震えた。
そんな私の肉芽を、彼は同じようにぐちゅ……と何度も押し潰す。
頭が真っ白になる快楽の絶頂にうまく舌が回らない。
「やめ、てっ、イって、るうっ」
私の言葉を無視して彼は甘くそこを噛む。まともに声も出なかった。
悲鳴のような嬌声のような、そんな中途半端な甘えた声を上げ腰をくねらせる。頭を振ったせいで、壁に髪が擦れてしゃらしゃらと音を立てる。
「ゃ、やぁっ、イってる、イってるってばあ……っ」
私の訴えをまるっと無視して、鷹和さんは執拗に肉芽を弄り続ける。ちゅうっと吸い付かれて足先まで震えた。頭の中どころか、目の前まで真っ白でもう何も考えられない。イくとすら言えない、もう舌が回らない。
「う、ぁ、あっ、ふぅ……っ、あぅ」
はは、と鷹和さんが低く笑う。
「かわい、日菜子」
ちゅ、ちゅっ、と肉芽に吸い付くキスを繰り返した鷹和さんは、信じられないほどうっとりとした顔をしていた。
視線が合って、彼は目を細める。褒めてもらうのを待っている子供みたいな顔をしていた。
私は絶頂に震える指先で彼の短い髪に触れる。ゆっくりと撫で、回らない舌で告げる。
「き、もちぃ……」
「本当に?」
「う、ん……っ、ぁあっ」
吸い付かれたまま神経の塊を舌先で押し潰されて、もう抵抗する余力すらない。
とろとろと淫らに水を垂れ流しながら、私のことを大好きで、でも嘘つきな大型犬みたいな彼にやりたい放題にされてしまう。
壁を擦るようにベッドに倒れ込むと、腰を持たれ少しシーツの上を引きずられる。まっすぐ寝かされて、脱力したまま彼を見上げた。私の腰のあたりを跨ぐ彼の屹立は、信じられないほどに怒張していた。肉ばった先端から涙みたいに露が零れる。
彼は微かに口だけで笑ってから、ヘッドボードにあるコンドームを箱ごと取り出す。枕の横に撒き散らして目線だけでそれを見て「あと五個」と呟いた。
「……え?」
「ああごめん、残り個数の確認じゃないよ。さすがに日菜子が高柳とヤったとは思ってない」
そう言って、するりと私の頬を撫でる。
「他の男の痕跡を見逃したりしない」
情念が潜む笑顔に、ひゅ、と息を呑んだ。
ずっと鷹和さんを穏やかで優しい人だと信じ込んできた。でもそれだけの人じゃなかった。
彼は優しくて、嘘つきで、そして私に狂おしいほど執着している。
捨てられるかもなんて思っていたのが懐かしい。
そんなはずがない。彼は私を貪り尽くしてしゃぶり尽くしても手放すことはない。
怖い。
──でも、嬉しくてたまらない。本当に。
じわじわと喜びが広がる。
「うちにまだ新しいコンドームあったな。俺何回できるかな」
目は笑ってないのに楽しげにそんなことを言う。
何回? 目線でコンドームを見た。視線を彼に戻すと、彼はひとつめを自身に着けたところだった。
ぬるぬると屹立で入り口を擦り、そうしてゆっくりとナカを押し広げるよう進んでいく。彼のもので充溢する感覚に身体が悦んでいるのがわかる。肉襞が、子宮が、わななく。
「うぅ……っ」
彼の腕を掴み顎を逸らした。味わうように、あるいは味わわせるように彼は緩慢に腰を動かす。欲しがってぐちゃぐちゃに蕩ける最奥には進んでくれない。
「んんっ、うっ」
欲しくてたまらなくて、腰が浮く。揺れる腰を大きな手のひらでがっちりと掴まれて、浅いところを擦るばかりになっていた。
「あっ、鷹和さん、お願い……」
「日菜子」
本当に嬉しそうに笑って鷹和さんは腰を引く。先端の膨らみだけがナカにある。それを必死で締め付け、奥へ誘おうと本能が騒ぐ。なのに彼は私の太ももを押して全く進んでくれない。最奥が切なく疼いてもはや痛い。ぽろりと涙が零れた。
「お願いぃっ……」
あさましく腰を上げて、みっともなく腰を揺らして懇願する。奥まで苛めて、最奥を突き上げてと淫らに腰をくねらせねだる。
鷹和さんが微笑んだ。心の奥からの、花咲くような微笑みだった。私しか見えてない目だ。
「どうしてほしいか言って」
「──っ、奥までっ」
「奥まで、誰ので埋めてほしいのか言ってくれ。日菜子」
鷹和さんが腰をさらに引く。屹立が抜けてしまう寸前で、私は半ば叫ぶように言った。
「鷹和さんのっ……」
「俺のを?」
「全部ちょうだい……っ」
頬に熱が集まっている。恥ずかしくてたまらない。
でも答えは正解だったみたいで、鷹和さんは私の頭を撫でてから腰を掴み直し、一気に奥まで貫いてきた。
「ぁ、ぁあ──……っ」
ぎゅううっ、と私のナカの粘膜が悦んで彼に媚びて吸い付く。欲しかったの、ありがとうと言わんばかりにうねって痙攣を繰り返す。そのナカを彼の屹立はズルズルと動いた。彼が動くたびに肉襞が引っかかれる。そのたびに淫らな水は増して聞くに堪えない音を立てる。
「はあ……俺の、溶けそう」
鷹和さんが低く呟く。彼も気持ちいいのだとわかって喜びが増す。そのせいだろうか、ナカが強く彼のを締め付けた。
「っ、日菜子」
あー、と彼は掠れた息を吐き、観念したように私の膝裏に手を回す。そのままぐいっと持ち上げたかと思うと、膝が胸につくくらいに押し広げ抽送を激しくした。
「あ、あ、あ、あっ、ああっ」
ほとんど真上から突き落としてくるかのような動きに勝手に声が漏れる。意識して止められる声じゃなかった。最奥を暴力的な快楽で蹂躙されて出る悲鳴だ。
「ぅ、ぁ、あっ、イくう……っ」
私は彼の腕を手で掴み、抵抗することもできずただイかされる。けれど彼は動きを止めない。
イかされた状態のまままた絶頂に追いやられ、いやいやと子供みたいに首を横に振ってただ粘膜が擦られる淫らな水音を聞くことしかできない。
「は、ぁっ、きもちぃ、っ、好き、好き……鷹和さんっ、好き」
蕩けかけた理性で、ただ思いついたことを口にする。鷹和さんは「はっ」とした顔をして、それから端正な顔をぐちゃぐちゃに歪めた。
「っ、俺も……っ」
鷹和さんが腰の動きをいっそう早くして、それに伴うように私のナカに埋もれた彼の屹立が質量を増す。
「ふ、ぁ、おっき……っ」
快楽を堪えられず目から涙が零れている。もしかしたら涎まで垂らしているかも。
けれどそんな私に鷹和さんは「やばい、そのイき顔くそ可愛い」と告げて、ぎゅうっと私を抱き締めた。同時に彼のが別の生き物のように私のナカで跳ねる。吐き出すような動きだ。
コンドームの薄膜越しに欲を吐き出した鷹和さんは、しばらく肩を上下させて荒く呼吸を繰り返したあと、私のナカから出て行く。たっぷりと白濁を溜め込んだそれを外し、ティッシュに包んで捨ててから枕の横に手を伸ばす。私は目を瞬いた。
二個目。慌てて彼に目をやる。何回かすることもあるけれど、こんなに早く始めることはない。いつも私の様子を気遣って……鷹和さんが目を細め私の髪を撫でる。慈しむ動き。
それだけで十分だった。そっと目を細めて微笑んでみせる。
鷹和さんはぐっと眉根を寄せてから私を横向きにして、片足を肩に担ぐ。そうしてさっきと同じくらいに……いや、さらに張り出すように大きく硬くなった熱を私のナカに埋めていった。
「は、ぁっ」
今度は焦らすことなく奥まで進んでくる屹立が、奥のさらに奥を突き上げる。子宮を直接ぐりぐりされているかのような快楽に、思わずシーツを掴み逃げようとした。
「こら」
鷹和さんの声が甘い。ゆっくりといつものトーンに戻っていっているらしい。
「日菜子、逃げない」
肩に担ぎ上げた足をなだめるように撫でて、彼は最奥を肉ばった先端でこじ開けるように抉る。そのたびに下生えが擦り合わされ、にちゅにちゅと音を立てた。肉芽も潰され高い声で喘いだ私を、彼は大切そうに何度も撫でる。
「好き。好きだ、愛してる」
そう言いながら腰の動きを速くする。肉襞を引っ掻いて私のナカを動く彼の熱が愛おしくてたまらない。肩に担いだ私の膝に彼はキスを落とす。愛おしいと直接言われるより、よほど感情が伝わってくる。
上り詰めていくに従って、私のナカが蠢き彼のものをきゅっ、きゅうっ、と締め付け始める。そのナカを彼は抽送し続け、そのたびに淫らな音が生まれる。
鷹和さんは腰を動かしたまま、ローテーブルの上にあったミネラルウォーターのペットボトルに手を伸ばす。片手で蓋を開けて床に落とし、抽送を止めないまま、ゴクゴクとそれを飲んだ。
喘ぎすぎて渇いた喉が水分を欲しがって勝手にごくりと唾を飲み込む。
鷹和さんは軽く眉を上げ、ゆっくりと腰の動きを止めた。そうして私から引き抜く。
「あ、っ」
つい声を上げた私を彼は片手で抱き上げ、引き寄せた。あぐらをかいた自分の膝に座らせて、口移しで水を飲ませてくる。
「ん、んんっ」
与えられた水分を、身体は喜んでこくこくと飲み干す。唇の端から水が垂れた。それを鷹和さんは分厚めな舌でざらざらと舐めていく。獰猛な肉食獣に味わわれている気分になる。
軽いリップ音と一緒に離れていく彼の唇が水で濡れている。ちろりとそれを舐めると、鷹和さんは私をかき抱いた。耳殻や耳の裏に唇を這わせ、そうして私を再びベッドに押し倒す。
ぎゅっと抱き締められ、そのまま挿れられる。ほとんど足を開かないままなのに、濡れそぼった粘膜は難なく彼の太い熱を受け入れた。
「ん、ぁ、あっ」
ぴったりとくっついた身体。お互いの熱がはっきりと伝わる。汗ばんだ肌、弾む呼吸、どちらのものかわからない鼓動、ぐちゅぐちゅと音を立てる私から零れた温かな水。
足を閉じているから、彼の形や硬さがはっきりとわかる。彼のもので充溢した淫らな内臓がわなないてひくつく。
「ん、んんっ、あぅっ」
私の身体の中を、彼のものが激しく動く。やがてぐうっ……と最奥を抉り上げた。
「あ、だめ、だめだめだめっ」
身体の中心を抉られている快感は、気持ちよすぎて怖いほどで、でも逃げることもできずどうしようもなく与えられる快感に……鷹和さんにされるがままになる。